Dr.片山の100均ロボット研究室
とってもエコだけどまったく役に立たない新感覚の機械、作りました
こんにちは。片山均(かたやま ひとし)です。愛媛県八幡浜市にある三瀬医院で院長を務めながら、日夜研究室で低予算ロボットを考えたり、作ったりしています。
今回は、役に立たないムダな装置の代表格である、スイッチを入れると自分でスイッチを切るという、「キングオブ役に立たない機械」を作りました。
実は、以前にもモーターや毛玉取り器を動力にした“役に立たない機械”を作ったことがあります。
ホントに役に立たないですよね……。で、今回はその進化版として、電力を使わずに動作し、環境負荷の少ない天然素材でできた「とってもエコだけど役に立たない機械」を作りました。お時間のある方は、ぜひご覧いただけると幸いです。
「とってもエコだけど役に立たない機械」製作過程
まずは材料から。
- 竹の箸 20本くらい
- 竹串 10本くらい
- ストロー 1本
- ミニストロー 5本くらい
- すだれ(小) 45cm×112cm 1枚
まずはざっくりとした概要図を用意しました。今回はぶっつけ本番で作ったので、これ以上に詳細なものはありません。また、細かい仕組みは完成品とは異なります。
竹の箸とストローをグルーガンで接着して骨組みを作ります。
竹の箸、竹串、ミニストローで内部の機構を作ります。右側が竹の箸でできたトグルスイッチ(以下スイッチ)で、左側はスイッチの可動範囲を制限したり、次のリンク機構につないだりする部分です。
ふわっとしたイメージはあっても、正確なリンクの寸法や取り付けるときの角度がわかりません。試行錯誤で調節しながら、スイッチで始まりスイッチを切るアーム(以下アーム)で終わる一連の機構を順番に取り付けていきます。
スイッチを取り付けたところです。
こちらは「ラチェットみたいな機構」の一部です。
スイッチの動きを、「ラチェットみたいな機構」を介して、仮に取り付けた振り子に伝えている様子です。この機構により、スイッチを直接押し戻さない限りスイッチは元の位置に戻らないようになっています。
先ほど振り子があったところを4節リンクの駆動リンクに変更し、左側の受動リンク側に振り子を移動して動かしています。この4節リンクは振り子の振り幅を大きくする役目があります。そうするために、受動リンクよりも駆動リンクを長くしています。
振り子の回転方向が間違っていたので、4節リンクの受動リンクの位置を変更しました。
アームを動かすための「ラチェットみたいな機構」を取り付けます。
スイッチを切るためのアームを作りました。L字型でもよいのですが、他の部品とぶつかるのを避けるため乙型にしました。ということで、このアームを「乙」と呼びましょう。
アームの振り幅を大きくするために、「乙」と「ラチェットみたいな機構」の間にも不等長4節リンクを取り付けます。
とりあえず消しゴムを装着して振り子のおもりを十分に重くしたところ、正しく動作しました。
振り子のおもりを竹の箸で作り直して、役に立たない機械の機構が完成です。動く様子をスローでご覧ください。
次に外枠を作ります。まずは竹串で骨組みを制作します。
すだれから適量の葦(ヨシ)を抜いて適当な長さに切ります。
葦を並べてシート状にしたものを骨組みに接着します。
全体を葦のシートで覆い、葦、竹串とミニストローを組み合わせて作った扉を取り付ければ「とってもエコだけど役に立たない機械」の完成です。
とってもエコだけど、存在意義ある?
結構苦労して作った「とってもエコだけど役に立たない機械」ですが、振り子の力でマイコンを電力も使わずに、入れたスイッチを即座に切るという、単機能な機械です。
今回はエコを念頭に置いていましたので、装置全体を成長が早く環境負荷の少ない竹や葦などの天然素材で作りました。結果、とてもエコな装置となりました。その上、夏にぴったりの涼しげな外観になっています。
この機械は、スイッチを入れると振り子が上がり、自身の重さ(位置エネルギーや運動エネルギー)で振り子が下がるとアームが出てきて、そのアームがスイッチを切ります。スイッチを切った後は、アームは自身の重さで元の位置に戻るという仕組みになっています。
「ラチェットみたいな機構」と呼んでいた、「駆動側と受動側の回転軸のずれを利用した機構とラチェットの組み合わせ」を使うことで、押し戻されるスイッチを入れたままにしたり、押し戻された後に機構を初起動状態に戻したりすることもできます。
また、不等長4節リンクを使うことで、スイッチのわずかな角度の変化を振り子のダイナミックな動きにすることができました。
今回は、大まかな構造は頭の中で考えてはいたものの、具体的なリンクの寸法や角度がわからないため設計図が描けず、実作を繰り返しながら試行錯誤で作らなければいけませんでした。
その上、葦はねじれていたり割れたりしているものもあります。多くはそのまま使いましたが、修繕しながら使ったものもあり、少々手間が掛かりました。まあ、それもエコなんですけどね。
エネルギー消費量削減と環境負荷軽減を実現した一方で、何も生み出さない、とってもエコだけど役に立たない機械。消費もしないが何も生み出さない……。そう考えると、そもそも作る必要すらなかったのかもしれませんね!?
第14回の研究発表は以上です。次回もお楽しみに!
企画・制作:片山均
取材・文:三浦一紀