宇田道信インタビュー
理想の楽器を目指す——唯一無二のオリジナル楽器「ウダー」開発記
イメージを現実に。未経験の電子工作にチャレンジ
「最初は頭の中でいろいろ考えて、絵に書いたりもしました。そのうち、一本のロープをらせん状にするという形が浮かんできたんです」
電子工作は未経験だったという宇田さん。具体的なイメージが浮かんだところで、どうにかこれを現実にしたいと、さっそく秋葉原へ道具や部品を買いに行き、できあがったのがピラミッド状の十二角すいの土台に一般的なタクタイルスイッチがらせん状に配置された「らせん1号器」。そかしそこにはロープが見当たらない。
「スイッチの表面にテープを巻いてました。でも結局じゃまですぐはがしました(笑)」
この段階では演奏法の考えもまとまっていなかった。筒を横倒しにして両手でつかむ形は「らせん3号器」で登場し、続く「対旋琴(ついせんきん)1号器」で音程変化が左右対称となった。そして10号機「クロマチックウダー1号」で設計上の転換を迎える。
センサとマイコンによる飛躍
「単なるスイッチをやめて、ステンレス製のロープを電極とし、もう一方の電極との間に感圧導電ゴムを挟んで、圧力で音量に強弱をつけられるセンサ方式になりました。その制御にマイコンを使うようになり、プログラミングも覚えていきました」
しかし、この段階ではロープを指でなぞると滑らかに音程が変化するポルタメントは実装されていなかった。
「ポルタメントも最初から構想してたんですが、実現できる技術がなかったんです」
そして12号機ではセンサを5倍に増やして半音と半音の中間を検出できるようになり、ついにポルタメント演奏が可能となった。それまで友人がそう呼んでいた、という自らの名を元にした「ウダー(1号)」という楽器名も、当初企図した機能が実現されてついに正式に名乗るようになる。
この後も持ち手の構造、筐体の大きさや強度などさまざまな改良を重ね、最新の「ウダー4.5」までに制作した台数は50台を超えた。こうしてウダー本体は、現在ほぼ完成の域に達しつつある。