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自動運転 究極の安全を提供する夢の自動車が登場(上)

革新的なテーマに積極的に挑むことから幅広い分野で注目を集める米Google社。同社が最近注力している分野の一つが「自動車」です。例えば、2014年1月にAndroidを自動車に展開するための企業団体「OAA(Open Automotive Alliance)」の設立を発表しています。実は自動車の分野で、同社が注目を集める大きなキッカケとなったのが同社と米スタンフォード大学が共同で開発した自動運転車でした。この先進的な自動車を実現する「自動運転」の技術は、どのような未来を私たちにもたらすのでしょうか。

“自動車型ロボット”とも言える自動運転車

最初に設定すれば、人間が操作しなくても目的地まで自律走行する“夢”のような機能を提供する自動車。これを実現するのが自動運転の技術です。自動運転では、自動車に搭載したコンピュータが人間に代わって、ハンドル、アクセル、ブレーキなどを制御します。ドライバーが、これらの装置に触れなくても、自動車が自動的に走ったり、止まったり、右や左に曲がったりするわけです。しかも、前後の自動車と安全な車間距離を確保しながら走行する。赤信号を認識して停止する。路肩に停止した別の車両の横をすり抜ける。障害物や飛び出してきた人をいち早く認知してよけたり、急ブレーキをかけたりするなど、周囲の状況に応じた動作もします。無人のまま自動車を動かすことも可能です(図1)。こうした機能を備えた自動運転車は、いわば“自動車型ロボット”とも言えるでしょう。

図1 日産自動車が2013年10月に開催された展示会「CEATEC JAPAN」で実施した実演 白い自動運転車が、人が運転している青い車両を認識して一時停止している。 図1 日産自動車が2013年10月に開催された展示会「CEATEC JAPAN」で実施した実演 白い自動運転車が、人が運転している青い車両を認識して一時停止している。

実用化が進む自動安全装置

自動運転の技術は、人々や社会に多くの利点をもたらします。例えば、ドライバーの疲労を大幅に軽減できるうえに、自動車で移動中にドライバーが運転以外の別の作業をできるようになります。通信技術と組み合わせて道路を走る多数の自動車を統合制御すれば、渋滞を解消できるでしょう。そうすれば、省エネや環境負荷低減にも貢献するはずです。こうした様々な利点の中でも特に期待が大きいのが「究極の安全運転」です。電子システムが自動車を操作すれば、脇見、誤認、見過ごし、判断の誤り、操作のミスや遅れといった人に起因する問題が招く自動車事故を防ぐことができます。

すでに電子システムを利用した自動車の自動安全装置は、いくつか実用化されています。例えば、ブレーキを自動的に操作して車輪のロックを防ぐABS(Antilock Brake System)、車体の横滑りを防止するECS(Electronic Stability Control)などです。最近では、前方を監視して障害物などを検知すると自動的にブレーキをかけるAEB(自動緊急ブレーキ、Automatic Emergency Braking)を搭載した自動車が増えています。その先駆けとなった富士重工業のAEB「アイサイト」の場合、オプション装備であるにもかかわらず、2013年4月~6月に同社が国内で販売した車両の7割以上に搭載されているそうです。こうした自動安全装置の進化のロードマップの先にあるのが自動運転だと言えます。 

70年前に描いた未来に登場

最近になって話題になっている自動運転ですが、すでに長い歴史があります。始まりは1939年にニューヨークで開催された万国博覧会で、米General Motors社が展示した「Futurama」(Futureとpanoramaを組み合わせた造語)にあるとされています。Futuramaは、20年先の米国の風景を紹介したものです。この中で、無線通信による制御によって車間距離を保ちながら、目的地まで自動走行する自動車が登場していました。この展示が一つの刺激となって、多くの自動車メーカーが自動運転にまつわる技術開発を始めたと言われています。

こうして長年にわたって続いている自動運転の技術が、最近になって脚光を浴びるキッカケと作ったのがGoogle社でした(図2)。 

後編に続く

図2 米Google車が開発した自動運転車 図2 米Google車が開発した自動運転車
 

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