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海内工業インタビュー

Makerと町工場の距離は近づいているのか?——精密板金/海内工業の試み

パートナーと、ものを作る上での制約、そして先のストーリーを共有する

昨年、海内工業は「ロボット板金.com」というサイトを立ち上げた。ロボット部品を1個から加工するというもの。「技術を追求する先にも、これから伸びていく業界に参入していかないとなかなか仕事にならない」ということからだ。ロボットには宇宙と同じくらいワクワクする感じがある一方、まだ混沌としているところもある。

海内ある種混沌としているというところに切り込んでいき、ファーストペンギン*になれれば面白いのではないか。我々が培ったもので役に立つ部分がある、可能性はあると思ったので、いままでの既存ラインアップとは別として立ち上げようということでロボット板金.comを立ち上げたんです。
(ファーストペンギン*:ペンギンの群れの中で、1番先に海中に飛び込むペンギン)

詳細は教えてもらえなかったが、ロボット板金.comの中で具体的なプロジェクトも進んでいるという。
写真は去年作ったロボット。外側は3Dプリンタ出力、中身のフレームを海内工業で作った。チタン製だ。写真では中身が見えるように外側を外している。 

3Dプリンティング機器とマテリアルを開発製造するStratasysの展示用として制作したロボット(の中身)。展示物の説明を話してくれるほか、踊りも披露してくれる。設計は松村礼央氏(karakuri products)。 3Dプリンティング機器とマテリアルを開発製造するStratasysの展示用として制作したロボット(の中身)。展示物の説明を話してくれるほか、踊りも披露してくれる。設計は松村礼央氏(karakuri products)。

たとえば、個人のMakerが海内工業に何かプロジェクトを持ち込んで……ということは可能なのだろうか?

それは本気度によるという。ある程度アイデアをプロトタイプにしたものがあっても、それを持って、じゃあ作ってくださいというのは無理な話で、ものを作るには制約があって、必要な精度があって、ロットがあって、単価がある。そこがある程度見えて、はじめて話ができるのだ。

海内その先をこう考えているというストーリー、世界観を共有させていただけないと私が現場に話をできないんです。ものづくりの頭の中では、寸法は、寸法公差は、材質は……と全部必要になってくる。そこまできちんと最初の段階で落とし込めないといけない。いずれにしても、どんなお客さんだとしても、我々は遊びでは仕事は絶対にしないので。本気感というのは率直にお伝えして、条件に合わなければ率直にお断りすることもあります。

3Dプリンタが普及して、3D造形が身近になった感覚がある。板金などの加工ももう少し個人でも利用しやすくなるといいのに……と、素人としては考えてしまう。

海内コストもかかるので難しいですが。設計者さんからすると板金は使いづらいところがある。どういう設定値で、どういう伸びしろになって、どれくらいの変化になるのか、など分からない。我々も、経験値として持っているものなので。削ったほうが確実と、お金があれば削りでも機能を満たすことはできます。でも、板金をもっと知ってもらえれば可能性がまた広がると思います。

板金って、自動車のイメージが強いと思うんです。クルマを叩いて直す。精密板金で検索しても、フレームとかいろいろなものが出てきて、精度があまり出ないというのが一般的なイメージ。うちはずっと、機械の内部部品を作ってきた。精度にうるさいところを作ってきたので、そういうところを次に生かしていきたいと思っています。 

海内工業では、精密板金の技術がどういうものか伝えるための加工サンプルを用意している。

100分の3mmの精度での噛み合いを実現した精密板金のサンプル。 100分の3mmの精度での噛み合いを実現した精密板金のサンプル。

また、材質や素材のノウハウをサイト「BANKIN GUIDE」にまとめている。たとえば、ステンレスの304と430。見た目はもちろん一緒だが、硬さも価格も異なる。また、304は水に強いし、使いやすい。430よりも錆びにくい。クライアントが304を指定してきたとしても、吹きっさらしのような環境でなければ、メカ機構の部品であれば430でもいい。何にどう使われるかによって、当然ながら、必要な硬さ、精度、性質が違うということだ。

海内加工屋に聞けば分かるよっていうことがたくさんあり、それを体系的にしてお客様にもっとお役に立ちたいと思うようになりました。その結果、電話での問い合わせも一人で対応できるようにマニュアルを作って、そういうノウハウをまとめてみました。

ロボットとかやられる方は自分で加工した経験がある方が多いので、アルミが一番加工しやすいんですね。自分でも穴が開けやすいし。そういったところでアルミ一択になってしまうので、それをちょっとステンレスに変える。重さではアルミが圧倒的に軽いので、何をとるかによるんですが。素材選びのところでご提案したり、個人でものを作られている方にもお役に立てればと思います。

また、土曜日には不定期に板金加工のワークショップなども開催している。 

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