Dr.片山の100均ロボット研究室
夏休みにオススメ! 半日で作れる「お手軽ストランドビースト」
こんにちは。片山均(かたやま ひとし)です。愛媛県八幡浜市にある三瀬医院で院長を務めながら、100円ショップで売っているものを材料に、さまざまなロボット作りをしています。
以前、オランダのキネティックアーティスト、テオ・ヤンセンが生み出した、身近な材料を使って作る風の力で砂浜の上を動く生命体(ロボット)「ストランドビースト」を、100円ショップの材料だけで作りました。
滑らかに歩く姿は気に入っているのですが、脚を作るのに結構手間がかかる上、脚が12もあるので完成までに2日くらいかかってしまいます。
2022年に作ったものも、テオ・ヤンセン機構を8つ使っていたのでそれなりに手間がかかりました。
今回は、さらにいろいろな工夫を凝らして半日くらいで作れる、お手軽ストランドビーストを作ってみました。
お手軽ストランドビーストの製作過程
お手軽ストランドビーストの材料は以下です。
- 毛玉取り器(中の刃は取り外す) 1個
- 竹の箸 8本
- 竹串 6本
- 巻きす 1枚(竹の棒は4本)
- 木製スティック 25本
- ストロー 1本
- ミニストロー 6本
- 厚紙 適量
- タイルマット 1枚
- 輪ゴム 1本
- 画びょう 28個
- 脚の長い画びょう 4個
ざっとした設計図です。それでは作っていきましょう。
竹の箸、竹串、ストロー、ミニストローを使って毛玉取り器を載せるやぐらを作ります。
コンパスカッターで厚紙とタイルマットを円形に切り出し、プーリーを作ります。
プーリーに輪ゴムを掛けてやぐらに取り付けます。
木製スティックと竹串で作ったクランクを取り付けます。
Wikipediaなどで公開されているテオ・ヤンセン機構を参考にして作った設計図の寸法に合わせて、木製スティックでパーツを作っていきます。
木製スティックを4本ずつまとめてテープで留め、ピンバイスで穴を開けます。
全部で9種類のパーツを作りました。
巻きすをバラして取り外した竹を適当な長さに切ります。
竹の両端に穴を開けた後、カッターで削って少し薄くします。
木製スティックがぐらつかないように、ミニストローを装着します。
正しい位置でパーツ同士を接着するために、巻きすの竹と画びょうで治具を作りました。
自作の治具を使って、bとn、oとi、pとqの各パーツを装着します。
各パーツを画びょうでつなぎ、グルーガンで留めます。パーツc、p、iをつなぐときは、3枚の木製スティックをまとめるために脚の長い画びょうを使います。
テオ・ヤンセン機構と平行リンク機構を組み合わせた脚が一組できました。
同様の脚を4組作ってやぐらに取り付けます。
クランクや脚の動きが乱れないように、やぐらに取り付けた竹串の両端を竹の箸で留めたら完成です。
平行リンク機構と組み合わせて部品数大幅減を実現
今回は、テオ・ヤンセン機構と平行リンク機構を組み合わせることで、部品数を大幅に減らしたお手軽ストランドビーストを作りました。使用しているテオ・ヤンセン機構は4つ。以前作ったものの3分の1まで削減に成功しました。
テオ・ヤンセン機構の組み立てにはそれなりの精度が必要です。以前は型紙にパーツを載せて1つずつ位置合わせを行いましたが、今回は治具を使うことで細かい位置合わせをすることなく組み立てることができました。
ひとつ手間取ったのが、テオ・ヤンセン機構と平行リンク機構を組み合わせるところ。リンクが引っかからないようにしつつ、それなりに脚を長く見せたかったので、つなぎ目をどの辺りにするかで悩みました。もう少し全体のサイズを大きくすればよかったかもしれません。
テオ・ヤンセン機構は、歩行ロボットを作る際に非常に優れた機構です。少し複雑なので身構えてしまうところがありましたが、平行リンク機構と組み合わせることで部品数が大幅に減ったので、これからは気軽に作ることができます。
平行リンク機構は単純な構造なので、使いこなせばほかのロボットを作る際にも楽ができそうです。
今回、新たな材料として巻きすを使用しました。巻きすはのり巻きなどを作るときの道具で、長めの竹と糸でできています。軽くて丈夫、竹の箸よりも長いので大きめの作品にも使えますし、片面は平らになっているので穴開けも容易と、なかなか優れた材料です。今回は使用していませんが、糸の部分も材料として何かに活用できそうです。
巻きすを使って、ちょっと大きめのビーストもできました。
よろよろしているようにみえますが、これは左右のクランクの位相を180度にしているため。位相をそろえれば解消します。
しかし、クランクに負荷のかかるタイミングでギクシャクした動きになることもあるので、歩行を安定させるためには脚を増やすのが一番の解決策だと思います。
ロボット作りにおいて、楽をすることは重要。いかに楽してできるかをとことん考えることも大切ですよ。
第21回の研究発表は以上です。次回もお楽しみに!
企画・制作:片山均
取材・文:三浦一紀