鳳龍四号開発チームインタビュー
世界中の誰もが人工衛星を作れる時代へ——多国籍学生チームで開発した「鳳龍四号」
2016年2月17日、三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)はH-IIAロケット30号機の打ち上げに成功した。30号機には、日本で6機目となるX線天文衛星「ひとみ」と併せて、小型衛星3基も相乗りしていた。その中の一つ、九州工業大学(以下、九工大)が開発した「鳳龍四号」は、開発者の半数以上が途上国を中心とした留学生で構成されている。多国籍で開発する事の背景や意義、世界各国から集まったエンジニアの卵が描く衛星開発の未来について取材した。
福岡県北九州市にある九工大戸畑キャンパスに鳳龍四号の開発拠点「宇宙環境技術ラボラトリー」はある。宇宙環境試験施設としては国内でもトップクラスの設備を擁し、2010年に帰還し話題になった小惑星探索機「はやぶさ」の試験もここで行われている。
ラボの中に入ると日本人学生だけでなく留学生が黙々と実験や作業にいそしんでいた。
宇宙環境技術ラボラトリーは2004年に設立(設立時の名称は宇宙環境技術研究センター)され、「衛星帯電」、「超高速衝突」、「宇宙材料」、「超小型衛星」の4分野を主な研究領域と定義し、大学での基礎研究に加え、産官学プロジェクトで人工衛星を打ち上げる際の試験機関として運用されている。九工大は大型衛星用の技術の実証実験を主な目的に小型衛星を開発していて、鳳龍四号も宇宙空間で発生する放電現象から衛星を守るための試験を行う目的で開発された。
人工衛星を開発している大学は国内で約30校あり、いくつかの大学はODA(途上国への政府開発援助)の一環で、途上国から留学生を受け入れている。
九工大では毎年10人程度の留学生を受け入れ、現在もおよそ40人の留学生が日本の宇宙開発技術を学んでいる。今回の鳳龍四号も延べ47人の学生が開発に参加し、その半数以上が18ヵ国から来た留学生だ。
開発から運用まで関わる貴重なチャンス
エジプトから留学生として来ているモハメド・ヤハヤ・エドリエスさんは母国でも宇宙開発プログラムに関わり、電源システムの研究開発を専攻していた。
「このプロジェクトが博士課程のテーマとも合致していたのがきっかけで、先生から声をかけてもらいました。母国でも部分的にプロジェクトに参加していましたが、小型人工衛星の開発から運用まで携わる機会はめったにありませんし、プロセスを学べるのは非常に良いことだと感じています。また多国籍で開発することはマネジメントを学ぶ上でも重要ですし、母国に帰国した後も学会を通じてネットワークができるので参加するメリットは大きいです」
同じくインドネシアから留学しているラマティラー・ラーミさんは、インドネシアの大学に通っていたときに鳳龍プロジェクトに参加した先生の講演を聞いたのがきっかけだった。
「それまで宇宙開発に関わる研究やプロジェクトに関わる機会が無かったのですが、国費留学の制度を使って日本に留学すれば、自分も衛星開発に関わることに魅力を感じて応募しました。インドネシアは宇宙開発のプロジェクトが非常に小規模で、なかなかやりたいことが実現できないのが実情です。ここで学んだことを生かして、インドネシアの宇宙開発機関や大学内のプロジェクトで研究開発を続けていくのが目標です」