最高学府もテンアゲで! ギャル電×東大コラボの無線給電シャンパンタワー
皆さんは、シャンパンタワーを生で見たことがありますか? 僕はあります。しかも、無線給電で光るシャンパンタワーを、渋谷のど真ん中で。
ここは渋谷スクランブルスクエアの15階にある会員制施設、SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)のイベントホール。スタートアップやさまざまな活動グループが拠点を構える先進的なスペースの一角に、およそ似つかわしくないグラスが積み上げられ、点灯の時を待ちわびています。
2022年11月3日、東京大学 大学院工学系研究科が主催した「テクノサイエンスカフェ出張版 工学×ギャル『工学鬼盛りテクノロジー↑↑無線給電シャンパンタワー令和伝説イン渋谷!!』@SHIBUYA QWS」から、東大とギャル電がまさかのコラボを果たし、アゲアゲなテクノロジーで一体となったイベントの様子をお届けします。
渋谷の真ん中に先端技術とギャルが集う
東京大学 大学院工学系研究科では、工学の魅力を伝える活動として「テクノサイエンスカフェ」を開催しています。小中高生やその保護者を対象に実施してきましたが、新型コロナウイルスの影響でしばらくストップ。およそ2年の時を経て再開するにあたり、白羽の矢が立ったのが、ギャル×電子工作の世界を走り続けるギャル電でした。
総合MCを務める伊與木(いよき)健太さん(東京大学 大学院工学系研究科 化学システム工学専攻 講師)は、「今まで工学と出会うことがなかったものを掛け合わせるべく、ギャル電さんにお声がけしました。東大工学部の最先端テクノロジーを無駄遣いして、最高にアゲアゲなものを作りました」とイベント開催の経緯を語りました。
あまたある工学系研究科の技術の中から、今回選ばれたテーマは「無線給電」。最近ではスマートフォンの充電などにも活用されている技術ですが、ギャル電の発想によってシャンパンタワーを光らせるために使われることが決定。そこからおよそ半年かけて、無線給電シャンパンタワーの準備を進めたそうです。
こちらはfabcrossでもおなじみ、ギャルによるギャルのためのテクノロジーを提案していくギャル電きょうこさん。「渋谷のギャル、全員光らす」と意気込んでいます。
会場に設置されたグラスのタワーには、シャンパンの代わりに薄い基板のようなものが入っています。これらがどんな活躍をするのか、そして本当に「シャンパンタワー」と呼べるものになるのか、未知だらけのイベントがスタートです!
無線給電の歴史と仕組みをざっくり学ぼう!
テクノサイエンスカフェの魅力は、普段はあまり知らない工学の世界に触れられること。無線給電のレクチャーをしてくれたのは、今回のシャンパンタワー専用システムを設計した成末義哲(なるすえ・よしあき)さん(東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 講師)です。
成末さんがモットーにしているのは、使いやすく、作りやすい技術であること。いくら性能が良くても使いにくくては広まらないという考えで、ギャル電の提唱する「テクノロジーの民主化」に共感したと言います。
ぎゅっと凝縮された講義の中では、テスラやヘルツの実験に触れながら、無線給電の歴史と原理を紹介。身近な暮らしで使えるようになったのは最近のことですが、技術としては長い歴史を持つものなのだとか。今回採用した「共振型」の無線給電方式は、最もメジャーな「電磁誘導型」に比べて、サイズが異なる装置や距離が遠いものであっても電力を供給できるという強みがあるそうです。
テーブルクロスの下にあるのは、シャンパンタワーに電力を送るための装置。タワーのてっぺん、高さ70cm程度まで電力を供給できるように設計されました。外側に漏れ出る磁界を減らすなど、成末さんの研究成果が多数投入された「ほぼ集大成」と言える出来栄えなのだとか。普段の業務に負けないくらい、本気で設計されたぜいたくなシャンパンタワーなんですね……!
コールと共に、タワー点灯!
さてさて、座学の後は実技といきましょう! 点灯の音頭をとるのはギャル電きょうこさん。イベントに向けて本場のシャンパンタワー文化を学んだところ、周囲で盛り上げるホストたちの苦労を感じたそうです。
「夜まで酔っ払って仕事した次の朝にはコールの練習をしてるから、マジで大変そう。こういうのはテクノロジーで解決した方がいい」ということで、ホストの代わりに人工音声アシスタントのAlexa(アレクサ)がシャンパンコールする仕組みを作ったとのこと。
おもむろに「回向院アキラ」という源氏名のスマートスピーカーを取り出したきょうこさん。シャンパンタワー点灯の合図を語りかけます。
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きょうこ
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「アレクサ、無線給電シャンパンタワー!」
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回向院アキラ
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「ごめんなさい、よく分かりません」
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きょうこ
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「そんなことある……? まぁ全然焦らなくていいっしょ」
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きょうこ
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「もう一回やってみるわ。アレクサ、無線給電シャンパンタワー!」
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回向院アキラ
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「シャンパンタワー入りました!」
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きょうこ
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「来たッ! アキラのいい波!」
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回向院アキラ
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「サンキュー! サンキュー! テクノロジー!」
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回向院アキラ
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「無線じゃないとかありえない! それグイグイよしこい!」
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回向院アキラ
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「サンキュー! サンキュー! テクノロジー!」
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きょうこ
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「アレクサありがとう!」
回向院アキラが呼びかけに応じ、見事に無線給電シャンパンタワーが点灯! 周囲の音声に合わせ、タワー全体がリズミカルにライトアップされていきます。どこから見ても輝いているのは、あいだにケーブルを必要としない無線給電のおかげと言えるでしょう。
無線給電シャンパンタワーシステムすごかった。台から発せられた電波?電磁波?覇気?をグラスの中に入ってるLEDが感知して発光してるらしい。
— シャンパンタワー職人 (@towercraftsman2) November 3, 2022
どこまでその覇気を感知するか釣り竿の先にLEDを付けて実験。 pic.twitter.com/GpcmQ9kAij
イベントをサポートしたシャンパンタワー職人、小泉智さんも驚きの声をツイート。
シャンパンコールが終わった後は、さらに間近で鑑賞タイム。釣りざおの先に受信機を付けてタワーに近づけ、電力を受け取って光らせる体験は、会場の小さな子供たちに大人気。こんなに早くから無線給電デビューするなんて、日本の未来は明るいぞ!
シャンパンタワーに込められた工学の叡智
イベントの最後には座談会を実施。成末さんやきょうこさんの他にも、無線給電シャンパンタワーを実現するために集まったプロフェッショナルたちが意見を交わしました。
会場を盛り上げたのは、シャンパンタワーに使われた「Plakira(プラキラ)」というグラスについての話題。東大工学部卒業生の石川勤さん(石川樹脂工業 専務取締役)によれば「1000回落としても割れない、靭性を備えたグラス」とのことで、透明度の高さや耐熱性も兼ね備えた、シャンパンタワーに特化して開発された製品です。
タワーを組み立てやすいようプレートの底面には溝が掘ってあり、樹脂成形ならではの素材や形状の強みが発揮されています。電力から素材まで、工学がカバーする範囲の広さと奥深さを感じられた一幕でした。
子どもからシャンパンタワー職人まで、多くの人が無線給電を体験した本イベント。工学がいつもより身近に感じられた時間は、「将来、東大工学部で光らせましょう!」というMCの力強い言葉で締めくくられました。これからも、ギャルも先生も、アゲアゲでいきましょう!