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自動運転 究極の安全を提供する夢の自動車が登場(下)

2012年に米国ネバダ州が、Google社が開発した自動運転車に、公道で実験走行するための免許を発行しました。これまで限られた場所だけで実施していた自動運転車の走行試験が、公道で実施できるようになったのです。つまり、実際に自動車が走っている環境の中を、いよいよ自動運転車が走れることになりました。米国に続いて欧州でも公道で試験が可能になり、さらに日本でも2013年9月に開発中の自動運転車が、公道を走るためのナンバー・プレートを取得しました。

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公道実験が必要なワケ

現在米国では、ネバダ州だけでなくカリフォルニア州やフロリダ州でも自動運転車の公道実験ができるようになりました。実際、カリフォルニア州サンフランシスコ市では、Google社が複数の自動運転車を走行させています。欧州ではドイツがBMW社に公道実験のための免許を発行。スペインでも、自動運転車の公道走行が可能です。自動運転の技術を実用化するうえで、公道を使った実験の役割は重要です。実際の環境で発生しうる想定外の状況に対応できるようにするために公道実験が不可欠だからです。自動運転の技術開発は、すでに長い歴史があり、基本的な制御技術は、かなりのレベルに達しています。ところが、実際の走行環境で遭遇する状況を、スペースや条件が限られた実験環境ですべて網羅するのは不可能です。このため公道実験が必要なのです。

日本企業の動きも一気に加速

自動運転の分野で先行したのはGoogle社と米スタンフォード大学のチームですが、米国ではGeneral Motors社もカーネギーメロン大学と共同で自動運転車を開発しています。欧州ではBMW社をはじめDaimler社、Volkswagenグループ、Volvo社も自動運転車の開発に力を入れており、すでに公道実験を始めています(図1)。

図1 自動運転の技術開発を手掛ける主な企業や大学 図1 自動運転の技術開発を手掛ける主な企業や大学

一方、日本の自動車メーカーにおける自動運転技術の開発も加速してきました。2013年9月に日産自動車が、開発中の自動運転車が公道を走行するために必要なナンバー・プレートを取得。同年10月にはトヨタ自動車が、高速道路の同一車線内をハンドル操作なしで走行できる試作車を発表しました。実際に首都高速を走行するデモンストレーションを実施しています。同じ月に本田技研工業も自動運転車の試作車を発表しました(図2)。さらに11月には、日産自動車、トヨタ自動車、本田技研工業の3社が集まり、国会議事堂付近の公道でそれぞれの試作車を走らせています。

3社のうち、日産自動車とトヨタ自動車は、実用化の見通しも明らかにしています。日産自動車は、2020年までに実用化する方針を2013年8月に発表。トヨタ自動車は、2010年代半ばに部分的な自動化を図った車両を実用化することを2013年10月に発表しました。 

図2 日系メーカーの自動運転車  (a)日産自動車 図2 日系メーカーの自動運転車  (a)日産自動車
(b)トヨタ自動車 (b)トヨタ自動車
(c) 本田技研工業 (c) 本田技研工業

センサがキーデバイス

自動運転のための技術開発が活発化してきた背景には、周囲の状況を制御システムに認識させるために欠かせないセンシング技術の進化や、そのために必要なセンサの低価格化が進んだこと。さらにセンサが検出した情報を基に車両を制御する技術の水準が高まってきたことがあります。

例えば、公道走行のためのナンバー・プレートを取得した日産自動車の試作車は、一般道と高速道路の両方を走行できるように設計されており、6台のレーザー・レーダー、3台のカメラ、3台のミリ波レーダー、12個の超短波センサを搭載しています。このうち自動運転に欠かせない車両位置の推定に使われているのが、レーザー・レーダーです。周囲にある特徴物とのとの距離をレーザー・レーダーで測定。3次元地図データの特徴点と照合することで、位置を数cm~十数cmの精度で割り出します。このほかのセンサは、車両の周囲にある障害物を検知するのに使われています。

Google社の自動運転車の屋根には、円筒形のレーザー・レーダーが取り付けてあります。米Velodyne社の製品で、周囲360度、垂直視野約27度の3次元空間にある物体との距離を測定できるのが特徴です。このレーダーで市街の構造をあらかじめ測定して、3次元地図データを作成。自動運転時はこのレーザー・レーダーや他のセンサで測定したデータと、3次元地図データを照合することで車両の位置を推定しています。同様の技術は、GM社、Volkswagenグループ、トヨタ自動車など自動運転車を開発する多くの企業の採用しており、こうした企業のほとんどが、Velodyne社のレーザー・レーダーを採用しているようです。

自動運転の実用化に向けた技術開発は着実に進んでいます。この後、順調に開発が進めば東京オリンピックが開催されるころまでには、“夢”の自動車が、現実に市街を走っているかもしれません。 

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