Cerevoが歩んだ道のはじまりとこれから
Cerevo岩佐氏が語る、ものづくりの多様性とファーストムーバーになることの価値
2008年に起業し、さまざまな失敗や経験を重ね日本のハードウェアスタートアップの先駆けとして日々奮闘しているCerevoの岩佐氏。前半では、起業に至る経緯から最初の製品作り、現在のグローバルニッチを掲げるまでの過程について伺った。後半は、いままさにものづくりに取り組んでいるスタートアップや、これからものづくりに取り組もうとしている人たちへ、自身の教訓から得た学びについて話を伺った。
2009年のCEREVO CAMのリリースから、「CEREVO LIVEBOX」によるニッチな層へのアプローチの可能性に気づき、「LiveShell」、「LiveShell PRO」を通じて「グローバルニッチ」というキーワードを導き出したCerevo。その後リリースした「LiveWedge」も、4系統のHDMI入力を備えたオーディオ/ビデオスイッチャーで、まさにプロ仕様の製品となっている。
「一つ一つはニッチなものでも、世界中に確実にファンがいるものを作る方向にシフトした」と岩佐氏は話す。現在では、社員は約60人にまで増え、製品の開発チームも複数ラインで走らせるなど、自社製品開発にいそしんでいる。
ファーストムーバーになることを恐れるな
これまでのCerevoの活動でいくつもの失敗や苦労を重ねてきた岩佐氏。そのなかでも最も大きな失敗はなにかを伺ったところ、やはり最初の資金調達に1年かかったことは大きいと話し「ハードウェア業界全体への理解が浸透していなかった当時の状況や、リーマンショックなど金融市場全体の出来事が、結果としてCEREVO CAMのリリースに大きく影響し、トレンドを逃してEye-Fiやスマートフォンという競合に奪われてしまいました」と振り返った。
他にも、LiveShell PROの出荷直後に初期出荷分の不具合による全品回収という出来事は、信頼関係を築くべき初期ユーザーに大きな迷惑をかけた、と反省している。特にハードウェアは初期ユーザーとのコアなつながりによって企画や製品のアイデア、ブラッシュアップやその後の製品のマーケティングなどに影響する。「ハードウェアこそ初期ユーザーを大切にすべき」と話す岩佐氏にとって、全品回収という失敗はその後の製品においても直前まで気を抜かず取り組むという教訓を得た。
こうした経験を踏まえ、岩佐氏がこれからハードウェアに挑戦する人へのアドバイスとして、一歩踏み出すことの大切さを説く。
「多くの経験をしていま思うのは、失敗したらどうしようと最初に考えて一歩を踏み出さない人が多いということ。確かに、私も初期の資金調達に時間がかかりましたけど、あのタイミングで退職し起業してなかったらCerevoは生まれなかったし、その後の製品作りのきっかけを得られたかどうかもわからない。すべての失敗はなんらかのリターンがそこにはあるはずと私は思うし、あまり失敗を恐すぎても意味はない」