素材の話を聞きに行こう
その数なんと6000種類! 懐かし&希少な「アクリル」に、Maker時代の価値を見た
アクリルギャラリーで歴史に浸る
さて、再びショールームのある建物に戻ってきました。上階にはアクリルを用いたプロダクトやアート作品の展示を行う、開放的なギャラリースペースがあります。さまざまな展示物のなかでも気になったのが、今ではなかなかお目にかかれない金具の数々。
アクリルは熱すると柔らかくなる性質を持つため、板状に成型したものを後から熱加工することにも向いています。せっかくの機会なので、この金具を使って熱加工の簡単な実演をしていただきました。
おお、これは確かに簡単! 熱に耐えられる型さえあれば、個人でも簡単に試せそうです。なお、オーブンレンジでも同じ温度・時間で温めると同様の加工ができるとのこと。ぜひ環境を整えてチャレンジしてみてください。
この時代に、アクリル業者が目指すこと
さて、これにてようやく工場見学が一段落。まだまだアクリル板を眺めていたいのですが、そういうわけにもいきません。ところで、三幸はHappyPrintersやMakers’ Baseと共同でイベントを開催するなど、ファブ施設とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいます。このアクティブさはどこから来たものなのでしょうか?
「小野さんと初めてお会いしたのは、原宿HappyPrintersと合同で行っていた『アクリルミュージアム』の企画でした。このようなファブ施設とのつながりやコラボレーションはいつごろから行っているのでしょうか?」 |
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「2011年の夏にロフトワークとFabLab Japanのメンバーが共同で開催した、合宿形式のものづくりイベントがきっかけです。私が2000年から製品開発にレーザーカッターを利用していたこともあり、機械のオペレーション担当として参加したのですが、砂糖をレーザーで焦がそうとする人がいたりしてビックリしたんですよね(笑)。自分で使っているだけでは出てこない発想があることを知りました。それから人づてでいろいろなファブ施設のイベントに参加したり、逆に会社に人を招いてみたりと活発に交流するようになりました」 |
「この尾州の生地が閉じ込められたアクリルも、ファブ施設の縁がきっかけで作られたものですよね。こういった『ご当地アクリル』を作るような取り組みも特徴的だと感じます」 |
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「イベントの時に田中先生(慶應義塾大学環境情報学部 田中浩也教授)が、ファブ施設の『マクドナルド化』を不安視していたのが印象に残っています。使う機械が一緒で素材も一緒だと、どこでも作られるものが一緒になってしまう。素材に多様な選択肢を与えるという点で、アクリルはその幅を持たせやすいんです。地方ならではの素材にはとても興味があるので、どんどん新しいコラボレーションをしていきたいと思っています」 |
「最近では製造時の化学反応がもたらす環境や安全性へのリスクから、アクリルの生産に制限がかかり始めていると伺いました。作るのが難しくなるなかで、どのように関わっていくことができるのでしょう?」 |
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「確かに大量生産は難しくなっていますが、今の時代は必ずしも素材が大量に必要になるとは限りません。むしろ、量は少なくてもオリジナリティのあるアクリルのほうが喜ばれることもある。そういう素材を提供して個人のものづくりを支えることで、今までとは違う新しい価値を生み出せるし、それが我々工場の生き残る道になるとも考えています」 |
圧倒的な在庫とノウハウを持ちながら、ユーザー目線を積極的に取り入れている三幸。大量生産時代が終わった今だからこそ、個性豊かなものづくりをサポートする素材がユーザーの心を打っているのだと感じました。
読者のみなさんも、ぜひショールームを訪れて新しいアイデアの種を見つけてみてください。なお、文中でも触れたとおり、見学にはWebでの予約が必要となるのでご注意ください。