デジタル工作機メーカー訪問
低価格、オープンソース、ユーザーコミュニティ——個人で買えるデジタル工作機で市場を切り拓くsmartDIYs
潜在的ニーズ掘り起こしでSmart Laser miniは予想を超えるヒットに
“3Dプリンタで出力する3Dモデルデータをちゃんと作れる人はそんなにいないが、レーザーカッターは2Dデータを作れば済むし、スマホケースに刻印したりシート状のものをカットしたりするのは裾野が広いニーズだ”との考えは的中する。自社サイトだけの販売でほとんどプロモーションもしなかったにもかかわらず、レーザーカッターのキットという目新しさに、5万円台という手ごろ感も加わって、発売後半年くらいで売上がぐっと伸びて、発売直後は月10台だったものが12月には月に100台売れるまでになった。
「私は(2016年12月に)smartDIYsに加わる前から経営コンサルタントのような形で横からWeb周りなどをサポートしていて、『こんなの組み立てる人いるのかな』、『日本でどこまで行けるか』と思っていたのですが、右肩上がりの具合を見るに、ニーズがあるんだなと、いい意味で驚かされました」(有井誠氏)
有井誠氏はCEOの有井佳也氏の弟で、エンジニアではなくビジネスコンサルティングやWebマーケティングが専門だ。その有井誠氏によると、昨夏には「レーザーカッター」や「レーザー加工機」といった検索ワードで、smartDIYsのサイトがトップに表示されるようになった。それ以降さらに売上が伸びているのは、購入者からSNSなどを通じた口コミで広がったのが大きいという。Facebookは特に重視していて、Smart Laserシリーズで制作した作品を共有するグループ、を作成した。記事執筆時点で400人超のメンバーが参加しており、ユーザーが自慢の作品を次々と投稿している。ここで作品を見た方が、こういうものが作れるなら自分も欲しいと買い、そしてまた投稿するというポジティブなサイクルができているのだ。2月には技術的な内容について共有するグループも新設している。
Smart Laser miniの出力は1.6Wと弱く、2mm厚のベニヤ板のカットがせいぜい(しかも何度も繰り返して加工する必要がある)なのだが、そうしてカットした薄い板を何枚も重ねて使った作品や、富士山の近くのケーキ屋さんがケーキにレーザー刻印して販売していたり、ステンドグラスのデザイナーがステンドグラスの光の漏れ具合を調整するために使っていたり、smartDIYsが思いもよらなかった需要が生まれている。
10月に満を持して発売したSmart Laser CO2は、レーザー出力が40Wと強力なため筐体は大きく頑丈に作られ、また加工時の排煙装置も必須であり、Smart Laser miniのように一般家庭の机の上に置いて簡単に使える製品ではないが、12月末までに60台が売れた。
Smart Laser CO2を最初に買ったユーザーは、なんとSmart Laser miniの初期ロット10台のうちの1台を買ってくれた個人ユーザーだった。smartDIYs製品が、いかにユーザーに支持されているかを示すエピソードだ。Smart Laser miniのユーザー層はデザイナーやクリエイターなどの個人が半分、残りは法人だが、さらにその半分は大学の研究室など。Smart Laser CO2になると法人/学校比率が高くなるが、それでも3分の1は個人が買っているという。