年末特別企画 ケイズデザインラボ原雄司氏インタビュー
2014年の3Dプリンタ市場を振り返る——ものづくりはB to CからB to Iへ
2014/12/25 10:00
ブームが落ち着いたかに見えた3Dプリンタ、2014年もさまざまな製品や素材、サービスが登場した。また世間を騒がせたニュースにもキーワードとして扱われ、秋葉原にDMMが手掛ける巨大Makers スペースが誕生するなど、依然として話題に事欠かない。 今回はfabcrossで3Dプリントにまつわる事例を連載で紹介しているケイズデザインラボから、代表取締役の原雄司氏に登場いただき、国内外のトピックや今後の可能性、必要とされる人材について伺った。
——3Dプリンタブーム元年で沸いた2013年を経た今年2014年をどのように見ていらっしゃいましたか?
原氏(以下略)「マスメディアによるブームが落ち着いたおかげで、しっかりと現実的なプロジェクトや、より具体的に実現に向かう人たちが残ったのかなと思います。
他の国ですと、タイも2013年がブームだったらしいんですね。先日、タイの展示会に出たんですけれども、『もうブーム終わったよね』という状態だったんですよ。何も来ていないのにブームが終息しているような雰囲気で、メディア先行でブームを作ってしまった例だとも思えるコメントが関係者からも聞かれました。
一方、日系企業が参入しているタイらしい、日本の製造業のしっかりした部分が根付いていることも感じました。突然起こったFabという概念がまったく分からないという層の反面、もう一方では個人で製品を開発していく、いわゆる脱下請けをしなくちゃいけないという意識の層が真っ二つに分かれているような状況でした。3Dプリンタはもちろん単なる道具であって、日本の場合は分断されていた層が少しずつ交流を始めて、Fabスペースから製造業までそれぞれの役割を持ったスペースや団体が交流を始めるなど、交わりが増えてきているというのは、期待できる状況だと思います。
DMMが与えた影響
その流れではDMMの影響がすごく大きかったですね。3Dプリンタブームの火付け役にもなりましたけれども、まずは3Dプリンタの造形価格を下げて、大きなメディアに広告を打って、3Dプリンタというキーワードを普及させて、その上で、ハードウェアスタートアップの支援をするスペースを作った。これまでの積み重ねの成果というのをいよいよ示しているわけですよね。日本のものづくりに異業種が参入して何とかしようという機運、これは3Dプリンタを含めてデジタルツールがあったからこそ成し得たんじゃないかなと思います。
(ケイズデザインラボは)当初DMMに3Dプリンタを販売して支援していましたが、正直なところここまで影響力が出てくるとは思っていませんでした。いま3Dプリンタのサービスビューローとしては、製造業も含めてトップですよね。取り扱いの案件数も多い月では数千件近くあり、試作業者からすると凄まじい数になるわけですけれども、こういったことを異業種がなし得たというのがすごいなと思っています。」
——製造業の経験が無い企業がいきなり参入して、しかもトップになるというのは、3Dプリンタのようなデジタルツールという基盤の普及が理由でしょうか。
「それもありますが、彼らとしてしっかりとした目標があったからでしょうね。3Dプリンタを普及させつつ、潜在的なMakersあるいはハードウェアで起業したい人たちに『俺たちでもできそうだ』と思わせる土壌を提供できたのが大きいですね。ちょっと苦言を呈するとしたら、国は恥ずべきかと思います。あれだけの資金を投入して、印象に残る取り組みがどれだけなされたか。国はそこに効果的なプロジェクトを投下していないことを、よく考えるべきだと思いますね。その中でDMMや東京リスマチック、八十島プロシードといった企業が頑張っているのだと思います」