特別企画:それ、WHILLでつくれるよ
地蔵が乗ったモビリティが世界を救う! WHILLの最新モデルをハックする
世のニーズに対して「それ、ラズパイでつくれるよ」と何度も言っていたら、日本を代表するスタートアップから呼び出された。
「私たちが開発したモビリティの最新モデルを使って何か面白いことをしてほしい」
そう言われた私はまたこう言ってしまうのだった。
「それ、ラズパイでもつくれるよ」
今回はWHILL最新モデルのハックに挑戦する。ただしラズパイは使わない。
WHILL研究開発モデルとは
10月某日、神奈川県某所に来た私は言われるままにかわいらしい乗り物に乗って発進した。
前方からやはり乗り物に乗って現れたのは1000円工作などでfabcrossに登場していた武井祐介さん。実は電動車椅子などのパーソナルモビリティを開発しているWHILLのエンジニアだったのだ(※本当です)。
我々が乗っているこの乗り物は一体何ですか?
「こちらは私たちが開発しているパーソナルモビリティの最新モデルです」
前輪が不思議な形をしていますね。
「これはオムニホイールといって、縦だけでなく横にも転がることのできるタイヤです。これによって大きなタイヤにしても、小回りと段差の乗り越えやすさを両立することができます」
今乗っているものは他のモデルとは違うのでしょうか?
「今乗っているのは研究開発モデルである『WHILL Model CR』。外部機器から制御信号を送信することで本体を制御することができ、本体の速度や加減速値、バッテリー情報なども取得することができます。今回はこちらを使って、いつものノリで何か面白いものを作ってもらえませんか?」
なるほど。面白いもの…。今回はWHILL Model CRを使ってその開発方法や拡張性などを試してみたいと思う。
iPadで描いて操作!
WHILL Model CRには操作のためにジョイスティックが付いている。ジョイスティック以外のもので操作したらどういった風になるのか。研究開発モデルでは操作インターフェースの再設計を行うことも可能だ。そこで今回はiPadを使って描いた線の通りにWHILL Model CRを動かしてみた。
まずはiPad上でWHILLを動かしたい道筋を描く。そしてデータをWHILL Model CRへ送信。
すると、つつつつつとWHILL Model CRは動き出す。
移動している間、搭乗者は乗っているだけなのだが、なんともいえぬ操作感がなぜだかあった。地図上に描いた通りWHILL Model CRが移動すれば、いわゆる自動運転とはまた違う感覚を搭乗者は得られるのかもしれない。また実世界にWHILLがチョークなどで絵を描いてくれたり、複数台のWHILLをiPadから操作したりしても面白いのではないだろうか。
未来は地蔵と共に来る!
WHILLは基本的に人のためのモビリティであるが、モノを乗せても動くことはできる。移動で困難な人の元へモノが移動してきても良いはず!
そこでスマホに夢中でお参りに行けない学生のために、地蔵がWHILL Model CRに乗って参られにきてくれる、その名も“地蔵運転”を試そうと思う。自動運転の開発は非常に大変なため、WHILL Model CRを遠隔操作することで地蔵がひとりでに来たときの人の反応を実験してみた。
道端に運良くスマホに夢中でお参りに行けない学生を発見。fabcrossでもライターとして活躍している淺野義弘さんではないか! これは救わねばならない。
ニートになりかけている淺野さんを救うため、地蔵はWHILL Model CRに乗り込み動き出す。
曲がりくねった道を通り抜け、
山を越え谷を越え、
ついには学生の元へ。合掌。
自動で地蔵が来たのかと思いきや、実はお坊さんがお寺から遠隔操作していたのだった。そんなこととはつゆ知らず、学生は最新技術に感謝するのであった。
地蔵がやってきたとき、人は手を合わせてしまうことが分かった。このような形でWHILL Model CRが実際に自動運転で移動したときの周囲の反応を試験することも簡単にできる。
WHILLでの開発の流れを簡単に解説します!
研究開発モデルWHILL Model CRと外部機器(PCやRaspberry Piなどの制御ボード)との通信はRS-232C方式のシリアル通信で行う。本体から伸びているケーブルとつなぐことで簡単に通信可能だ。
通信には非常に扱いやすいコマンドを用いることができ、WHILL公式からGitHubでPythonやROS向けのライブラリが公開されている。これらを使えば簡単に開発を行うことができる。今回はPythonのライブラリを使用した。
iPadでの操作方法
iPadからの操作を行うためのシステムは次のように作った。
iPadからは、描いた道筋の各点座標を取得しOSC通信で制御用PCに送信する。制御用PC内で点間のなす角と距離を計算し、それに応じて移動方向と移動にかける時間をWHILL Model CRに指示した。pythonライブラリ内のSetJoystick関数を用いれば移動は簡単に制御できる。
地蔵運転は遠隔操作するだけ
地蔵運転のシステムは次の通り。
制御用PCに遠隔で別のPCから接続し、WHILL Model CRを制御するという力技で遠隔操作を実現している。
終わりに
WHILL Model CRは非常に簡単に開発が行えるように作られており、ユーザの体験を重視した設計が感じられた。WHILL Model CRの開発をやってみたいという方は、購入(75万円+送料/調整費)するか、または2週間のレンタル(3万円+送料)もあるので借りてみると良いだろう。
それではまた。
取材協力:WHILL