新しいものづくりがわかるメディア

RSS


未来を拓くキーワード

LED 電子工作でおなじみの光る部品(下)

LEDの発光色には、大きくは赤、橙、黄、緑、青、白色などがあります。発光時の明るさについても、表示灯に使う程度のものから、屋外の照明器具に組み込む極めて高い輝度を備えた製品まで、幅広い範囲を網羅できるようになりました。LEDの製品化が始まったのは1960年代のことですが、当初は赤色のLEDだけ。しかも発光したときの明るさは、現在よりもずっと暗かったのです。それから現在までに、材料の進歩によって色の種類が増えました。これと平行して明るさも増してきました。これらとともにLEDの応用範囲が広がっています。

前編はこちらから

LEDの用途が拡大した“キッカケ”とは?

LEDの色や明るさは、発光する固体に使われている材料の種類や組み合わせなどで決まります。このため、LEDの開発技術者は、LEDの品種を増やしたり、用途を拡大したりするために、発光する固体の材料や構造を工夫してきました。

固体に電気を流すと光を放つというLEDの発光原理の元となる現象が確認されたのは、1907年ですが、現在使われているLEDが発明されたのは1962年のことです。その年に、赤色のLEDが製品化されました。1960年代の終わりに、赤色とは別の材料を使った緑色のLEDが市場に登場。その後も、新しい材料が開発されるとともに色数は着々と増えました。1970年代前半に黄色、1980年代半ばに橙色のLEDが製品化されています。こうして色数が増えましたが、まだ電子機器の表示灯が主な用途でした。ほかの用途に使えるほどの明るさが得られなかったからです。

1980年代の半ばには、従来に比べて格段に明るい高輝度の赤色LEDを実現できる材料が開発されています。このころになると多数のLEDを並べて文字や図形を表示する表示板を店頭や街頭でみかけるようになりました。

LEDの用途が一気に拡大したのは1990年代のことです。高輝度化で先行した赤色に迫る明るさを備えた青色や緑色の高輝度LEDが登場したのがキッカケでした。赤、青、緑の3色、つまり3原色が揃ったことでフルカラー表示が可能になりました。これによって生まれた主な用途の一つが、屋外に設置する大型ディスプレイです。LEDを使った信号機の登場もこのころでした。

青色LEDから生まれた白色LED

青色LEDは、さらに新しい色のLEDをもたらしました。1996年に市場に登場した白色LEDです。白色のLEDは、他の色のLEDと発色の仕組みが異なります。従来のLEDは発光する固体を構成する材料によって発光色が決まっていました。これに対して現在使われている白色LEDは、青色LEDから出た光を加工して白色にしています。

青色LEDを使って白色光を作る手法は、大きく二つあります。一つは、青色の光を受けると黄色く発光する蛍光体と青色LEDを組み合わせる手法です。青色で発光するLEDを基板上に乗せて、その上から蛍光体を混ぜた透明樹脂で封止します。この状態で発光させると、蛍光体から出た黄色い光と、固体からでた青い光が混じり合い、白色光が得られます。青色と黄色は、補色の関係にあるので、二つの光が混じり合うと白色になるからです。もう一つの手法は、それぞれ赤色、青色、緑色で発光する固体を並べて同時に発光させる手法です。この3色の光をバランスよく混ぜ合わせると白色光が得られます。

白色LEDは、高輝度化が進むとともに照明の光源として注目を集めるようになりました。白熱球や蛍光灯に比べて消費電力が少ない。白熱球や蛍光灯の寿命は数千時間なのに対して、LEDの寿命が4万時間程度と長い。発光部が小さいので機器に組み込みやすいといった、多くの特長を備えているからです。特に最近になって地球温暖化問題に対する関心が世界全体で高まるにつれて、蛍光灯や白熱灯を使った照明を、省エネに有利なLED照明に置き換える動きが加速しました。液晶テレビやパソコン用の液晶モニターに組み込まれるバックライトの光源も、従来の冷陰極管(蛍光灯の一種)からLEDに一気に置き換わっています。

当面は、照明用LEDがけん引する形でLEDの市場が拡大する見込みです(図1)。具体的には、液晶パネルのバックライトや照明器具です。LEDに関する技術も照明用がけん引するでしょう。つまり、照明用光源として、より高いパフォーマンスを発揮させるために、寿命、明るさ、発光効率(与える電力と発する光の明るさの比)など基本的な性能の向上が続きます。 

図1 LEDチップの需要は年間1000億個超へ(アイサプライ・ジャパンの調査データを基に日経エレクトロニクスが作成) 図1 LEDチップの需要は年間1000億個超へ(アイサプライ・ジャパンの調査データを基に日経エレクトロニクスが作成)

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る