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TRYBOTS 近藤那央インタビュー

女子高生もOLも、みんながロボットと暮らす社会を目指して——TRYBOTSが拓く未来

本物のペンギンを研究し、体の構造やフォルムを追求した

もるペン!を作るにあたり、過去に翼の動かし方を追求していた工学院大学や、三次元ソナーを搭載して壁にぶつからずに泳ぐドイツのフエストが開発したアクアペンギンなどを調査。機構部分だけに注力するのではなく、見た目、動きを含めて総合的にペンギンに似せたいと考えたメンバーは、実際のペンギンの姿形をもとに、工学的な視点で調査する必要性があると考えた。

「どんなに人間が計算し尽くしても、本物のペンギンのように滑らかな動きができていない。だったら、本物のペンギンを調査してつくればいいのではと考え、水族館の方に説明して、本物を調べさせてもらいました。翼や体のフォルムを知るために、ペンギンをとことん触り、水族館で何時間も観察しました」 

もるペン!機構部分の一部。歯車などのパーツを3Dプリンタで作成し、微妙なズレなどを調整しながら開発を進めた。 もるペン!機構部分の一部。歯車などのパーツを3Dプリンタで作成し、微妙なズレなどを調整しながら開発を進めた。

歯車の計算や電装部品の開発、翼の機構設計などそれぞれが役割を担当しながらスタートし、近藤氏は翼の機構設計と全体のマネジメントを担当した。開発にあたっては、金属加工やトルクの計算、歯車の機構などをもとにラジコン操作で動かせるシンプルなモデルを採用。CADデータをもとに高校に導入されたばかりのレーザーカッターで部品を切り出し、筐体部分などを組み立てた。筐体の素材は、当初はアクリルを試みたが壊れやすいことからポリアセタールに変更するなどの試行錯誤を繰り返し、機構や歯車も設計データをもとに3Dプリンタで生成しながら、完成へと近づけていった。そして、課題研究のスケジュールに間に合うようにもるペン!を完成させ、お披露目と動作実験のために、すみだ水族館で泳がせることができた。

新メンバーも加えながら、TRYBOTSのさらなる開発へ

無事にもるペン!を泳がせることができたが、課題も浮き彫りになってきたという。

今後は、推進力を高め潜水ができて完全自律で動けるもるペン!を目指したいという。 今後は、推進力を高め潜水ができて完全自律で動けるもるペン!を目指したいという。

「水槽とは違い、プールはいくつもの水流があり、水流に押し流されてコントロールできないなど推進力が足りていませんでした。ペンギンは潜水する動物でもあるため、潜水できるよう浮力を利用した構造に改良していきたいです」

メンバー5人は大学進学など各々の道を進んだため、高校卒業後は定期的に集まる場を設けたり、オンラインコミュニケーションツールを駆使したりしながら日々情報共有や互いの担当部分開発にいそしんでいた。昨年には、課題研究だけでなく「水中ロボットコンペンションin JAMSTEC 2013」にも応募し、フリー部門で見事優勝。次の目標として、ラジコン操作ではなく完全自律型ロボットを開発し、優勝を目指したいと語る。次のもるペン!の開発からは、高校時代の仲間だけではなく新メンバーも募集しながら、新しいロボットに取り組んでいきたいと語る。 

人と暮らせるロボットのあり方を目指して

初期のもるペン!の様子。ペンギンらしさがなく無機質なロボットだったものが、次第に本物のペンギンへと近づいていった。 初期のもるペン!の様子。ペンギンらしさがなく無機質なロボットだったものが、次第に本物のペンギンへと近づいていった。

大学生となった近藤氏は、ロボットを日本に浸透させるためにSFCを選んだという。その理由として、ロボットの技術的な部分とデザインの両方を勉強できるのがSFCだけだったと語る。

「もるペン!を作っている時、はじめは機械的な見た目だったのですが、次第にペンギンらしさがでてきたことで、かわいいと言ってもらったり、子どもからも人気がでてきたりしました。そこから、ロボットは機能だけじゃなく見た目や動きのデザインが重要だと気づき、ロボットとデザインの両方を体系的に学びたいと考えました」

「人と暮らせるロボットのあり方の研究」をテーマに活動していきたいと語る近藤氏。SFCが日本のインターネットの起源だったように、将来はSFCをロボットを日本に浸透させる起源にすることが目標だという。

「ロボットへの注目や性能そのものは上がっていても、まだまだ世の中に浸透していないのが現状。それは、作っている人が作りたいように作っているだけで、UIやデザインなどの部分を意識する人が少ないからではないかと考えました。ユーザーフレンドリーなロボットを多くの人が開発したり、ロボットデザインの基準を作ったりすることが必要だと思います。そのための研究をこの大学で始めていきたいです」 

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