新しいものづくりがわかるメディア

RSS


Cerevoが歩んだ道のはじまりとこれから

ネットと家電の未来を追求してきた、Cerevo岩佐氏の失敗と経験のいま

冷ややかな状況から次第に盛り上がるハードウェア

当時を振り返り「起業当時はハードウェアスタートアップをやるって話しても、周囲はなかなか理解してくれませんでした」と岩佐氏 当時を振り返り「起業当時はハードウェアスタートアップをやるって話しても、周囲はなかなか理解してくれませんでした」と岩佐氏

インターネットやWebサービスは、今後オンラインだけでなく現実世界における家電のあり方や企画、設計、流通の仕組みそのものに変化を起こすと考えた岩佐氏。
「テクノロジーによって誰もの生活が便利になる製品がこれからますます求められてくる。そうした時代の流れに呼応して、ハードウェア業界も変わっていくし変わっていかないといけない。だから、ネットと家電で生活を豊かにするスタートアップに意味がある」と起業当時は考えた。

「時代を俯瞰して見たときに、これからハードウェア業界に起きうるであろうことは、自分が考えつくくらいだからみんなも分かるはず」と、投資家などに未来のハードウェアの話をするも、当時は意外にも周囲の反応は冷たかったという。

「振り返ると、いろいろとタイミングが悪かったかもしれません。2000年頃に設立してベンチャーキャピタルから数億円単位で資金調達をしたハードウェアベンチャーがいくつかいたんですが、その多くがIPOなどのビジネス的な成功事例になれなかったということもあり、ハードウェアのベンチャーをやると話すと『本当に作れるの? 作っても在庫リスクあるし、ハードを売るビジネスにスケールが見えない』と冷ややかな状況でした。

対して、ネットビジネスはWeb 2.0やらソーシャルゲームの盛り上がりで、フリーミアムモデルや有料課金で儲けやすい、という潮流がありました。ハードウェアに対する厳しい目とネットビジネスに対する加熱した期待感から、ハードウェアよりもソフトウェアへ市場全体もお金が流れていて、資金集めのために投資家にプレゼンをしてもなかなか相手にしてくれませんでした」

そうしたネットビジネスの潮流が、この数年で大きく転換してきたことを岩佐氏は肌で感じている。特に、世界全体のIoTやハードウェアに対する理解や投資の動きが活発化してきたことは、以前との大きな違いだという。世界的に見ても、著名な起業家や投資家がハードウェアビジネスを始めたり積極的な投資をし始めたりしたことでメディアの注目を集め、ソフトウェアの人たちもハードウェアに興味を見せるなど、これまでハードウェアに興味を示さなかった人たちが次第にハードウェアに参入したりビジネスを始めようとしたりするといった、業界全体の変革が起きている、と岩佐氏は話す。

「この数年でソフトウェアとハードウェアの垣根が次第になくなってきた。ソフトウェアの人がハードウェアをやり始めたことはとても面白い現象だと捉えています」 「この数年でソフトウェアとハードウェアの垣根が次第になくなってきた。ソフトウェアの人がハードウェアをやり始めたことはとても面白い現象だと捉えています」

昔と今を比較したときのハードウェアビジネスのもう一つの大きな変化として、クラウドファンディングの登場は大きいと岩佐氏は指摘する。「Kickstarterの登場や、(『GoPro』の)Woodman Labsが上場して1兆円規模の企業価値が付いたり、『Fitbit』やDJIのドローンが注目されたりするなど、クラウドファンディングがきっかけでハードウェアスタートアップの環境は、特にこの数年で激変した」とし、資金調達やハードウェアの成功事例が次々と生み出されたことは業界全体として大きな後押しになったという。

こうしたハードウェアビジネスの盛り上がりに対して、投資家は冷静に状況を判断している、と岩佐氏は見ている。

「ハードウェアは昔に比べて部品の調達などいろいろな要因でコストがかからなくなったことは事実ですが、とはいえそれでもお金がかかるビジネスであることは間違いありません。ソフトウェアや音楽みたいに原価を抑えたりデータで簡単にコピーできたりする訳でもありません。物理的に流通させるコストや時間、商慣習的に手形でのやりとりが多く入金が数カ月先になるなど資金回収のタームも長く、Webサービスの有料会員や課金モデルみたいに200円払ったら数時間後には口座に入金されている、みたいなことはない。投資の観点ではみんな意外と冷静に判断しているのではないでしょうか」

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る