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宇田道信インタビュー

ポケット・ミクとその先の夢——理想の楽器を広めるために

量産版ウダーの開発

しかし、オリジナル版ウダーは、筐体部材の削り出しから部品のはんだ付けまで全て手作り。ひと月に1台を作るのがやっとで、継続的な量産は現実的ではなかった。ウダーの量産には、ウダーらしい操作性や音色と、部品の簡素化や量産性を考慮した構造の両立が必要だった。

「ロープ部を圧力センサ方式でなく静電容量センサ方式にすれば、単純な構造にできる。それなら『PSoC』を使えば部品も少なく、安く作れると思ったんです」

PSoCはCPUコアとプログラマブルなアナログおよびデジタルブロックを搭載し、タッチパネルなどに利用される静電容量センサーの制御用として高いシェアを誇るチップ。音源から演奏部のセンサー制御までこれ一つでこなす。宇田さん古巣の製品ということもあり開発もおてのもの。こうしてオリジナル版とは構造を一新した量産版の開発がスタートした。

さすがに通常のふろくより時間はかかったが、音源やセンサのプログラム、回路や基板の設計は順調に進んだ。宇田さん手作りの試作機も期待通りに動作した。しかし、量産を考慮した構造を検討していくうち、大きな壁にぶつかる。オリジナル版からは劇的なコスト削減に成功したものの、インターフェースの形状や感触などのどこかを犠牲にしなければ、大人の科学マガジンのターゲットとする価格帯に収めることが難しかったのだ。2012年の夏まで続いた開発は、そうした犠牲を伴わないブレイクスルーを模索するための停滞期を迎えた。  

量産版ウダーから生まれた新楽器

量産版ウダーのプロトタイプと「UFオルガン」。UFオルガンは12角形の平面部を上から指で押さえて演奏する。各辺ごとに半音づつ、一周で1オクターブ音程が変わる。連続してなぞるとポルタメントがかかり、複数の指で和音も出せる。 量産版ウダーのプロトタイプと「UFオルガン」。UFオルガンは12角形の平面部を上から指で押さえて演奏する。各辺ごとに半音づつ、一周で1オクターブ音程が変わる。連続してなぞるとポルタメントがかかり、複数の指で和音も出せる。

一方、量産版ウダーで試された静電容量センサは、ウダーのロープを一周分だけ平面上に展開した形状の Udar featuring Organ こと「UFオルガン」という新楽器を生み出した。量産版ウダーの1オクターブのみの簡易版とも言えるが、「無限オルガン」と呼ばれる特殊な倍音列を含む音色を鳴らすことで、オクターブの境目がない、音程が無限につながるような演奏ができる。形状と音源のアレンジにより、1オクターブ分だけのインターフェースで1オクターブを超えるフレーズを自然に演奏できるユニークな楽器を作り上げたのだ。

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