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イメージ・センサ 見えないものまで見える時代に(上)
2013/12/04 11:00
いまや多くの人が動画や写真を手軽に撮影し、インターネットなど介して家族や友人らと簡単にやりとりしています。こうした環境を実現するうえで重要な役割を担ったのが、レンズでとらえた被写体の映像や画像を電気信号に変換するイメージ・センサという電子部品です。この電子部品の進化がなければ、現在のように誰もが映像や画像を扱える時代が来ることはなかったといっても過言ではありません。最近では、人間の目では見えないものが見えるイメージ・センサの開発も進んでいます。
カメラに不可欠な電子部品「イメージ・センサ」
イメージ・センサは、画像や映像を撮影するカメラには不可欠な電子部品です。デジタル・カメラやデジタル・ビデオ・カメラはもちろんのこと、スマートフォンやタブレット端末など最新のモバイル機器が内蔵している小型カメラにもイメージ・センサが組み込まれています。製品のカメラ機能を説明する記述の中で、「CCD」あるいは「CMOS」という言葉があるのを見たことがあるのではないでしょうか。これらは、いずれもイメージ・センサの種類を指す言葉です(図1)。
消費者が手にする一般的な製品の多くに使われているイメージ・センサは、半導体の一種で「固体撮像素子」とも呼ばれているものです。イメージ・センサ自体は一辺の長さが数mm程度の長方形をした小片です。小型化のために、そのままカメラの中に実装されていることもありますが、扱いやすくするために樹脂やセラミックスできた長方体のパッケージに入っていることもあります。
イメージ・センサの市場では、日本企業が活躍しています。CCDと呼ばれているイメージ・センサの市場では、ソニー、パナソニック、シャープといった日本企業が主なプレーヤで、これらの企業が大きなシェアを握っています。CMOSと呼ばれているイメージ・センサの市場には、ソニー、パナソニック、東芝などの日本企業のほか米国、韓国、台湾、中国などの企業が参入しており、CCDに比べて市場におけるプレーヤの数がぐっと増えます。その中で大きな存在感を示しているのがソニーや米国のOmniVison社です。
イメージ・センサは、一般にカメラのレンズの後ろ側に取り付けます。つまり、従来のフイルム式カメラでフイルムがあるところにイメージ・センサを取り付けて、レンズでとらえた被写体の画像をイメージ・センサの表面に結像させます。そうすると、画像に応じた電気信号をイメージ・センサが出力するわけです。この電気信号を、マイクロプロセッサなどを使った電子回路で処理することで画像を再生できます。さらに、この処理を一定の間隔で繰り返すことで動画を再生することもできます。
半導体センサで劇的に小型化
最近ではカメラ自体がかなり小型になっています。スマートフォンや携帯電話に内蔵されているカメラは、縦、横、高さがいずれも数ミリと極めて小さくなりました。これほど小さなカメラが実現できたのは、レンズとイメージ・センサの小型化を進めることができたからです。
イメージ・センサの小型化が始まったのは、現在のような半導体を使ったイメージ・センサがコンシューマ機器向けに実用化された1980年代半ばころからでした。実は、イメージ・センサと呼べる電子部品として市場で先行したのは、真空管の技術をベースした「撮像管」と呼ばれている円筒形の部品でした(図2)。
1980年代までは、この撮像管がイメージ・センサの主流だったのですが、これはかなり大きなものです。1980年代に使われていた製品でも直径は数cm。全長は数cm~十数cmもありました。
このままだったら、スマートフォンはもとより、デジタル・カメラに組み込むことさえ不可能だったでしょう。1950年代にトランジスタが発明されてから、電子回路の主な構成要素だった真空管は急速に半導体デバイスに置き換えられ、これとともに電子回路の小型化が進みました。ところが真空管の時代に生まれたイメージ・センサである撮像管が、半導体の技術をベースした小型の部品に置き換えられるのは、これからかなり遅れました。 1980年代に入って半導体を使った固体撮像素子が本格的に製品に採用されるようになってからのことです。
これ以降、イメージ・センサの小型化が加速し、現在のようにスマートフォンなどにも内蔵できるようになりました。その経緯を簡単に説明しましょう。
(後編に続く)