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素材の話を聞きに行こう

その数なんと6000種類! 懐かし&希少な「アクリル」に、Maker時代の価値を見た

ものづくりの「素材」にフォーカスする本企画、第2回のテーマは「アクリル」です。アクリルといえば、板や柱状のものなどホームセンターや雑貨屋でも気軽に購入することができるメジャーな素材。手ごろな価格で加工もしやすく、一度は使ったことのある人も多いのではないでしょうか。

透明・不透明の差はあれど、一般的には単色のイメージが強いアクリルですが、そんな固定観念を打ち破るアクリル製品を提供する会社があるとの情報をキャッチしました。そんなわけで、そのうわさの中心地、東京都足立区にある「ミユキアクリル」にお邪魔してきました。

三幸の小野雅也さん(専務取締役)。 三幸の小野雅也さん(専務取締役)。

通称「ミユキアクリル」こと有限会社三幸の本社兼ショールームは、北綾瀬の静かな住宅街にたたずんでいます。建物に入ると小野さんが歓迎してくれましたが、他にも中にいた社員の方が集まり、あれよあれよという間に集合写真の撮影が始まりました。

まさかの社員大集合! まさかの社員大集合!

「明るさと元気がウリ」という三幸のパワーを感じずにはいられません。ところで、そろそろ写真のあちこちに写るカラフルなアクリル素材にお気づきの事かと思います。ここに展示されている多種多様なアクリルこそ、ミユキアクリルブランドの商品。はがきサイズや30cm四方にカットされた板をこの場で購入することができます。

淺野

「圧巻です! これだけいろいろな種類のアクリルがそろっているのを見たのは初めてです」

小野

「こちらのショールームの見学は完全予約制なのですが、かなり遠方からいらっしゃるお客さんもいるんですよ」

淺野

「これだけの数のアクリル商品を全て自社で製造しているのでしょうか?」

小野

「いえ、そういうわけではありません。うちは1970年からアクリルの加工や製品開発事業を営んでいますが、生産に関しては色や模様を提案して外注するのが中心です。試験的に自社でアクリルの製造も行っていますが、基本的には過去に入手したアクリル板の管理や販売、それと外部への製造委託が主な業務になっています」

つまり、ここにあるアクリル素材は今の時代に合わせて新調したものだけでなく、三幸が過去に手掛けてきた歴史あるアクリル素材も含まれているということ。確かによく見てみると、どこか懐かしさを感じるような風合いのものもあります。およそ50年にわたる歴史を知るべく、工場の奥に連れていってもらいましょう!

合計6000種類以上のアクリル板倉庫

通りに面したショールームを抜け、倉庫と工房を兼ねた別棟へ案内してもらいます。するとそこには……

部屋を埋め尽くす大量のアクリル板が広がる 部屋を埋め尽くす大量のアクリル板が広がる
淺野

「うぉ~~~! どこを見てもアクリルだらけ!」

小野

「ここは量産のための材料置き場です。今までうちが生産したアクリル板は全て記録してあって、種類はざっと6000以上。来年には7000を超えるんじゃないかな(笑)。これだけ種類があるので、デザイナーさんにとってみたらカラーチップ(※紙に印刷された色見本)を渡すよりもここにきてもらったほうが早いんですよ」

淺野

「全部見るだけでも一日が終わってしまいそう……! これだけたくさんの種類があるアクリルですが、そもそもどんな用途に使われているものなんでしょうか?」

小野

「いちばん分かりやすいところで言えば、百貨店などで使われている化粧品のショーケースですかね。中身を見せるために透明なもののニーズが多く、柄物はアクリルとしては珍しい部類になります」

三幸が製作したバレッタ 三幸が製作したバレッタ
淺野

「なるほど! では、柄物のアクリルはどんな用途で使われるのでしょうか?」

小野

「アクセサリーや小物がメインですね。特に1980年代から90年代中盤までは、髪留めのバレッタに大量に使われていました。でも、安室ちゃん(※歌手の安室奈美恵)が登場したことで、長い髪の毛をまとめずにバサッとしてもカッコいいという風潮が生まれ、バレッタの人気はなくなっちゃたんです。ただ、同じタイミングで携帯電話が普及し始めたので、そこから私たちは携帯用のストラップやキーホルダーを作るようになりました」

淺野

「柄物のアクリルはけっこう流行に左右される、と。でも、その流行の波にうまく乗れば、いろいろなジャンルを渡り歩くこともできるんですね」


いざ加工所へ! こだわりの繊細な技法を見よ

まさかアクリルと安室奈美恵につながりがあるとは思いもしませんでした。さて、続いて案内された加工作業所では、1990年生まれのCNC切削機がバリバリと稼働しています。単純な形状の切り抜きだけにとどまらず、3次元的な面取り加工も行っているようです。

淺野

「アクリルの3次元切削はなかなか新鮮に感じます! でも、こういう宝石みたいな形のアクリル、言われてみればどこかで見た記憶がありますね」

小野

「うちは希望に合わせてCNCの刃から作ることもあるんですよ」

アクリル板の表面を磨き、厚みを均一にする作業。 アクリル板の表面を磨き、厚みを均一にする作業。
こちらはアクリル保管庫で回り続けていた装置 こちらはアクリル保管庫で回り続けていた装置

上の写真の見慣れない装置は、アクリルの表面や切断面を磨くためのもの。アクリルと一緒に細かな竹のチップを入れ、数日間回し続けることで角が取れて丸みのある仕上がりになるそうです。

ただ切っただけでは、この丸みは出ない ただ切っただけでは、この丸みは出ない
小野

「この装置は日本でほとんど使われなくなってしまったので、記録の意味も込めて寸法を記録しながら作ってもらったんです。仕組み自体は単純なので、個人で作ろうとしてる人もいるみたいですよ」


特注のCNCや専用の刃、仕上げのための装置や手仕事など、アクリル商品の質を高めるためのこだわりがぎゅっと詰め込まれていました。聞いてみると、オンラインで商品販売を行っていないのも、ひとつひとつのアクリル板の差を直接確かめてほしいという思いがあるからこそ。長年アクリル板を扱ってきた三幸だからこそのこだわりを、随所に感じることができました。

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