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スペースビジョンインタビュー

たった2秒で何でも3D化! 社会を変える世界最小・最軽量・最速スキャナ

3Dプリンタが話題を集め、家電量販店ではパーソナル向けの製品も出回りつつあるが、3D関連製品を広く世の中に普及させるためには、まだまだ課題も多い。そんな現状を打破したのがスペースビジョン。アカデミアの世界の“研究者”として3D計測技術の開発に長年取り組んできた佐藤幸男氏が、経営者に転じて立ち上げた“大学発ベンチャー”という異色の企業である。(撮影:加藤甫)

佐藤幸男氏

佐藤幸男(さとうゆきお)
株式会社スペースビジョン代表取締役・工学博士

1951年静岡県生まれ。慶応義塾大学大学院博士課程修了。同大学院教授、名古屋工業大学名誉教授を務める傍ら、カリフォリニア大学サンタバーバラ校客員準教授、南カリフォルニア大学客員研究員、コロンビア大学客員研究員などを歴任。

一貫して人工知能や3D計測技術の研究・開発に取り組む。2001年に3Dカメラの研究が科学技術振興機構のプレベンチャー事業に採択され、2004年には大学発ベンチャーとして株式会社スペースビジョンを設立。汎用型3Dカメラを搭載したボディスキャナなどの開発・製造・販売を手掛ける。(スペースビジョン http://www.space-vision.jp/

アウトプットに優れていても、 インプットが悪ければ宝の持ち腐れ

——2014年の1月には、人の体型を2秒で3D撮影できる可搬型スキャナシステムを発売されると聞きました。まず御社の製品や技術の特徴についてご説明いただけますか?

「3Dボディスキャナー」1本のポールユニットに3台のカメラ&プロジェクターとPCが埋め込まれ、システム一式をスーツケース大のキャリングケースに収納できる。 「3Dボディスキャナー」1本のポールユニットに3台のカメラ&プロジェクターとPCが埋め込まれ、システム一式をスーツケース大のキャリングケースに収納できる。

スペースをとる。持ち運べない。撮影に時間がかかる。これらは、従来の3D計測装置が乗り越えられない実用性の壁でした。

そこで製品化したのが、重さ約18kgの3Dボディスキャナです。対象者を取り囲むように3セットの組立てポールユニットを配置して撮影する、移動や設置も簡単なシステムにしました。各ポールユニットに3台(計9台)のCCDカメラを備えているので死角もほとんどありません。

専門家による調整に何時間も費やす必要もなくなり、全身の形状を計測するのに必要な時間も、たった2秒。現時点で“世界最小・最軽量・最速”の3D計測システムといえます。そして価格ですが、開発当初の約600万円から300万円以下にまで抑えました。

私たちのコアテクノロジーは“3D計測技術”です。対象物に半導体レーザー光(ピッチの異なる数種類の赤い縞模様のパターン光)を照射し、反射した光をカメラで撮影。三角測量によって奥行など位置情報を把握するという仕組みです。約100万カ所の計測点の空間座標軸を算出し、複数のカメラから送られてきたデータをつなぎ合わせることで、3D画像を作り出しています。

実はこのつなぎ合わせる工程、すなわち“統合する技術”も非常に高度なものなのです。実際の形状と寸分違わずデータをいかに取り込めるか。3D画像の品質を大きく左右するわけですが、結果として“精度・解像度”で他を圧倒する製品になりました。アウトプットするハードの性能がいくら優れていても、インプットするデータのクオリティが悪ければ宝の持ち腐れ。高品質なサービスを提供する3D関連製品を普及させていくうえでも価値のある技術だと思っています。

半導体レーザーを、ミラーを回転させスイッチングすることで、大きなプロジェクターを使わなくても撮影できる小型の3Dカメラを開発。精度・解像度をアップするため、2秒という撮影時間をさらに短縮させていくという。 半導体レーザーを、ミラーを回転させスイッチングすることで、大きなプロジェクターを使わなくても撮影できる小型の3Dカメラを開発。精度・解像度をアップするため、2秒という撮影時間をさらに短縮させていくという。
計測した3Dデータは接続したホストPC(一般的なノートPCで対応可能)に送り、60項目に及ぶ人体のデータが表示される。ソフトは米国企業が開発した、アパレル系で採寸に利用されるものを使用。 計測した3Dデータは接続したホストPC(一般的なノートPCで対応可能)に送り、60項目に及ぶ人体のデータが表示される。ソフトは米国企業が開発した、アパレル系で採寸に利用されるものを使用。

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