新しいものづくりがわかるメディア

RSS


Dorita・佐々木有美インタビュー

摩訶不思議なサウンドデバイスで脳をコンフューズさせる アーティストユニットSasaki Yumi + Dorita

流れ、伸び、自由に姿を変えるサウンドデバイス「スライムシンセサイザー」は、スライムを媒体とする楽器だ。スライムに触れて伸ばしたり震わせたりすると、ユーモラスな音色を奏でる。この作品を手がけたメンバーのうちの2人、佐々木有美さんとDorita(ドリタ)さんによるアーティストユニット「Sasaki Yumi + Dorita」。2016年2月に開催された第8回恵比寿映像祭では、虫の足音を聴かせるサウンドアート/バイオアート作品「Bug's Beat」を発表し、現在もアップデートを重ねている。スライムのように流動的で、不定形な発想力を持つ2人に話を伺った。(インタビュー撮影:萩原楽太郎)

ライブで演奏するために設計されたサウンドデバイス

——佐々木有美さんは普段科学館に勤め、展示や子供向けのワークショップの企画などに関わり、一方、Doritaさんはデザイナー/クリエイティブディレクターとして活躍しながら、「ヌケメバンド」のスライドギター/スライムシンセサイザーの演奏者としても活動されています。お二人が一緒に作品を作り始めたのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか?

Dorita 「Make: Tokyo Meeting 06」(2009)を見に行った時に、佐々木さんたちが自作楽器のブースにスライムシンセサイザーを出していたんです。その時は現在のようなタワー型ではなく、お盆にスライムを載せていたんですけれど。それで「変な女の子がいるな」と印象に残っていて(笑)。その後いろんな場所で再会して、一緒にライブで使えるシンセサイザーを作ろうという話になったんです。

デザイナー/クリエイティブディレクターのDoritaさん。 デザイナー/クリエイティブディレクターのDoritaさん。

——そもそも佐々木さんは、なぜスライムでシンセサイザーを作ろうと思ったのですか?

佐々木 スライムは、科学館で子供向けワークショップをする時によく使っていたので、身近だったんですよ。楽器として使ったのは、8年くらい前に宇治野宗輝さんのワークショップに通っていて、その時に実験したものが最初です。そのワークショップは音を鳴らす基盤を使って、いろんなものから楽器を作るというクラスだったんですけれど、試しにスライムを使ってみたら、その奥深さにどんどんはまっていって。

科学館職員の佐々木有美さん。 科学館職員の佐々木有美さん。

——スライムシンセサイザーはどんなシステムで音が鳴っているんですか?

佐々木 よく「どこにセンサーが入っているんですか?」と聞かれるんですけれど、センサーはどこにも使っていません。「サウンドジェネレーター6」(WonderKit)という6種類の音が出せる基盤があるのですが、その基盤にスライムを繋ぎ、通電させることによって音が鳴るように改造しただけです。

——音の高さを変えることもできるんですか?

Dorita 音の高さは電気抵抗値によって変わり、スライムを伸ばせば伸ばすほど音域が広がります。なので、お盆に載せただけだとライブ中に電気抵抗値を変えながら(伸ばしながら)演奏するのは難しいんですね。それでタワー型にして、電気抵抗が大きい上の方は低い音、電気抵抗が小さい下の方は高い音が出るようにしました。

スライムシンセサイザーのシステムは実にシンプル。基盤に銀の指輪とアンプが接続され、演奏者が指に銀の指輪をはめてスライムに触れると電気が流れ、音が鳴るという仕組みだ。 スライムシンセサイザーのシステムは実にシンプル。基盤に銀の指輪とアンプが接続され、演奏者が指に銀の指輪をはめてスライムに触れると電気が流れ、音が鳴るという仕組みだ。

——作品は二人で相談しながら作っていくんですか?

Dorita そうですね。私が「こういうふうに、こんな音を出したい」と要望を伝えてこの形になっていたり、ブラックライトを仕込んでライブ中に光るようにしたりですね。作業分担は、電子基板などの工作担当が佐々木さん、ハードのデザインは私、とはっきりしています。

スライムの奥深さとは?

一見デジタルを駆使しているように見えるスライムシンセサイザーだが、実はすべてアナログ接続。作り方も、4本の支柱を支える台を3Dプリンタで出力していたりと、ほとんどDIYで製作している。スライムも市販のものを使うのではなく、材料からこだわって自作しているという。

——先ほど佐々木さんがスライムの奥深さにはまったとおっしゃいましたが、スライムの奥深さとは?

佐々木 スライムは、材料や配合を変えると仕上がりが全然変わってくるんですよ。スライムシンセサイザー用のスライムは長く伸びてベタベタせず、パッと手から離れるのが理想なので、かなり試行錯誤しました。

おすすめ記事

 

コメント

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る