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取材レポート:ドローンのいま

農業や土木/建設など商業利用で立ち上がる海外のドローンスタートアップと日本の取り組み

同協会は日本でもドローンを安心安全に商業利用するために、パソコンやスマホを活用したシステム構築で培かってきたM to M認証などの技術を活用することを目的としている。現在最も力を入れているのが、精密農業分野へのドローン活用の普及である。2016年春からの北海道旭川市での本格的な実証実験開始に向け、JAと地元農家の協力のもと準備を進めている。

日本は海外と比べれば圃場の面積が狭い。そこで、地中に埋めたフィールドセンサを精密農業に利用する方法もある。それと比べて、ドローンを利用する場合のメリットについて春原氏は「フィールドセンサは圃場全体の様子を確認するためには有効だが、細かい単位で計測をしようとすると複数のセンサを埋めていく必要がある。これに対してドローンによる精密農業では、1機で圃場全体を撮影し、後からポイント単位でチェックしていくことができるので、導入コストも管理コストもフィールドセンサより抑えることができる」と語る。また、フィールドセンサとドローンからのデータを組み合わせて照度や水温の変化と生育の相関関係を調べるようにすれば、さらに正確な判断ができるようになるという。 

ドローンから撮影された農場の画像。 ドローンから撮影された農場の画像。

一方春原氏によれば、日本における土木/建設分野でのドローン活用については、公共事業に関わる分野で期待されているという。特に、2012年に起きた中央高速道におけるトンネル事故の影響から、全国にある橋梁(約70万橋)とトンネル(約1万本)に対して5年に1回の点検を行う省令が2014年から施行されているが、これまでのような目視のやり方では効率が悪く、すべての橋梁やトンネルのチェックを5年間で終わらせるのは難しいと言われている。その検査をドローンで行うための検討が始まっており、2016年は政府主導で土木/建設の分野でのドローン活用に関する積極的な審議が行われるとみている。

国土交通省は、建設現場におけるドローンなどICT技術を活用した生産性向上の取り組みを、「i-Construction」として推進している。(出典:国土交通省) 国土交通省は、建設現場におけるドローンなどICT技術を活用した生産性向上の取り組みを、「i-Construction」として推進している。(出典:国土交通省)

前述のように、海外ではドローンの商業利用を推進するさまざまな制度が設けられており、フランスでは商業利用のためのドローン操縦には免許が必要で、実技と筆記の試験をパスした人材しか飛行させることができない。一方で、ドローンを安全に操縦するにはそれなりのテクニックや習熟が必要なため、海外では商業利用において誰でもが安全にドローンを飛ばすことができるよう、自動飛行に関する技術がすでに実用化されている。これに関しても、セキュアドローン協議会ではドローンの自動航行技術開発を研究課題としている。

自動航行中のドローン用ソフトウェアの表示例。 自動航行中のドローン用ソフトウェアの表示例。

以上のように、海外と比べて日本ではドローンの商業活用についてはまだまだ遅れているが、今後ドローンの商業利用が進んでいくことによって、日本固有の問題が解決できる可能性もあるという。日本は高齢化によって就労人口の減少が心配されており、特に農業といった第一次産業や土木/建築などの第二次産業における人手不足は深刻な問題である。ドローンの商業利用はその問題を解決できる有効な手段となるかも知れない。さらにセキュアドローン協議会では、「ドローン技術は車の自動運転のためのインフラ調査など、さまざまな分野での活用が期待され、新たにドローンを操作する人材が必要になれば雇用促進にも期待がかかる」と、ドローン活用の人材育成にも力を入れていくという。

セキュアドローン協議会では親子を対象としたドローン教室を全国で開催し、小学生の頃からドローンに興味をもってもらうことで将来の人材育成に役立てようとしている。 セキュアドローン協議会では親子を対象としたドローン教室を全国で開催し、小学生の頃からドローンに興味をもってもらうことで将来の人材育成に役立てようとしている。

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