Cerevoが歩んだ道のはじまりとこれから
Cerevo岩佐氏が語る、ものづくりの多様性とファーストムーバーになることの価値
世界的に、ハードウェアに関連したスタートアップはこの数年で一気に増えてきた。海外のカンファレンスに参加すると実感するが、その数は年々増してきている。世界的にも中国やフランスでは特にハードウェアスタートアップが急激に増えている。その考えも「ダメだったらバイアウトして次の挑戦に切り替えよう」と割り切った上でビジネス視点をもって展開しているスタートアップも多いという。
「投資家も、かつてはまったくハードウェアに興味を示しませんでしたが、IoTの盛り上がりに呼応して最近は積極的に投資をしています。投資家はその切り替えが早いことが良いことでもあります。ビジネス視点で時流や市場の動きに合わせて先んじて投資するように、スタートアップも積極的に踏み込む人が増えてほしい」
しかし岩佐氏は、日本ではそうした盛り上がりに対してプレイヤーが少ない状況を憂いており、「まだまだWebサービスやアプリ開発が中心。ハードをやる人もおまけだったりできればハードはやりたくないという人も多い」と話す。日本でハードウェアスタートアップを増やすアドバイスとして、「ファーストムーバー」になることの重要性を説く。意外にも、日本では新しい分野にいち早く飛び込んだファーストムーバーに対して期待や応援が厚く、サポートや協力してくれる人も多い。新しいことに挑戦することを応援する文化は根付いている、と岩佐氏は話す。
だからこそ、日本人はもっと挑戦する気持ちをもってもらいたい、と檄を飛ばす。
「社歴が若いハードウェアスタートアップの量産設計や製造の相談に頻繁に乗っていますが、みんな無難なところに落ち着かせようとしている節がある。もっと挑戦しようと常にアドバイスしています。
グローバルを視野に入れたら自分たちのライバルはたくさんいる。挑戦は、ときにスピード感やファーストムーバーとしての優位なポジションを作ることができます。リスクを回避するあまりに、スピードが落ちたり結果として他社に先んじられてポジションがなくなることもあります」
ハードウェアの先にあるユーザー体験を設計しよう
これまでの自身の開発のノウハウをもとにハードウェアスタートアップの支援にも力をいれている岩佐氏。岩佐氏が起業しようとした頃に比べて、いまやハードウェアの開発環境はお金だけでなく技術面でも大きく進歩している。
「トライアンドエラーのセットを一周と考えたとき、昔に比べて時間とコストは短く小さくなってきています。起業当時は1000台の量産なんて無理で、最低でも3000台や5000台という時代。それだけでキャッシュフローは5倍違います。いまや、小ロット生産に対応した工場も国内外で増えてきました。製造過程に関するボトルネックも解消されつつあります」
他にも、組込み製品に使えるモジュールやオープンソースのソフトウェアなども増えてきている。ソフトウェアの開発環境が整ってきたことでサービスやアプリが開発しやすくなった反面、群雄割拠の市場においてシェアを獲得するのは至難の業だ。しかし、ハードウェア単体だけでなく、そのハードウェアの先にどのようなユーザー体験を提供するかによって市場や競合製品も変わってくる。
「ハードウェアやIoTは分野が広いので、なんでも作れるし、何を作ってもいい。フードプロセッサーでお腹を満たすこともできるしワインクーラーで美味しいお酒を飲むこともできるし、医療機器なら人の命を救うことができます。ハードウェア単体で考えるのではなく、提供する価値をもとに、いろいろな分野とつながることができるのはハードウェアの面白さです。
例えば、LiveShellと光る靴のOrpheは、顧客もマーケットも違うから競合にならないけど、使われている技術が似ていたり、同じようなCPUを使っていたりします。周囲のハードウェアスタートアップは、ライバルというより仲間で、ときに協働パートナーになる可能性もあります。技術単体の争いではなく、技術を組み合わせたり融合したりしながら、その先にいるユーザーにどのような体験を提供できるかを考えるべき」
大事なのは、ユーザーに提供したいサービスやユーザー体験の設計のなかでハードウェアが変わってくることだけだと話す岩佐氏。自分たちの価値やサービスの核となるものを見出すことの重要性を説く。