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海内工業インタビュー

Makerと町工場の距離は近づいているのか?——精密板金/海内工業の試み

続いてきた「技術気質」のDNA

海内工業が目指す方向はどこなのかを問うと、海内さんは技術を追求するという部分は外したくないという。

海内中にいる人間は手を動かすことが好きなんです。だからこそ、ものづくりの現場にいたいと。現場の他の役員、工場長や技術開発部長と話したときに、技術を追求する、難しいものができるようになる、できなかった素材の加工をうまくできるようになる、そういうことに喜びを感じると。そのDNAの部分は外さないほうがいいと思ったんです。

また、海内さんはこうもいう。「精度を突き詰めてものを作るというのは、ただお金を稼ぎたいというポイントだけでみると非効率的。お金を稼ぎたいという目的だけなら、常にものづくりが最適とはいえない」。ものづくりでお金を稼ぐというのはアウトプットの結果に過ぎず、そこに情熱や思い入れがない限り、しんどい。結果としてメーカーや何かに変化していくならいいが、技術の追求を根底にする部分は外さないでいこうというのが、いま掲げていることだという。なお、企業理念の「精密板金技術の追究を通じて……」では、追“究”と、あえて「突き詰める」という字が使われている。

現在は、日常的な受託業務と技術開発的なプロジェクトを平行して進めている。受託での加工とプロジェクトの割合は、ときによるが、一番多くみても7:3といったところ。前述したような技術開発的なプロジェクトは、LUNAR DREAM CAPSULE PROJECT、ドラえもん 四次元ポケットプロジェクトなど、湊さんが主体で進めている。こちらの部分も大きくなってきており、Makerムーブメントも含め、さまざまな取り組みをしているという。 

湊研太郎さん 湊研太郎さん

LUNAR DREAM CAPSULE PROJECT
「ドリームカプセル」制作チーム(由紀精密、海内工業、電化皮膜工業)
ポカリスエットのドリームカプセルプロジェクト。缶の中にポカリスエットの粉を詰めた容器やメッセージを刻印したチタンプレートを収納し、宇宙に打ち上げ、月面に到達させようという。海内工業は内部の部品(中身を包み込むケージの部分など)を製作。打ち上げは2016年の予定。

ドラえもん 四次元ポケットプロジェクト
ユカイ工学、クロスエフェクト、三和メッキ、海内工業、GOCCO、スイッチサイエンス
富士ゼロックスのソリューションを使って、日本全国の中小企業を集めて1つのものを作ろうというプロジェクト。海内工業は第二弾の望遠メガフォンに参画した。中のフレームをつないでいる部分、基板と付いた部分、取っ手になっている部分など、やはり内部部品を製作。

すごい天秤
面白法人カヤック、karakuri products、海内工業、FabLab Shibuya
不動産/住宅情報サイトHOME'S(ホームズ)を運営するネクストのリアルデバイスを使った物件情報検索システム。当初は重心制御型駆動装置部分のみ作るはずが、全体の組み立てもすることになったという。“誰一人妥協しなかった”すごいプロジェクトだという。MFT2014、SXSW2015などにも出展。

海内当社の中でも、趣味のようなものづくりに対しては懐疑的な意見がありました。でも、ご依頼いただくお客様と現場と話合い、趣旨がお互いできれば、いいものづくりができる可能性があり、そこに販路もありうると考えます。

また、「こうしたプロジェクトに会社を巻き込むことで自発的なモチベーションが出てきたのが一番うれしい」(海内さん)という。ただやらされるだけの仕事とその先に取り組んで夢がある仕事、その両方を合わせるとこんなに会社が明るくなるのかと。

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