宇田道信インタビュー
ポケット・ミクとその先の夢——理想の楽器を広めるために
電子楽器「ウダー」の発明者、宇田道信さんのインタビュー後編。宇田さんと学研大人の科学マガジンとのコラボによる、量産版ウダー開発と「歌うキーボード ポケット・ミク」誕生までの軌跡。(撮影:加藤甫)
前編はこちらから
理想の楽器を世に広める
宇田道信さんが長きに渡り開発を続ける電子楽器「ウダー」。前編でみたように、そのユニークなインターフェースデザインやサウンドは完成に近づきつつある。次のステップは、この宇田さんにとっての理想の楽器を世に広めること。
「でも、無理やり広めたいわけではないんです。ウダーが本当の『理想の楽器』として完成すれば、自然に広まると思ってます」
理想を追求することこそが、普及につながる。事実、ウダーの完成度が上がるにつれ、興味を示す人も増えている。一方、宇田さん同様ユニークな活動を続ける人の中には、ウダーに早くから目をつけていた人々もいた。その一人が「オタマトーン」などの数々のユニークな楽器製作で知られる明和電機社長土佐信道さん。
「最初に出会ったのは学生時代で、開発し始めた頃のウダーを見てもらってアドバイスをもらったりしてました」
大人の科学マガジンとの邂逅
「ピンホール式プラネタリウム」などの本格的なふろくで注目を集める、学研大人の科学マガジンの編集長西村俊之さんもその中の一人。出会いは、2008年の『別冊大人の科学マガジン シンセサイザークロニクル』でウダーを紹介したことに遡る。西村さんによれば、この時既にウダーを量産したいという思いが芽生えていたそうだ。
「ずいぶん前から『ウダーを作りたい』と言われてたんですが、コストや手間を考えたらとても無理だと思い、ずっと冗談だと思ってました。その後『大人の科学マガジン ミニエレキ』を見て、もしかしたら本当にできるじゃないか? と感じるようになりました」
2009年に登場した『大人の科学マガジン ミニエレキ』は、ウクレレサイズにアンプを内蔵し、本格的な歪み系サウンドを奏でることができた。ギターを発想の原点とする宇田さんにとっても印象深かったようだ。ちょうどこの頃、宇田さんはフリーのエンジニアとなり、それを期に量産版ウダー開発が現実のものになっていく。