新しいものづくりがわかるメディア

RSS


年末特別企画 ケイズデザインラボ原雄司氏インタビュー

2014年の3Dプリンタ市場を振り返る——ものづくりはB to CからB to Iへ

——製造業における3Dプリンタに対する見方は変わりましたか?

「大きく変わったかというとそうではなく、展示会に行っても『3Dプリンタはまだまだ実用はできない』と言える理由を探して、それで落ち着いているのではないでしょうか。

今年のJIMTOF2014(日本国際工作機械見本市)で金属プリンタが複数出展されていましたが、その中には、技術先行で開発した一方で、用途についてはより具体的な提案ができず『多分こういう風に使えるんじゃないかな』という説明のものもありました。売る側・買い手側でも、さらに研究が必要な分野だと思います。価格が1台数億円する技術に対して、利用できなければ意味がないですからね。

『その研究の必要がある』というのを見て、製造業者は『まだまだだね』と思ってしまうのだと思います。一方でEuroMold(欧州最大規模の金型加工/3Dプリンタ展示会)では、もう3Dプリンタは定着し拡大の方向に進んでいます。EuroMoldに行って危機感を抱いた一部の人たちはその情報を出すかというと、公表はあまりしないのが現状だと思います。なんとか先行しようと思うような状況で、こうした情報格差が起きているのではないでしょうか。日本の中だけ、特定の地域だけ、また特定の業種に限らず見ると、違う見方の考えも生まれると思います。

玩具の大手メーカー世界第2位のHasbro社は『トランスフォーマー』の本体を金型で作っていますが、オプションは3Dプリンタで作って販売しているんです。そのような形態は(日本の)大手であってもできるはずです。それは“3Dプリンタで作った”というだけのポーズではなくて、きちんとメリットのある、次の時代を見据えた多品種適量生産というものづくり、いわゆるB to B、B to Cから、B to I(Individual,個人)への入り口になるんじゃないかと思います」

なぜ材料開発を諦めてしまったのか

「あと、日本はもう3Dプリンタ向けの材料開発を諦めてしまったのかなという風にも見えて、それが非常に残念です。以前より、材料メーカーからの相談をいただいて、『まずはテストしましょう』と言うと、『いやーそれは(3Dプリンタを買う)稟議通すのが……』って言われるんです。開発のためには必要だろうって思うんですけど、やはり『トップの説得が』となってしまうんですよ。『御社の材料の特性は』って聞くと、いろいろ説明を熱く語るんですが、『じゃあ試しに安価な3Dプリンタを使って造型してみればいいじゃないですか』って言うと、そこでストップする。そういう相談はこれまでに何件もありました。

基礎開発は日本が得意なはずなのですが、3Dプリンタの造型材料市場にあまり参入していないというのは、すごくもったいないですね。

そうこうしているうちに、中国をはじめとする海外諸国では材料開発を積極的に進めている状況で、日本は一歩も二歩も遅れてしまったと言わざるを得ない。2014年は材料関連の問い合わせはものすごく減りましたね」

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る