Cerevoが歩んだ道のはじまりとこれから
Cerevo岩佐氏が語る、ものづくりの多様性とファーストムーバーになることの価値
「グローバルニッチ」を軸に活動し始めたCerevo。設立当初に意識していたWebサービスとの連携などは、いまはあまり意識しなくなったという。
「ニッチであること、世界各国に普遍的だけどマスじゃないものを軸に開発を進めています。あと、非現実的な開発タームや、開発に数年かかるようなものは今のところ力を入れにくい。ある程度短期間で開発でき、グローバルで小ロットでも売れるものを日々考えています」
社内の企画会議は、取締役からアルバイトまでみんなが参加できるチャットを通じて日々投稿されたものをアイデアにしていると岩佐氏。「誰かのニーズや困ったことから解決策が見えてくる」と岩佐氏。個人的な課題であっても、グローバルで考えたときに普遍的な課題であるなら、Cerevoとして取り組む価値があるという。
これまでの開発経験から、IoT製品を開発するヒントはなにかを聞いたところ、岩佐氏は「電気すら通らなかった分野、電気と縁がなかったものの業界に活路があるのでは」と話す。
「例えば机や椅子、フォークも面白いかもしれません。これらがインターネットとつながったらどうなるか。なんでも身の回りにあるものから考えるといろいろなアイデアが出てくると思います。スノーボードを開発したときはまさにそうでした。ある程度確立したものづくりの分野はすでに何千億円規模のビジネス単位や市場がある場所。だからこそ、そこにインターネットの側から切り込むことで変化を起こすことができるはず」
「チームづくり」と「コミュニケーション」の大切さ
岩佐氏が考えるものづくりに求められるスキルについて尋ねてみた。岩佐氏は、スキルや技術もあるが、重要なのは「チーム行動とコミュニケーション」だと指摘する。野球チームのように互いの連携が良い製品作りに欠かせないという。事実、Cerevoでは1つの製品に対して4、5人程度の開発チームで取り組んでいる。
「Webサービスやアプリなどのソフトウェアは1人で作ろうと思えば作れるが、ハードウェアはメカ設計や筐体設計、電気設計、組込み、サーバーサイドやフロントエンドなどが求められ、それぞれのプロフェッショナルとの共同作業が求められる。製造過程では工場があり、工員さんに指示が必要だし入荷時には運送会社ともやりとりしないといけない。販路拡大のためにリアル店舗との交渉や取引も発生する。人とのコミュニケーションやコラボレーションが、ソフトウェア産業以上に実は求められるんです」
fabcrossでも、これまでに筋電義手のhandiii や外骨格スーツのスケルトニクス を取材してきたなかで、彼らもチームビルディングやコミュニケーションが重要だと語っていた。各人のプロフェッショナルを生かすチーム作りと総合力がハードウェアスタートアップに求められる時代と言える。
日本は、世界でも家電業界の人材を豊富に抱えている国だ。そうした技術を持った人たちをいかにハードウェアスタートアップに引き込み、少人数のチーム編成でこれまでになかった製品作りに取り組んでいくか。そのヒントにも、先に挙げたファーストムーバーが生きてくる。
「家電業界にいる人達も、何か新しいものを作りたい気持ちでいっぱい。だからこそ、自分たちのようなスタートアップが面白いものを日々作り、大企業にいる人たちが持っている技術やスキルを新しいものづくりに生かすことができるんだ、という姿を見せることです。常に新しいことにチャレンジする姿勢を忘れず、スタートアップならではのスピード感と製品アイデアをもとに取り組めば、いい人材も集まってきます」
変化し続ける時代において常にオルタナティブを目指し挑戦し続ける岩佐氏。ものづくりの未来を心から楽しんでいる姿がそこにはあった。