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アジアのMakers by 高須正和

スタートアップとは違う日本の「Maker Pro」4年で10倍近い伸び、そして世界へ

Maker Pro 社会的な存在であるMaker

こうしたマーケットプレイスを、世界を相手にずっと続けている深センのSeeedは、最近「Maker Pro」という言葉を強く打ち出している。Maker Proは「ハードウェアスタートアップ」と重なる部分もあるけど違う言葉だ。スタートアップはフルタイムの仕事だ。「スタートアップは40年間ゆっくり働くかわりに4年間ものすごくハードに働く」と、アメリカのVCであるY Combinatorのポール・グレアム氏は言っている。かつては趣味の延長と考えられていたクラウドファンディングは、むしろハードウェアに関してはプリセールスの一つ、プロの仕事場になりつつある。

Maker Proはフルタイムのハードウェアスタートアップよりずっと範囲の広い言葉だ。SeeedはMakerの役割を“Prototype, Produce, Promotion”と言っている。Prototypeは制作すること、Produceはその制作物を他人から見てどう見せるか、Promotionはオープンソースで公開したりMaker Faireで展示したりして多くの人を巻き込むこと。それぞれの力をもっと強くしていこうというのがMaker Proへの呼びかけだ。

巻き込むというのは協力者を見つけることだ。たとえばMaker Faireで展示する際に、自分が席を外しているときに誰かがブースにいてくれるだけですごく助かる。そのときの出展物は、Prototypeをした人だけのものじゃない。もちろんファンや購入者も大事だ。前回の君が内向的なオタクであることはいちばん大事なことだ「世界ハッカースペースガイド」で書いたように、自分の興味を受け取ってくれて、一緒に好きだと言ってくれる人がいるから、僕たちのプロジェクトは続く。

Maker Faire Shenzhen 2017では、各ブースに「MAKERS GO PRO」の文字があった。「ホームセンターてんこ」などのマンガで知られるとだ勝之先生も出展。とだ先生は、工作物と商業誌と同人誌を自分のブースに並べ、大人気のMaker Proだった。(撮影:伊藤亜聖) Maker Faire Shenzhen 2017では、各ブースに「MAKERS GO PRO」の文字があった。「ホームセンターてんこ」などのマンガで知られるとだ勝之先生も出展。とだ先生は、工作物と商業誌と同人誌を自分のブースに並べ、大人気のMaker Proだった。(撮影:伊藤亜聖)

Hardware is Hardといわれる。その困難さを指して、ソフトウェアのものづくりはバンド活動、ハードウェアものづくりはオーケストラともいわれる。展示ブースを助けてくれる人、他の人を連れてきてくれる人は、オーケストラの一員だ。Makerはいつでも誰でもできる。自分で演奏することも他人と一緒に演奏することもできる。

深センの有名Maker、セクシーサイボーグことナオミ・ウー氏が言うとおり、Makerの活動には見せることなどで他人と関わる活動も含まれる。Makerは社会的な存在だ。

深センのハードウェアアクセラレータHAXの資料に見る、Hardware is HARDの図。バンドのようにフレキシブルに行えるソフトウェアに比べて、多くの人が関わるハードウェアはオーケストラを組織するようなものだ。 深センのハードウェアアクセラレータHAXの資料に見る、Hardware is HARDの図。バンドのようにフレキシブルに行えるソフトウェアに比べて、多くの人が関わるハードウェアはオーケストラを組織するようなものだ。

ものを作って生きるには

Maker Proはお金を稼ぐという意味のプロフェッショナルだけではなく、そうやっていろいろなMakerたちを巻き込んでいこうという意味が込められた言葉だ。

『物を作って生きるには ——23人のMaker Proが語る仕事と生活』(ジョン・ベイチェル著、野中モモ訳。オライリージャパン)は、アメリカの16人のMaker Proに加えて、日本語版では日本から6人が紹介されている。この書籍の登場人物で製造業の会社経営者は、MakerBotのザックと、Chumbyのバニー・ホアン、ホットプロシードの湯前祐介氏の3人ぐらいで、その3人を含めた23人全員が、作ること、自分の作ったもので人と関わること、つまりはそれぞれの“Prototype, Produce, Promotion”の面白さを語っている。生きることが社会的な活動であるように、ものを作ることも社会的な活動だ。

僕が出している2冊のMakerに関する著書はオンデマンド出版で、これまでの出版に載らなそうで、実績がない著者の本を、初期投資を少なくしてとりあえず出版してみるという、同人とプロの出版物の中間のようなものだが、それでも実際に自分の書いたものを数時間かけて読んでくれる読者の存在や、僕が行うMakerイベントを一緒に形作ってくれる共演者や観客、運営者などの人々の存在は、僕を大きく変えた。そうした活動でできた僕と社会との関係が、今の僕のバックグラウンドになっている。こういう活動は社会がどうなろうと、自分たちの手作りで大きくしていくことができる。

Maker Faire Tokyoで、自分のハードウェアを販売しているブースはそれほど多くない。販売すると出展料の区分が変わるなどの事情あり、出展ブース全体の半分に満たないだろう。だが、今後はますます増えていくのではないだろうか。

また、日本から海外のMaker Faireに自分のハードウェアを売りに行く人はさらに増えていくはずだ。言葉の壁はあるが、日本発のWebサービスが世界に出て行くより、ハードウェアの方が世界に出て行きやすいと思う。前述したナオミ・ウー氏のインタビューにも、彼女の最初のハードウェアプロジェクトは、日本の光るスカートを踏まえたものだと書いてあった。Makerの活動は簡単に国境を超える。

僕は世界で一番たくさんアジアのMaker Faireに参加しているが、どこのMaker Faireでも日本からのブースは大人気だ。日本のコンテンツが注目されていくように、日本のMakerはますます注目されていくと思っている。

Maker Faire Bangkok 2018でのスイッチサイエンスブース。日本から持って行った「MIERUNDES」という委託販売品が注目された。まわりの日本人出展者も大人気。 Maker Faire Bangkok 2018でのスイッチサイエンスブース。日本から持って行った「MIERUNDES」という委託販売品が注目された。まわりの日本人出展者も大人気。

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