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3つの新型3Dプリンタと、6つのワークショップイベント

FabLab Japan発起人であり、日本とアジアのファブラボを精力的に推進する田中浩也氏の研究室では、3つの新型3Dプリンタの展示と6つの参加型ワークショップを行っていた。

まず一つ目が、竹中工務店と共同で開発している、建築用3Dプリンタ「ArchiFAB」だ。

高さ2mを超えるデルタ型3Dプリンタで、田中氏を含めたスタッフで組み立てる。単に大きいだけではなく、分解と組み立てのしやすさを考慮しており、さまざまな場所に運びやすく設置しやすいことが特徴だ。慣れてくると、組み立てには1時間もかからないという。

実際に、会場では最終的には1.5mほどになる柱の、部分型枠出力を行っていた。とはいえ,「3Dプリンタだけで家を建てる」という一発芸的なものではなく、コンクリートや他の素材・構法と組み合わせていくとし、3Dプリントするのは複雑な形状部分だけになる見込みという。

ArchiFABと、それで出力された建築型枠の一部。 ArchiFABと、それで出力された建築型枠の一部。

二つ目は、化学材料メーカーであるJSRとの共同研究によって開発した3Dプリンタで、従来に比べて柔軟性の高い「曲げられる素材(メディカルポリマー)」の造形を可能にしたものだ。訪問研究員の増田恒夫氏を中心に、身体補装具や固定具など、主に医療分野における柔らかい素材と3Dプリンタのあり方を模索している。これからどのような活用方法があるのか、皮膚との生体適合性なども含め研究していきたいという。

プリンタで出力された造形物内部にICタグを埋め込むこともでき、医療現場においてさまざまな活用方法があるのでは、と田中氏は語る。 プリンタで出力された造形物内部にICタグを埋め込むこともでき、医療現場においてさまざまな活用方法があるのでは、と田中氏は語る。

三つ目が、米と水を混ぜた麹を出力するフードプリンタや、画像データをもとに、ご飯の上にデザイン通りに「ふりかけ」をかける、ふりかけプロッタ「ランチボット(Lunch Bot)」など、食に関連した2種類のファブマシンだ。また、機械をつくるだけでなく、未来の「食」がどう変わっていくかを考えるワークショップにも、多くの人が関心を持ちながら参加していた。

ふりかけプロッタ“Lunch Bot”。学部生の淺野義弘氏が開発した。 ふりかけプロッタ“Lunch Bot”。学部生の淺野義弘氏が開発した。

どれも、新しい3Dプリンタを展示するだけでなく、そのプロトタイプが実際に動いている様子を見てもらったうえで、参加者と一緒にツールの活用法や未来の暮らしのあり方について考えるアイデアワークショップを行っている点が特徴的だ。実際にユーザとなる一般の人たちのニーズや意見などを交わしながら、デジタルファブリケーションの未来を、「技術」と「社会」の両面から構築している。

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