年末特別企画座談会
みんなが集まるものづくりのハブを目指して——“ファブの中の人”座談会
——大きな企業が利用するだけでなく場所自体を運営するケースも出てきていますよね。
梅澤「Fablab Shibuyaの事例で言うと、先ほどの&Fab以外にも湘南T-SITEの中にファブ施設を作ったり、小売店舗の中でレーザーカッターやUVプリンタや3Dプリンタを使ってカスタマイズしていくという事例がありますね」
——2014年に入って、そういった出店も増えたと思いますが、どうして同時多発的に起きたんでしょうか。
梅澤「私たちの場合、前からやりたいと思っていた企業は沢山あって、&Fabという先行事例ができたことで社内稟議を通しやすくなったという背景があると思います(笑)」
——なるほど、事例ができたことで「自分たちでもできるんじゃないか」という
梅澤「たぶん3Dプリンタとかもそうだと思うんですよね。最初は突然現れた魔法の箱みたいに報道されていたけれど、何ができるかといった事例を通じて、それこそ頭の中にレイヤーが1つできたっていうのはおっしゃるとおり。事例を通じて次のステップに行けたのかなと思います」
ファブ施設の運営に必要な人材ってどう育てるの?
——そういった流れでファブ施設がたくさん立ち上がると、今度は運営する人たちをどう確保し、育てていくかという問題もあると思いますが、どのように対処されているんですか?
梅澤「すごく苦労してます。なかなか適任者っていないんですよ。エンジニアリングとコミュニケーションを両立できる人ってまだまだ少ないと思います。FabLab Shibuyaを運営するためにデジタルファブリケーション協会っていうのを作って、そこで中小企業庁にもサポートいただきデジタルファブリケーションスキル認定講座っていうのを今年の6月から始めました。FabLabや&Fabでのノウハウを講座に反映させていますので、講座を受けた方にお話ししたり、美大にも積極的に行って興味持ってもらうようにしています。あとは先生の紹介で『この人いけるかも』という人に話をふるとかですかね。なかなか求人かけて集まるわけでもない領域ですので、工夫しなきゃなと思います」
毛利「僕らは『来る人拒まず去る人追わず』っていうのが前提にありますが、基本的には一つ何かとがっているものがある人が欲しいんですよね。面白いものを持ってる人たちの考えを取り入れたいので。だから、僕らはほんとになにか一つ特化してる特技がある人がいたら、その人になるべくまた来てもらえるように話してっていう感じですね」
——そのとがった要素って具体的にはどういうものですか?
毛利「技術でも趣味でも全然かまわないです。例えば、鉄道マニアでモデリングする子がいて、CAD鉄って言うんですけど」
一同(笑)
中村「そういう、ほんとに1つなんかすごく得意なもの、好きなものがあるっていう人が来てもらえればよくて、別に何も分からなくていいんですよ。ここでみんな新たな自分に気が付いていくので。モデリングに関しては教えるプロが共同経営しているストーンスープにいますし、3Dプリンタは毛利に聞けば全部分わかるので、やる気と才能次第ですね。最近はさらにミライスも仲間になりました。かつて隣の家にしょうゆを借りに行ったように、それぞれが持つ技術を持ち寄ればいいと思っています。会社の中に閉じこもっていても何も生まれません。会社も個人もオープンの場所に出て、3Dプリンタとそれぞれが持つ技術を見せながら恊働しています。そうすると今まで気づかなかったことに誰かが気づき、新たなビジネスも創発されると思います」