Maker Faire Tokyo 2014注目のMaker
誰でも電子回路が“描ける”AgICマーカーをMFT2014で体験しよう
いまだ開発途中のAgIC
Kickstarterで900人以上もの出資者が集まったところで、製造してくれる工場を探した。いくつかの工場と交渉した結果、大阪の町工場で製造している。量産体制ができたことで、夏からは自社サイトやECサイトで一般販売を行っている。
川原教授との出会いから創業、そしてクラウドファンディングによる資金調達と、一年も経たないうちに瞬く間に事業を展開してきたAgIC。しかし「製品についてはいまだ開発途中」だと清水氏は語る。
AgICのマーカーには大量の銀が必要で、インクの量やインクに含まれる銀の成分割合によって製造コストが変わり、販売価格に大きく影響する。手頃な価格で誰でも使えるような製品を提供するために、今でも筆ペンやマーカーなどのさまざまなタイプを模索しているという。
カートリッジも同様で、現在は1つのカートリッジで100枚程度の印刷が可能だが、銀の成分割合の調整によってコスト削減や印刷枚数の増加を図ることができると考えている。また、あらゆるメーカーのプリンタに対応するため、多種類のカートリッジ開発がこれから必要だと語る。
「マーカーは、主に個人ユースや初心者などのエントリー用、カートリッジは企業やプロユースで使われています。研究室の中だけで閉ざされていた技術を、実験以外でも使えるようにすることで、さまざまな可能性が広がると考えています」
誰もがものづくりに取り組めるツールを提供したい
AgICのミッションは「プロトタイプや動くものを早く作ることを可能にする」ことだと清水氏は語る。例えば、これまでは開いたら立体絵本になって光ったり音を奏でたりするバースデーカードすら、一般的に一人では作れない。しかし、AgICを使えば一人でも作ることができる。普通の人にとって今までは買うことが前提だったグッズも、これからは手作りすることができるかもしれない。
他にも、AgICのマーカーがあれば、ハッカソンでその場でプロトタイピングできるなど、活用の幅は広い。現在は小学校や中学校の教育教材を目指し、大手の企業と提携して教育向けのキットの開発を行っているという。
「これまではArduinoでプログラムを組んでも、その次に基板、となったときにハードルが一気に高くなってしまい、断念する人がいたと思います。こうしたツールによってものづくりのハードルを下げ、作りたいものや欲しいものを自分自身で作れる環境を提供することが大切だと思っています」