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大学から始まるものづくりの今

研究成果を共有するORF——開かれた大学を目指すSFCの取り組み

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)は、毎年開催している「Open Research Forum」(ORF)において、各研究室が研究成果の発表や、研究に関連したワークショップなどを行っている。その中からfabcrossが注目する研究内容などを紹介する。

SFC各学部の研究室が普段取り組んでいる研究活動や研究成果を発表するORF。今年のテーマは「Proto-University」。ネットの普及で無料オンライン教育環境が整ってきた現代において、大学は果たすべき役割を今一度見つめなおそうと取り組み始めている。そこで、従来の展示セッションに加えて、ワークショップやサテライトイベントを実施。会期も2日間から1週間に拡大するなど、SFCが取り組んでいる最先端の研究事例を多くの人たちと共有し、かつともに考える場を作っていこうという目的がそこにはある。

それでは、fabcrossとして注目したいくつかの研究室の内容を見てみよう。 

自動運転研究の最前線

以前fabcrossでも紹介した、自動運転研究の第一線で活躍している大前学研究室は、スマートモビリティに関する展示を行っていた。同研究室では、オンデマンド型自動運転と呼ばれる、携帯電話で呼び出すとクルマが自律的に迎えに来て目的地に移動したら車庫や駐車場に戻るというものや、センサによる情報を車車間で共有することで可能になる高密度隊列走行によって、交通量の緩和や燃費効率を向上させる研究などに取り組んでいる。さらに、今回はインフラ誘導型自動運転について展示説明を行っていた。

インフラ誘導形自動運転の被制御車に搭載する I/O ボード。 インフラ誘導形自動運転の被制御車に搭載する I/O ボード。

Googleなどが取り組んでいる自動走行車は、車体一つ一つに対して画像解析のセンサなどを搭載するモデルだ。これに対してインフラ誘導型は、大型の施設などに認識制御機能を設置してカメラとセンサによって被制御車を認識し、制御信号が届くエリア全体の車両の動きを最適化する。車体には制御信号を受け取るチップを搭載すれば運転制御を行えるため、既存のクルマの車体にチップを搭載するだけで自動走行車に仕立てることができる。インフラと車両の双方が協調することで可能となる自動走行の可能性を提示した。すでに、時速15km以下でインフラから小型EVを誘導する実装実験を行っている。今後は、市販自動車の誘導を試みる予定だ。

リアルとデジタルの融合を目指して

続いて、筧康明研究室の取り組みを紹介する。筧研究室では、「Designing Real」というキーワードのもとに、物理世界とデジタルの世界のそれぞれの特性を生かした新たな分野を開拓する研究室だ。アート、デザイン、エンジニアリングといった分野を横断しながらさまざまな研究を行っている。

実際に、「Vivifield Doodle」を使い、靴型のモジュールを動かしていた。 実際に、「Vivifield Doodle」を使い、靴型のモジュールを動かしていた。

同研究室の学生たちが取り組んだものに「Vivifield Doodle」がある。これは、3Dペンと靴型装置を用いた動的な立体描画支援ツールで、3Dペンを使って空中に描いた線画が電子回路の一部になるというものだ。靴型のモジュール間を導電性フィラメントでつなぐことで、靴同士の接続を判別し、フィラメントの長さを抵抗値としてセンシングすることで、大きな描画物の場合は速度が遅く、小さな場合は素早く動くように、描画物によって動きを変化させることができる。

「Mirage Printer」のデモの様子。マウスでポイントを操作することで、投影されたモデルを加工することができ、それによって出力される造形物にリアルタイムで修正を加えることができる。 「Mirage Printer」のデモの様子。マウスでポイントを操作することで、投影されたモデルを加工することができ、それによって出力される造形物にリアルタイムで修正を加えることができる。

同研究室博士課程の山岡潤一氏が手がけたのは、「Mirage Printer」だ。これは3Dプリンタと立体映像を合わせた装置で、実物体に映像を重ねるAR(拡張現実)技術と物理的な3D造形をつなげた3D造形ツールとなっている。

3Dプリンタと空中像ディスプレイから構成され、プリンタ内の造形面や造形物の周りに実物大の空中像モデルとして投影する。空中像に対して手を加えると、空中像モデルと同じ場所、サイズの造形物が出力される。
ユーザは実物大の空中像モデルをプリンタ内において出力中の造形物と見比べながら設計し、オリジナルの上に新たな形状をモデリングし追加することができる。

従来の3D プリンタは、完成形を事前にデータ化し、それを入力したら、出力するまで待たなければいけなかった。Mirage Printerの仕組みを活用すれば、ARで造形したい形をその場で微調整しながら出力することができる。事前のデータ作業では分からない微妙な誤差や、3Dの物体ならではのデザイン修正を行うことができる。現在は、まだ実証実験段階だが、今後3Dプリンタの新しい可能性を広げる取り組みだといえる。 

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