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学研「大人の科学マガジン」試作の匠 永岡昌光インタビュー

試作の匠・永岡昌光さんのものづくり哲学

その簡単に教えることができない積み重ねとは、さまざまな経験だ。

「誰かに教わったんじゃなくて、同じ仕事してる連中同士が、この方法がいい、いやこの方法がいいって、だんだん進歩したのよ。学研のおもちゃ部門にいた頃は、メンバーが少なくて一人が全部兼任してたのもラッキーだった。自分で考え、製作し、営業して、納品して、デパートで売って、外国で説明して、っていうのを何年もやって。最初はなんでこんなことまでやらなきゃいけないんだと思ったけど、だんだん人のつながりが広がってきて、楽しくなってくる。すると、自分で調べなくてもいろんなとこから情報がはいってくる。それを作るとまた売れる。こんな嬉しいことはない。でも、それには一定期間ごとに商品を売らなきゃいけないっていう状況があって、定期的にものを作る、っていうのが一番いいんだけど、今はそういうのがないからなかなか(人が)育たないよね。今は不定期だからね」 

複雑にギアが絡み合うからくり人形や、精密なはめ合わせが必要なカメラなど、どんな精密な部品も、その自らの手で作り出してしまう。まさに現代の“匠”だ。 複雑にギアが絡み合うからくり人形や、精密なはめ合わせが必要なカメラなど、どんな精密な部品も、その自らの手で作り出してしまう。まさに現代の“匠”だ。

全てはクオリティのために

他にない方法を目指し、部品を一つでも減らし、できるだけ速く作り上げる。それらの努力は、クライアントの要望に応えたり、コストの低減につながっていくのはもちろんだが、そうした積み重ねが試作品の、ひいては最終製品のクオリティと完成度、そしてその商品価値をあげることにもつながっていく。

「メカニックって100人いたら100通りの作り方がある。でも、今までにない方法がなかったらダメでしょ。それでも、一つ方法を考えたら、10万人は同じことを考えるやつがいる。それに勝つには速く作らなきゃいけない。速くできれば、出来たものをじっくり見る余裕ができるから、ここはダメ、ここはもっといい方法あるというのが見えてくる。さんざん図面を書くんだけど、自分の作ったものでも、現物をじっと見てるとわかることがある。後で量産段階になってからわかるときもしょっちゅうあって悔しいね。そういうところはリリース後にも修正が効くソフトものと違って辛いですよね。でも、プログラムを作る人もメモリを10分の1にしようとか、他人にはわからないけど自分にはできるぜっていう、せめぎ合いってあってもいいと思うのよ。そういう部分はないとね」

現代の匠・永岡さんの積み重ねてきたスキルや知識、そして豊富な経験は、一朝一夕にまねできるものではない。しかし、出来上がったものにただ満足するのではなく、それを観察することで見えてくることが大事、というこの言葉は、あらゆる仕事に通じ、誰もが活かすことができるアドバイスだろう。永岡さんは、未来の匠の登場を心待ちにしている。 

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