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コーヒーはサイエンスでありIoTだった! 自分だけのブレンドコーヒーを開発できる工房に行く

「20年ぐらいコーヒー飲んでたけど、ちゃんとコーヒーのことが分かった」

普段、何気なく飲んでいるコーヒー。豆によって酸味や苦味、香りに違いがあることは、なんとなく知っていたが、何がどう違うかは全く知らない。エチオピア産のコーヒーとブラジル産のコーヒーの違いなんて知る由もなく適当に飲んでいた。そんな筆者と同じ距離感をコーヒーに感じている人向けのワークショップが静岡県三島市で体験できる。
(撮影:加藤甫、fabcross編集部)

その場所の名前はCOFFEE&CO.(コーヒー・アンド・コー)。
オーダーメイドでコーヒー豆を焙煎する工房で、2018年2月にオープンしたばかりだ。

オーナーの岡田裕二さんは半導体商社のマクニカでMakers向けの事業やサービスに長年携わってきた。IoT系のデバイスを開発している人なら一度はお世話になっているであろうマイコンボード「konashi2.0 & Koshian」も、岡田さんがマクニカ在籍時にユカイ工学と手がけたものだ。

学生の頃から喫茶店でアルバイトをしていて、いずれはコーヒーに関する仕事をしたいと思っていた岡田さんは2017年にマクニカを退職し、コーヒーの品質を評価するQグレーダーという資格を取得。
コーヒー豆の品質を評価する国際ライセンスだけあって、国内には400人程度しかいないという狭き門を突破して、自分の焙煎工房を地元である静岡県三島市にオープンした。

ビンテージとテクノロジーが心地良く融合した店内

三島市内の市街地の一角に突如現れる銀色のトレーラーハウス。これがCOFFEE&CO.だ

Airstreamと呼ばれる銀色のトレーラーハウスと、オーナーの岡田さん Airstreamと呼ばれる銀色のトレーラーハウスと、オーナーの岡田さん

車内は焙煎工房兼カフェ用に改装されている。我々を出迎えてくれた岡田さんいわく「トレーラーは1965年に作られたもので、海外のオークションでかなり安価に買えたけど、輸送費のほうが高くついた」そうだ。

コンパクトな車内の中には焙煎機やコーヒー豆が。ちなみに豆の保管室の温度管理はNature Remo、扉の鍵はQrio Smart Lock、お客さんとのコミュニケーションにBoccoとIoT系のデバイスで固められているのも、ハードウェアスタートアップとの関わりが深い岡田さんらしいチョイスだ。 コンパクトな車内の中には焙煎機やコーヒー豆が。ちなみに豆の保管室の温度管理はNature Remo、扉の鍵はQrio Smart Lock、お客さんとのコミュニケーションにBoccoとIoT系のデバイスで固められているのも、ハードウェアスタートアップとの関わりが深い岡田さんらしいチョイスだ。

左手奥にあるのは熱風式の焙煎機。京都のダイイチデンシが開発した自動焙煎装置で、焙煎する温度や時間などを100パターンを登録できる優れモノ。トレーラーに入るようカスタマイズした特注品だ。
岡田さんによれば、焙煎は職人技に通じる世界だそうで、こうした機械は邪道という意見もあるようだが、職人技術の機械化がコーヒー業界にも来ているとは思わなかった。こうした焙煎機が普及すれば豆の特性を生かした焙煎のノウハウがインターネットで共有できるようになり、一流の焙煎職人の味が世界各地で味わえる時代も来るかもしれない。こんなところにもIoTの波は来ていた(のかもしれない)。

木製のカウンターはファブラボ鎌倉が主催するFUJIMOCK FESで岡田さんが制作したもの。自ら山に入り、間伐材(森林を育てる過程で間引いた木材)を切って加工したそうだ。

店内には通常の焙煎工房には必要なさそうな卓上のレーザーカッターや3Dプリンターも用意されている。これらを使ってオリジナルのパッケージやクリップや軽量カップを作ることもできるのだ。写真右にあるビンテージなマックの中には現行のMac miniとiPadの液晶が入っていて、主に3Dプリンター用に使われている。

壁面には工具も並んでいて、Makerスペースのようだ。 壁面には工具も並んでいて、Makerスペースのようだ。

ワークショップではアフリカ、アジア、南米それぞれのコーヒーの特性を自分の舌で学んだ上で、自分好みのオリジナルブレンドコーヒーを作る。最後には瓶詰めしたオリジナルのコーヒー豆がお土産に付いてくる。ちなみにワークショップで作ったブレンドはウェブサイトに公開され、オンライン注文も可能だ。

今回はfabcross編集部から制作系の企画でおなじみの渡辺さん、淺野さん、ニュース/編集担当の佐々木さん、そして筆者(写真左から右)がワークショップに参加。
4人とも雰囲気でコーヒーを飲んできた面々だ。

プロは36種類の香りを嗅ぎ分ける

岡田

「今日はアフリカ、アジア、南米、それぞれ特徴のある3つの豆を用意していますので、それぞれの違いを知りながらオリジナルのブレンドを作りましょう」

岡田さんがワークショップ用のシートに描かれた地図の上にコーヒー豆を置く。よく見ると形が微妙に違う。

岡田

「形だけでなく風味も産地によって異なります。ちなみにQグレーダーは豆のフレーバーを36種類に分類して嗅ぎ分けられないといけないんですよ」

岡田

「コーヒーにもソムリエのような資格があるんですね。本当にいままで適当にコーヒー飲んでたな、俺」

米国スペシャルティコーヒー協会が定めたコーヒーのフレーバーを分類した図「Flavor wheel」。右上のフルーツのカテゴリーだけでもラズベリー、ブルベリー、チェリー、ざくろなど14種類の細かなフレーバーがある 米国スペシャルティコーヒー協会が定めたコーヒーのフレーバーを分類した図「Flavor wheel」。右上のフルーツのカテゴリーだけでもラズベリー、ブルベリー、チェリー、ざくろなど14種類の細かなフレーバーがある
岡田

「ワークショップでは3種類のコーヒーを好きなようにブレンドして、酸味や香りなど、自分が好きな味を伸ばしていくようなイメージで配合を決めていきます」

ということでまずはカッピングという作業に取り掛かる。各産地の豆だけを挽いて、テイスティング用のグラスに移して香りを嗅ぐ。人によって若干表現は異なるが、ざっくりと香りを分類すると以下のような印象だ。

  • アフリカ(タンザニア)——フルーティーな香り
  • アジア(インドネシア)——草っぽい香り
  • 南米(コロンビア)——ナッツ系の香り
違いがわかる大人風の顔 違いがわかる大人風の顔
岡田

「アジアの豆は癖があるので、ブレンドするときはワイルドカード的な役割になりますね」

次にカップにお湯を注ぎ、浮かんできたコーヒーの粉をスプーンで取り除いたものを試飲する。試飲専用のスプーンですするようにして飲むことで味と香りの違いが、より鮮明に分かる。
ちなみにQグレーダーがカッピングする際には93度のお湯を使うそうだが、85度から95度のお湯であればOKとのことだ。

越智

「うわー、何これ。全然違いますね! 並べて飲むと違いがはっきりわかるし、自分の好きなコーヒーのフレーバーと産地がようやくつながった!」

一つの飲み物を三種類用意して飲み比べるなんて居酒屋の利き酒ぐらいしか機会がなかったが、体系立ててモノの違いを理解するには非常に理にかなったやり方だ。

ただし、その辺りのカフェで利きコーヒーセットを頼んで飲んでみても、「ふーん」と納得して忘れそうな気がする。この後に控えている「それぞれの味の特性を理解して、自分好みのオリジナルブレンドを作る」という作業があるからこそ、それぞれの味の違いを覚えようと意識が強く働くのだろう。これこそワークショップの醍醐味だ。

カッピングしたら、それぞれの香りや味のイメージをシートに書き込んでいく。

岡田

「自分が思ったとおりに印象を書いて下さい。番茶とか桜餅とか書く方もいますね。匂いって個人差が出るみたいで、何を食べてきたかによって表現が変わるのが面白いですね」

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