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GROOVE X 林要ロングインタビュー

Pepperが教えてくれた、僕たちに必要なロボットとは

ソフトバンクが開発したヒト型ロボット「Pepper」。その開発者・林要(はやしかなめ)さんがロボット・スタートアップ「GROOVE X」を立ち上げたことは多くのMakerにとって記憶に新しい。TOYOTAからソフトバンクに転職し、今や誰もが知るロボットとなったPepperの開発ストーリーについては、もはや多くのメディアで語られていて触れる必要は無いだろう。

今回、私たちは林さんがなぜGROOVE Xを立ち上げたのか、大企業とスタートアップにおける開発の違いからユニークな開発体制、日本独自のロボット文化の恩恵や今エンジニアが歩むべきキャリア観に至るまで、林さんの目に映るハードウェアスタートアップの今をじっくりと伺った。

AIやロボットは人間の仕事を奪うが、新しい雇用を生む

——現在開発中のロボットについて教えて下さい

私はロボットを大きく分けて2つのカテゴリーで定義しています。役務をするロボットと、人が思い入れるロボットです。前者の代表例が人の代わりに仕事をするロボットで、最近で言えば自動運転車やドローンが当てはまります。

かつて輸送・交通手段が馬から車に代わり、農業が自動化されたときに何が起きたかというと、1870年から1920年の間に米国で80%の馬がいなくなり、1920年から1970年の間に日本で80%の農業従事者がいなくなったという統計があります。

だから「人工知能やロボットは人間の仕事を奪うか」という質問には「はい、奪います」と答えます。
でも、同時に新しい仕事が生まれました。農業しか仕事の選択肢がなかった人が、サービス業や建機を作る仕事に就くというように、既存の仕事が自動化されることで新しい仕事を作るエンジンにもなります。新しい仕事への想像力が欠如すると、仕事がなくなると思っちゃいますけどね。

そんな2つのカテゴリーのロボットのうち、なぜ私どもは人が思い入れるロボットを作ろうと考えているか。それはもう一つのカテゴリーである役務をするロボットの存在意義からたどっていくことで、理解いただきやすくなると思います。

役務をするロボットの前身としては、役務をする機械があります。役務をする機械の代表例として洗濯機を挙げてみましょう。昔は洗濯板で手洗い、そこから洗濯機ができ、脱水機が発明されて二槽式洗濯機ができ、さらに乾燥機ができて、それら3つの機能が1つに統合されてドラム式洗濯機ができ、消費者は多くの時間を節約しました。

さらにその価格が下がり多くの家庭に普及したことで、使えるお金も増えました。
その余ったお金と時間を人は自己実現に使ってきています。昔は存在すらしなかったエンターテインメントや趣味に費やしたり、昔だったら一大事だった旅行も普通に行くようになった。そういう流れのもとでは、役に立つ機械やロボットによって生まれた余裕時間や余裕資金の受け口となる、人の自己実現に対して貢献できるロボットには需要があると思ったんです。

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