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デジタル工作機メーカー訪問

低価格、オープンソース、ユーザーコミュニティ——個人で買えるデジタル工作機で市場を切り拓くsmartDIYs

徹底的に原価を抑えオープンソースを活用

Smart Laserシリーズがここまで受け入れられたのは、国内で販売されている他社製レーザーカッターに比べ、圧倒的に低価格であることが大きな理由だろう。レーザーカッターの価格は、一般的に、加工能力に直結するレーザー出力と最大加工サイズによるところが大きい。Smart Laser mini(出力1.6W)クラスの製品なら安くて10万円程度、Smart Laser CO2(出力40W)ならば百数十万~200万円以上もする。昨秋、低価格レーザーカッター製品のクラウドファンディングで2000万ドル以上を集めて話題となったGlowforgeの同等モデルでさえ、定価は4000ドル(約45万円。ファンディング時は1995ドル)だ。

完成品でなく、組み立てキットにしたのは、組み立て工程のためのリソースがなかったことも理由ということだが、「個人の方にも気軽に購入していただきたい」(塩島氏)と考えて付けた価格は、これまで一歩を踏み出せずにいた多くの潜在的ユーザーの背中を押した。どうやってここまでの低価格を実現したのか。

「まず原価を抑えたことです。ユーザーが組み立てるキットであること、オープンソースを利用して開発費を抑えたこと、それに、(Smart Laser miniでは)レーザー出力を落とし、加工速度も少し遅いですが、コストダウンに努めました」(有井佳也氏) 

Smart Laser制御ボードの自動検査装置。LED検査装置を作っていた経験が生きた。以前は何分もかかっていた検査が数十秒で終わるという。 Smart Laser制御ボードの自動検査装置。LED検査装置を作っていた経験が生きた。以前は何分もかかっていた検査が数十秒で終わるという。

「レーザーカッターを自分たちで作ろうとしたとき、予算もそれほどありませんでしたし、海外の状況を見るとオープンソースの製品を、ユーザーが改造することでかなりいいものができているので、そういったオープンソースの技術を使って面白いものが作れたらと考えました」(塩島氏)

Smart Laserシリーズにおいては、レーザー発信器を移動する重要な構造にはオープンソースハードウェアコミュニティ「OpenBuilds」で開発された、アルミフレームを小さなホイールで挟み込んでサーボモーターで駆動するベルトで動かす構造を採用した。もとは3Dプリンタ向けの構造だそうだが、当初3Dプリンタを作ろうとしていた流れでレーザーカッターでもそれを使った。OpenBuildsを採用したことで、機構がすっきりとして部品点数も少なくできたという。ちなみに開発ツールには無料3D CAD「DesignSPARK Mechanical」や2D CAD「Jw_cad」、オープンソース基板CAD「KiCAD」など無料で利用できるものを使っている。

ソフトウェア面でも、制御ボードのファームウェアはオープンソース3Dプリンタプロジェクト「RepRap」をベースに開発、パソコンからWebブラウザ経由で使う加工のためのソフトウェアはsmartDIYsのオリジナルだが、Pythonベースで開発したものでソースコードを公開しており、ユーザーが自由に改変できる。Facebookのグループでは、ユーザーが改造/改良したという投稿も多い。いまは難しいがしっかり体制を整えて、いずれソフトウェアもハードウェアもユーザーとコラボレーションしていくことも考えている。 

Smart Laserシリーズを世界に、そして

Smart Laserシリーズで、潜在的レーザーカッターニーズを掘り起こしたsmartDIYsが、次の展開は世界という。「当社は国内市場向けが99%なんですが、どうやって見つけてくるのかヨーロッパをはじめアジアの国々から問い合わせが来たり、購入しててくれたりしています。ただレーザーカッター市場は北米が圧倒的で、北米市場では廉価な製品は中国製品しかなく、けっこう怪しい製品も多い。そこにオープンソースで組み立てキットという形でやれるところはあると考えています。いまは準備段階ですが、特許などの強みを持っているわけではないので、しっかりブランディングをしてスピード感を持って進めていきたいですね」(有井誠氏)

Smart Laser CO2でカットした板を使ったランプシェード。 Smart Laser CO2でカットした板を使ったランプシェード。

もちろん、多数寄せられているユーザーの声に応えることも忘れていない。「OpenBuildsの機構は組み立てるのがちょっと難しいところがあり、どんどん改良して組み立てやすいものにバージョンアップしたいと考えています。Smart Laser miniの加工速度も高速化を検討しています」(有井佳也氏)

そしてsmartDIYsのビジョンはさらに遠くを見ている。「レーザーカッターに限らず、同じようにユーザー組立型でオープンソースをうまく使って、必要な機能だけに絞った低価格なデジタル工作機械を作っていきたいですね」(有井佳也氏)

3Dプリンタを内製して販売したい、と考えたことから始まった、smartDIYsのユーザー組立型低価格デジタル工作機械は、その活動範囲を世界やレーザーカッター以外に大きく広げようとしている。 

smartDIYsの皆さん。事務所兼工場は有井氏のかつての自宅で、後ろのもう1軒を倉庫に使っている。 smartDIYsの皆さん。事務所兼工場は有井氏のかつての自宅で、後ろのもう1軒を倉庫に使っている。

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