ギャル電きょうこのストリート電子工作
ギャル電きょうこのストリート電子工作 新型コロナ対策に適したソーシャルディスタンス世紀末肩パッド
電子工作に必要なものは、全てストリートで学んだ。
おきて破りのストリートスタイルで、電子工作界のメインストリートを走り抜ける、ギャル2人組の電子工作ユニット「ギャル電」のきょうこさんに、ストリート電子工作の神髄を見せつけてもらう「スト工」。2回目は、今話題のソーシャルディスタンス確保のためのアイテムを作ってもらいました。
世紀末的アイテム「肩パッド」を21世紀のストリートに
今回の作品は「ソーシャルディスタンス世紀末肩パッド」。何やらものものしい名前ですが、いったいどういうコンセプトなんでしょうか?
「マッドマックスとか北斗の拳といった世紀末感あふれる作品につきものといえば、やっぱ肩パッドでしょ。しかもトゲトゲしてるやつね。“世紀末肩パッド”なんて呼ばれてるけど。あたし的にはチョーかっこいいと思ってるんだけど、気軽にコーデしやすいかっていうとそうでもないよね」
まあ、確かに21世紀のストリートに、トゲトゲした肩パッドしてる人はあまり見かけませんね。極度のプロレスファンか、ゴリゴリのメタル野郎くらいでしょうか。カジュアルとは言えません。
「あたし、定期的にTwitterを“世紀末 肩パッド”で検索してるんだけど、やっぱり“俺もそろそろ肩パッド準備しないと”って言ってる人、多いんだよね」
そうなんですね。もはやそのネタは定番化しているんでしょう。
「そこであたし、世紀末肩パッドがどうしたらストリートではやるか考えたんだよ。ちょうど最近は、新型コロナウイルス感染防止対策としてソーシャルディスタンスが重要なんて言われてるでしょ? あたし、ひらめいたね。ソーシャルディスタンスの確保に世紀末肩パッドってチョー向いてるってことに」
あ、まあ、世紀末肩パッドしている人に積極的に近づこうとはしないでしょうし、寄ってきたら自然とよけちゃいますから、ソーシャルディスタンスの確保という面ではいいアイテムかもしれません。
他人との距離を光の色でお知らせする肩パッド
ということで出来上がったのがこちら。なんか工事現場で誘導している人みたいにも見えますが。見方によっては、ポケットがいっぱい付いているフィッシングベストやカメラマンベストっぽくも見えます。
「そうそう。最近ストリートでは機能性の高いスポーティなアイテムが受けてんの。ベストやハーネスベルトって、袖がないからサイズが合わせやすいし、ポケットいっぱいあって機能的だから、ストリートにはピッタリなんだよね」
たしかにネットを調べてみると、フィッシングベストやハーネスベルトのコーデがありますね。ほんとにはやってるんだ……。
「フィッシングベストやハーネスベルトがおしゃれアイテムになったっていうことは、世紀末肩パッドもワンチャンこれからトレンドアイテムになる可能性が高いっつーわけ。一見ハードで上級者向けのアイテムだけど、カジュアルに寄せていくことではやる可能性、あり寄りのあり」
な、なるほどー。まあ、今回の「ソーシャルディスタンス世紀末肩パッド」は色使いがポップですし、世紀末肩パッド界ではカジュアルな雰囲気ですよね。
ソーシャルディスタンス世紀末肩パッドの機能は?
見た目のインパクトが結構あるので、それだけでソーシャルディスタンスの確保という機能が提供されているように見えますが、ちゃんと電子工作の部分もあります。
「胸にあるポーチに、超音波センサーを搭載してて、前の対象物との距離を測ってるの。それで、測定された距離によってLEDテープの色を変化させてる。だから人と近づきすぎると分かるっていう」
ちなみに、対象物までの距離が2m以上だと緑、1mだと青、0.5mだと赤になります。このご時世、この機能はなかなか実用的じゃないでしょうか。目測で分かるっていうのは、なしの方向で!
見た目の近寄りがたいインパクトと、距離センサーを使った光によるお知らせの二段構えで、ソーシャルディスタンスをキープできる実用的かつおしゃれな世紀末肩パッド。その制作工程を見ていきましょう。
手に入れやすい素材で世紀末感を出す
本気の世紀末肩パッドは、大きいトゲや鉄などの素材が使われています。それらは入手しづらい上に加工も面倒くさいので、今回はTシャツやスポーティなジャケットになじみやすいPPベルトで作成をしました。
「PPベルトは1m当たり150円くらいで買えるし、丈夫で加工しやすいからオススメ。留め具や調整パーツを組みあわせれば簡単にベルトが作れるよ」
もうひとつ使ったのが、リュックサックのベルト。肩にかける部分はこちらを使用。
「雑貨屋とかファストファッションのお店で500円くらい。今回はシンプルなリュックサックをばらして、ストラップとポーチ用の素材として使った」
素材だけ見ていると、世紀末感があんまりないですね。さすがストリート工作。それに加え、今回重要なのが肩パッドのトゲトゲ。これがないと世紀末感が出ません。
「世紀末肩パッドといえばやっぱりトゲでしょう! 今回はコーデのしやすさを考えて、ゴールドで大人カワイイサイズのスタッズを用意した。世紀末感のなかにもかわいさ重要だから」
「肩パッドはゴツくてかっこいい、バイクウェアのインナーに装着するタイプのやつをAmazonで注文した。軽いし、肩パッド部分がウレタンになってるから、はさみでも簡単に加工できてめっちゃ最高!」
なるほど。それでこれらの素材を加工して、肩パッドを作成していくわけですね。
スト工に必要なものは「火」と「ミシン」
まずはサイズに合わせてPPベルトを裁断していきます。そのときスト工ならではのテクニックが。
「PPベルトって、ハサミで切るとケバケバが出ちゃうんだよね。別にこのままでも世紀末感は出るけど、かわいくないからキレイにしたいじゃん? そんなときはこうするんだよ」
そう言ってきょうこさんが取り出したのは100円ライター。一気に世紀末感が出てきました。
「このケバケバの部分をちょっと火であぶると、キレイになるんだよね」
確かに、ちょっと火を近づけたらケバケバが溶けて裁断面がキレイになりました。これは使えるテクニック!
リュックサックのベルト同士をつなげる長さにPPベルトを裁断したら、ミシンを使って縫い合わせていきます。スト工にはミシンも重要。
「ミシンがない人は手縫いかバックルパーツをうまく組み合わせて作ってみよう! なければないで、なんとなくいい感じに作るのもスト工」
長さ調整ができる留め具などもPPベルトに縫い合わせていきます。
肩パッドにはスタッズを貼っていきます。もちろん接着はホットボンド。スト工の基本。
ソーシャルディスタンスセンサーを作る
肩パッドとは別に、センサー部分も作成。
「今回使ったのは、Arduino nano互換機と超音波距離センサーの『hc-sr05』、そしてLEDテープね」
センサーとテープを接続して、ネットから拾ってきたプログラムをインストールし、モバイルバッテリーを接続したらソーシャルディスタンスセンサーの完成です。ポーチはリュックサックの布地で作っています。
先ほど作成した肩パッドの中央部分に、このソーシャルディスタンスセンサーを取り付けたら完成です。あとはそれを着ましょう。
ソーシャルディスタンス世紀末肩パッドのメリットデメリット
このソーシャルディスタンス世紀末肩パッドには、多くのメリットがあるときょうこさんは語ります。
「まず、LEDで光ることで距離を可視化するから、ソーシャルディスタンスを確認しやすい。あと、肩パッドを装着することで肩パッドなしよりも身体の横幅が広がるため、他者との距離が取りやすくなる。もちろん、トゲがあることで心理的に他の人から進んで距離を取ってくれるというのもいいところだよね」
たしかに、これを着けている人を見たら、ちょっと近寄りがたい雰囲気しますしね。目的は達成されます。
「あとね、肩幅が広くなることで小顔効果もあるよ」
やっぱりギャル。そういうところも考えているんですね。ただ、ひとつだけデメリットがあるんだとか……。
「これがはやったとするじゃん? そうすると、コーデの治安が急激に悪化する恐れがあるね。一人二人が着てる分にはいいけど、これを着た人が原宿とかにたくさんいたら、治安悪く見えない?」
ベランダでソーシャルディスタンス世紀末肩パッドを着けてくつろぐきょうこさんを外から見るとこんな感じ。
ソーシャルディスタンス世紀末肩パッドなので、お互いに近づかないから治安は良くなりそうですけど、見た目には世紀末感ハンパないですね。まあ、そんな心配は無用だと思います。
ということで、今回のスト工はここまで。不要不急の外出は控えるのが基本ですが、どうしても外出しなければならないというときは、ぜひソーシャルディスタンス世紀末肩パッドを着ていきましょう!
参考サイト
https://www.instructables.com/id/How-to-Make-Social-Distancing-Device/
http://www.themakersworkbench.com/tutorial/using-ultrasonic-distance-sensor-illuminate-neopixels
https://playground.arduino.cc/Code/NewPing/
ギャル電 きょうこ 今のギャルは電子工作する時代! ギャルによるギャルのための電子工作を提案するユニット「ギャル電」で活動している。 最近ハマってる飲み物はトマトジュース(無塩) Twitter / Instragram / youtube |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、fabcross編集部では、記事作成にあたって
極力テレビ会議アプリやメッセージアプリなどを利用しています。
また、ものづくりや対面での取材が伴う記事では、社会的距離を取り、接触を避けるなどの配慮をしています。