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Dorita・佐々木有美インタビュー

摩訶不思議なサウンドデバイスで脳をコンフューズさせる アーティストユニットSasaki Yumi + Dorita

約2000人の応募者の中からオーディションを突破。みごと「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターに

Dorita 佐々木さんは本当にスライムが好きで、スライムを触っているとニヤニヤしてくるんです。スライム好きが高じて、テレビの「世界ふしぎ発見!」(TBS)に出たこともあるんですよね。

佐々木 スライムはグアガムという豆の粉とグリセリンという油、木工用ボンドと水からできているのですが、豆の原産地のインドに行ってみたくて。そんなことを考えていた時に、一般の人でも応募できる「世界ふしぎ発見!ミステリーハンター大募集」という企画があったので、「世界一伸びるスライムを作る」というお題で作文を書いて送ってみたんです。そうしたら電話がかかってきて、出演できることになりました。

その後、本当に「世界ふしぎ発見!」の収録でインドへ渡った佐々木さん。オーディションの応募者数は約2000人、実際にミステリーハンターとして海外へ渡ったのは6人だけだったというから、かなりの難関だ(2015年1月放送)。さらに佐々木さんは、スライム作成キット「妖怪ドロリンスライム」(学研プラス)のスライム開発も手がけた。

科学と学習PRESENTS「妖怪ドロリンスライム」実験ガイドブック(学研プラス)とスライムを作る材料がセットになったキット。よく伸びて手にくっつきにくいスライムを2個作ることができる。(写真提供:学研プラス) 科学と学習PRESENTS「妖怪ドロリンスライム」実験ガイドブック(学研プラス)とスライムを作る材料がセットになったキット。よく伸びて手にくっつきにくいスライムを2個作ることができる。(写真提供:学研プラス)

佐々木 妖怪ドロリンスライムは本屋さんで売られるキットだったので、量産できる材料でどこの家庭でも作ることができるスライムを目指すとなると、新たにレシピを考え直さなくてはならなくて。

Dorita 佐々木さんのスライムは、他の人が作るスライムとは違うんですよ。同じ材料を使っても、佐々木さんが作るスライムはすごくふんわりモチモチしていて、演奏もしやすくてパーフェクトです。

佐々木 材料の配合はその日の気温など、いろんな条件によって変えています。こね方のコツは説明できないんですけれど……もう経験値ですね。妖怪ドロリンのスライムを作った時は、編集者の方が私の手つきをメモしたりしていて、大変そうでした。

多様な人を引き込み、予測不可能な広がりを生む楽器

Maker Faire Tokyo 2015で開催された「ヌケメバンド」によるライブ。(写真提供:佐々木有美) Maker Faire Tokyo 2015で開催された「ヌケメバンド」によるライブ。(写真提供:佐々木有美)

ライブで発表以来、じわじわと広がっていったスライムシンセサイザー。第18回文化庁メディア芸術祭(2014)で新人賞を受賞するとますます人気が広がり、さまざまなところから声がかかるようになった。

Dorita 六本木アートナイトのようなアートイベントに呼んでいただいたり、他のアーティストさんとコラボレーションする機会も増えました。先日NHKラジオの収録で、やくしまるえつこさん、レーザーギターのドラびでおさん、OPTRON奏者の伊東篤宏さんと一緒にセッションをしたんですけれど、みなさんの楽器がふざけているくらいに光っていて(笑)。

佐々木 ラジオなのに(笑)。あれはやばかったですね。

NHKラジオの収録時に演奏した楽曲「光と光と光と光の記録」(Short ver.)は、やくしまるえつこさんが「Yakusihimaru Experiment」名義で発表したアルバム「Flying Tentacles」に収録されている。

——スライムシンセサイザーは、触ると音が鳴るというのがわかりやすくていいですよね。そのわかりやすさがいろんな人を惹き込み、瞬時に感動が広がっていくようです。

Dorita ライブ会場でも触りたいという人が多くて。ステージがない所だったら、お客さんを巻き込んで参加型イベントにしてしまいます。文化庁メディア芸術祭の「オルタナティブ・フューチャー〜エンターテインメント部門受賞作品発表会」というイベントの時も、100人で手をつないで音を出す「100人つなぎ」に挑戦しました。

Maker Faire Tokyo 2015では、KIDSスペースでも体験会を開催。瞬く間に子供たちの行列ができた。 Maker Faire Tokyo 2015では、KIDSスペースでも体験会を開催。瞬く間に子供たちの行列ができた。

虫の世界に入り込めるサウンドアート/バイオアート作品「Bug's Beat」

「Bug's Beat」(写真提供:後藤武浩) 「Bug's Beat」(写真提供:後藤武浩)

Sasaki Yumi + Doritaが手がけた第2段作品は、虫の足音が聞けるサウンドアート/バイオアート作品「Bug's Beat」。透明なプラネタリウム型のケースの中をダンゴムシやクワガタなどの虫が歩くと、リアルタイムで虫の足音が聞こえてくる。第8回恵比寿映像祭で発表され、話題を呼んだ。

——Bug's Beatについても聞かせてください。なぜ虫の足音を聞かせようと思ったのですか?

佐々木 科学館で子供向けに「地面の生きもの」というワークショップを開催したことがきっかけです。そのワークショップでは、屋外でとってきた土から虫を見つけて観察したんですけれど、子供たちが虫を捕まえるという目的に夢中になりすぎて、虫にはあまり関心を示さなかったんですね。ところが、マイクで虫の足音を拾って聞かせたら「この虫って何本足があるの?」とか言って、急に興味をもちだしたんです。それで、音が聞こえてくると目が良くなるみたいな、音にはそういう効果もあるなと思って。それから、虫の足音をみんなで聞けたらいいなあと思ったんです。

Dorita でも、マイクの感度を上げていったらハウリングが起きてしまって。

佐々木 そうなんです。子供たちが「あっ!」と言うだけでもキーンとなってしまうので「静かにして見てね」と言わなくてはいけないし。これは最初にやりたかったことじゃないかも……と思って。それでDoritaさんに相談して、今回は音響の専門家やプログラマーの方たちの力を借りて作ることにしました。

(写真提供:後藤武浩) (写真提供:後藤武浩)

そして、余計な音を拾ってしまうという問題は振動マイクを使うことで解決。ハウリング問題は、平面波スピーカーを使うことで改善した。

Dorita 普通のスピーカーを使うと音が拡散されてハウってしまうんですが、平面波スピーカーは音が真っ直ぐに飛ぶので、スピーカーとマイクが干渉し合わないように設計し、ハウリングを回避することができるんです。

——プログラミングはどの部分に使われているんですか?

Dorita まず一つは、3つの什器から音を拾い、スピーカーから音を出させるところに使っています。もう一つは、今回は虫の足音から音楽を作りたかったので、Max/MSPで楽譜を作り、虫の足の数によって異なるビートを奏でるようにしました。プログラミングは、展覧会エンジニアの山元史朗さんに手がけていただきました。ゆくゆくは、Bug's Beatを使ってライブができたらいいなと思っています。

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