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Cerevoが歩んだ道のはじまりとこれから

ネットと家電の未来を追求してきた、Cerevo岩佐氏の失敗と経験のいま

マスではなくニッチに攻めることで勝機を見出す

左からLIVEBOX、LiveShell 左からLIVEBOX、LiveShell

LIVEBOX が話題を呼んだことから、次への製品開発に弾みをつけるためにそのタイミングで2.4億円もの資金調達を実施したCerevo。LIVEBOX でニッチな層向けの可能性を感じつつも、やはりどこかマス向けへの意識が残っていた岩佐氏は、資金調達をもとにライブ配信が一般の層にまで広がってきたことを受けて、プロ向けのLIVEBOX のような配信機器ではなく、誰でも簡単にライブ配信ができることを軸とした「LiveShell」を2011年11月に発売した。UstreamやYouTubeで配信する人たちからも好評で、ヒット製品となった。

しかし、岩佐氏はマス向けの製品づくりとニッチな層に向けた製品開発づくりには大きな違いがあると、これらの一連の製品作りで実感したという。

「一般向けはどうしてもセールス的に単価を抑えないといけない。同時に台数を売り切らないといけないから結果として営業コストがかかってしまう。営業に力をいくら入れても、一般向けを主軸にして数百億円規模の売上になって上場する、という道筋はあまり見えませんでした。そうしたときに、LIVEBOX での経験を改めて考え、マスとニッチ層の違いを肌で感じたと同時に、スタートアップはニッチ層に向けた製品作りに力を入れるべきだ、と考えました」

プロ仕様に仕上げた「LiveShell PRO」。Cerevoの主力商品として国内外問わず多くの販売実績を残している。 プロ仕様に仕上げた「LiveShell PRO」。Cerevoの主力商品として国内外問わず多くの販売実績を残している。

その後、今度はLiveShellをベースにHD映像配信対応でプロ仕様の小型映像配信機器の「LiveShell PRO」を開発。小ロット生産で2012年11月 に5万2380円で発売。岩佐氏の読み通り事業的にも大きな成功をおさめ、改めてニッチ層に向けた手応えを感じた。

さらに、LiveShellの頃から海外販売にも少しずつ力を入れ始めた。ハードウェアスタートアップの多くが国内で地盤を固めてから海外へ、という発想をするなか、海外販売の経験を早いうちに積んでおきたいと考え、ECサイトを通じて販売したところ、海外の売上シェアが20%を超えた。LiveShell PROにいたっては売上の51%以上が海外からの購入だったという。国内のニッチ層向け販売を目指して開発した製品が、フタを開けてみると世界にいるニッチなユーザーたちにリーチした商品であったことが分かったのだ。

「LiveShell PROをきっかけに、Cerevoとして決定的な転換点が生まれました。それまではグローバルニッチという考えはなく、ネットのトレンドにマッチしたハードウェア、ネットと融合したハードウェアを出していこうと考えていました。だから、写真共有サービスと連携したデジタルカメラや、動画配信サービスと連携した配信機器に力を入れていました。

けれども、ニッチ層に向けて小ロットで高価格帯の製品が売れることが分かり、しかもそれは国内だけではなく世界に向けても勝てるものを自分たちは作れるという自信につながりました。そこから、いまの『グローバルニッチ』で世界に向けたものづくり、という考えが次第に出てきました」

国内で1万台売るよりも100カ国で100台ずつ売ったら1万台になる。岩佐氏が「グローバルニッチ」と掲げる戦略は、まさに世界各国の多様な価値観のなかで一部に存在するニッチ層を集中的にターゲティングすることによって成り立つモデルである。同時に、こだわりぬいた製品は「Cerevoでしか手に入らない」というブランドにも通じ、事業としての可能性が開かれるようになった。幾多の苦労や失敗を乗り越え、次第に現在のCerevoの形となりはじめてきた。

※後半に続きます

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