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海内工業インタビュー

Makerと町工場の距離は近づいているのか?——精密板金/海内工業の試み

「技術が追求されました。で?(so what?)」にしないために

この加工サンプルはシャフトの部分がきちんと通っていることを示すもの。ステンレスバネ材製だ。

シャフトの部分が通る、滑らかに回転することを示すサンプル。 シャフトの部分が通る、滑らかに回転することを示すサンプル。

どういう機構で使われるかというと、たとえば精密機器の中で媒体が搬送する部分。求められるのは、精度をバラつきなく保つこと。金型を使って鋳造したものであればバラつきをなくすことはできるが、板金ではバラつきがないように制御することは難しい。つまり、何個作ってもバラつきがないように制御していくことが価値になる。

海内100m走をものすごいスピードで走ればいいかというとそうではない。そういうことが求められているわけでなくて、20秒であれば20秒プラマイ5秒で走りなさいというようなことが求められている。それができるのが価値なんですね。そこをきっちりやっていくということをやっています。 

もちろん、必要な精度も必要な部品によって違ってくる。精度が高ければ高いほどよいのかもしれないが、そこまでの高い精度が高コストでも必要なものなのか。

海内技術の追求というのは求めるんですが、目的のために適切な技術というのはある。これは、たとえ追求が不可欠だとしても忘れてはいけないポイントだと思っています。「技術が追求されました。で?(so what?)」ということなんです。 たとえばテルモさんの痛くない注射針。岡野工業さんのものすごい技術が使われているものですが、ただすごい技術だけでなく、それが転じて「痛くない注射針」になるというところが価値。技術の追求+宇宙、技術の追求+ロボットというように、ピントを合わせることが自分の役割だと考えています。そこをはき違えないように、常に現場の人と話をしながら擦り合わせています。 

1Fにはさまざまな加工機があり、この日も機械が稼働していた。 1Fにはさまざまな加工機があり、この日も機械が稼働していた。
2Fでは品質検査が行われている。 2Fでは品質検査が行われている。
破壊検査をしているところ。 破壊検査をしているところ。

いま社員は約30人。ここ数年の取り組みで、若い人が興味を持ってきてくれるようになったという。技術の継承はやはり徒弟制的なイメージなのだろうか。

海内やはり自分で育てというところが大きいです。でも、意識しないと育たない。そのあたりは現在試行錯誤中です。いまのところ何も結論はないんですが、やらせてみて教えながら。すぐに覚えてできるというものではないので。

それだけではおそらくダメで、マインドの部分は切り分けて考えているという。「ものを作れる人がえらいというのはシンプルに正しい」。作れる、作れないは目に見えてしまうからだ。だからこそ、それに対して努力をし続ける。自分が向いていないと思えば、居づらくなってしまう。自分なりの何か“得意”を見つけること。そこに当てはまる機会を取ってくるのが、自分の仕事だと海内さん。 

Makerにとっての町工場の存在、これまで知らなかった技術の使い方を知ることで、可能性はさらに広がる。新しい設計者、プロジェクトとの出会いは町工場の今後を変えていく。ものづくりの事例の中でパートナーとして取り上げる際によくいわれるのが「要は人との出会い」、個人と個人の話になってしまうが、2つの世界が近づくことで化学変化的なことが起こり、もっと面白いことになっていきそうな予感がする。

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