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クラウドファンディング実体験レポート

初めてのKickstarterで初めての3Dプリンタを手に入れました ~1万円以下、激安3Dプリンタのその後

もともと3Dプリンタにはそんなに興味がなかったし、ましてや家に置こうなんて全然考えてもなかった。

fabcrossで『約1万円と廉価なデルタ型3Dプリンタ「101Hero」』の記事を見つけたときも、やっぱり興味がなくてすぐにページを閉じたのだ。……でも数日後、たまたま、なんだか急に散財したい気分の日がやってきた。
そして半年後、3Dプリンタを手に入れてバラ色の3D生活を送るまでの体験記です。

初めてのクラウドファンディング

101Heroは「世界一お手頃な3Dプリンタ」を歌うKickstarterのプロジェクトで、79ドル出資するとデルタ型の3Dプリンタが1台もらえる。

公式プロモーション動画

何を隠そう、これは僕の初めての出資であった。クラウドファンディングといえば、上級者ほど「商品は届かないと思え、店じゃないんだぞ」と語るサービスである。思いっきりビビりながら、もう最初から勉強料のつもりで、約8700円の出資を決めた。どうせそこまで欲しくなかった3Dプリンタである。あまり期待しないほうが、あとあとの精神的ダメージも少ない。

なんて言いつつも、僕はその日からプロジェクトページのコメント欄をマメにチェックするようになった。最初はみんなが応援のメッセージを寄せる平和な場所だった。しかし途中でプロジェクトメンバーの素性を不審がるユーザーが現れ、その日を境にコメント欄が荒れ始める。

ユーザーA「おまえらの身元が信用できないからLinkedinのアカウント公開しろ!」
メンバー「中国在住なんだからそんなもん見れねえよ」
ユーザーA「Linkedin使ってないの?おまえらただの学生だろ!」
メンバー「プロダクト作るのにLinkedinのアカウント役に立つんか?転職活動じゃねえんだぞ」
ユーザーA「じゃあ今度北京行くから顔見せろ」
メンバー「いいよ、いつがいいんだよ」
ユーザーA「やっぱ忙しいから香港来い」
メンバー「いくわけねえだろアホ。お前ちゃんと製品できたら謝れよ」
ユーザーA「はいすいませんでしたー、隠しておきたい身元情報要求してすいませんでしたー」

全盛期の2ch顔負けのあおり合いが何日も続いた。クラウドファンディングは修羅の道、と心得ずにはいられない日々であった。

Kickstarterのコメントページより。 改めて見てみたら、あおっていた方のユーザーの発言は運営により消されてました Kickstarterのコメントページより。 改めて見てみたら、あおっていた方のユーザーの発言は運営により消されてました

沈黙するメンバー、はかどる進捗

そんなあおり合いをよそに格安3Dプリンタには多くの出資が集まり、目標額の20倍(!)の資金を集め、募集期間は終了した。この時点で僕の出資は確定し、口座から8700円が引き落とされる。もう後戻りはできない。

するとどうだろう、資金調達中はあれほどマメにコメント欄で出資者とやりとりしていたプロジェクトメンバーが、一切の発言をしなくなってしまったのだ。募集期間終了直後に進捗アップデートが一度更新されたのを最後に、コメントのレスを含め、なんの音沙汰もないまま2週間以上が経過……。

「だまされた!!」

あまりに露骨な急変に、そう思わずにはいられなかった。これがうわさに聞く詐欺プロジェクトか。だますにしてももうちょっと頑張ってるふりして、引っ張ってくれてもいいだろうよ。夢を見せてくれてもよかっただろうよ……。

しかし、そんな矢先のことである。

Kickstarterより Kickstarterより

なんかできてきてる!!!!!!!

20日ぶりの進捗アップデート。ちなみに写真はエクストルーダ(フィラメントが出てくるところ)周辺パーツの金型。このプロジェクトは死んでなかったのだ。わずか20日ぶりなのに、家出した息子が10年ぶりに生きて帰ってきたような気持ちで、思わず歓喜のよだれが出た。

クラウドファンディング=多幸すぎる通販サイト

その後も月1ペースで進捗報告はきっちり行われ、量産は順調に進んでいるようだった。反面で問い合わせに対しては塩対応(というより無味)で、相変わらずプロジェクトメンバーによるレスはなかった。それでも僕はなんだかワクワクしてしまって、毎日コメント欄をチェックしていた。

ちょっと話がそれるが、ここで、みなさんのネットでの普段の買い物を思い出してほしい。Amazonで何か購入するとき、テンションが最も高まる瞬間はいつだろう?それは注文ボタンを押す瞬間じゃないだろうか。「よし、注文だ!」っていうあの瞬間の高まり。しかしそのあと冷めるのは思いのほか早くて、家に商品が届いた瞬間には早くもテンションが1段階下がっている。

で、想像してみてほしい。あの注文ボタンを押す瞬間の高揚感、もし、あれが数カ月続く通販サイトがあったら最高じゃないだろうか? いいですか、みなさん。それ、あるんですよ。それがクラウドファンディングなんです。通販は届いてしまえば終わり。こちらは届かないかわりに、アップデートやコメント欄をチェックするたびにワクワクすることができる。1万円以下の出資でそれが数カ月続くのだ。なんてリーズナブルな麻薬!

ネット通販とクラウドファンディングの高揚感の違い ネット通販とクラウドファンディングの高揚感の違い

出荷

そんな高ぶった気分のまま季節は過ぎ、10月になった。製品の出荷予定月である。クラウドファンディングにおいては大抵のプロジェクトは出荷が遅れると聞いているが、101Heroは……

なんと、完成した。

Kickstarterより Kickstarterより

10月末には「いまから出荷するよー」というアップデートがあり、さらに待つこと2カ月弱。コメント欄に続々と到着報告が上がり始めた!!

……この流れ、これにてハッピーエンド、と思うだろう。いやいや、それは油断というものだ。いち早く手に入れた出資者からは初期不良や組み立て中の破損の苦情コメントが殺到。そして相変わらずプロジェクトメンバーは沈黙を守っていて、それがさらに出資者の怒りに油を注ぐ。詐欺疑惑に続き、あらたな地獄絵図が現れた。

地獄ではしゃぐ人たち

そんな地獄絵図の中でも、血の池の水をかけ合いながらはしゃぎまわる者たちがいた。トラブルになると途端に目を輝かせるタイプの、海外ギークたちである。

初期不良や組み立て時の破損の大半は、ステッピングモータのギア欠けだった。彼らはすぐさま壊れたモータを分解し原因を突き止め、代替できるモーターを探し、それが見つからないとわかるやギアの3Dモデルを起こし始めた。Facebook上には情報交換用グループができた。公式の組み立て手順の難点も指摘され、よりモーターに負荷のかからない手順がまとめられた。恐ろしいスピード感で、「コミュニティーの力」というものを思い知った1週間であった(そう、ここまでわずか1週間の話だ)。

欠けたギア。画像提供:Stefano Marcon、筆者により一部加工 欠けたギア。画像提供:Stefano Marcon、筆者により一部加工

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