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UTB 小野正晴インタビュー

未完全な技術だからこそ突き詰めたい——3Dプリントでファッションを拡張する小野正晴

「3Dプリンタはプロトタイプに使うには優秀だけど、プロダクトに使うにはまだクオリティが低い。だからこそ、今からやるべきことがあるんじゃないか」

小野正晴さんは産業とクリエイティヴの両面から冷静に3Dプリントの可能性を見つめ、拡張しようとする稀有なMakerだ。

メーカーでデザイナーとして勤務する傍ら、UTBという名義で3Dプリンタを活用したファッションアイテムを制作。3Dプリントの可能性を提示する作品を毎年発表している。

2016年9月に発表した「AMIMONO」は、スマートフォンのケースにも使われるTPU素材を糸のように編み上げる技術を駆使し、服と同じように折り曲げられる伸縮性や、畳める柔軟性を再現している。建築などで使用されるコンピュータアルゴリズムを用いたデザイン手法「アルゴリズミックデザイン」を採用し、手編みのような形状を3Dプリントで再現している。

AMIMONOのプロモーションムービー。

難易度の高い形状から、国内の業者では断られるかコスト面で折り合いがつかず、最終的にはベルギーに本社があるmaterialiseでプリントした。ベルギーの担当者とのやりとりを翻訳してもらうなど、献身的なサポートもあり、何度かの試作を経て完成した。

小野さんは1987年生まれ。金沢美術工芸大学を経て、大手メーカーに就職しプロダクトデザインを担当している。

「美大にいた頃から、ガチでやっている奴らとは自分は勝負にならないなと思って、同じフィールドで戦っても仕方がないから3Dをやろうと思ったのが今に至るきっかけです。ちょうど在学中に導入されたZPrinter(※編集部注 3D Systems社の石膏粉末固着方式の3Dプリンタ)に衝撃を受け、今まで絵でしかなかった3Dデータが、そのまま形になるのが楽しくて、こっそり使いまくっていました(笑)」

大学卒業後、上京してメーカーに就職した小野さんが服を作ろうと思ったきっかけが2つある。一つはクリエイティブラボPARTYが2012年に行った「OMOTE 3D SHASHIN KAN」。人物を3Dスキャンしてフルカラー3Dプリントするサービスの先駆けとなった取り組みだ。

そして、もう一つはマサチューセッツ工科大学(MIT)出身のクリエイター集団「Nervous System」だ。3Dプリンタを使い、全てのパーツが組み合わさって畳まれた状態で出力された服を見た小野さんは、3Dプリンタに対する見方が劇的に変わったという。

Nervous Systemが2016年に発表したKinematic Petals Dress。ナイロン素材の何千ものパーツで構成されたワンピースは、1枚に畳まれた状態でプリントされる。

「PARTYやNervous Systemの作品を見て、3Dプリンタ=試作機という認識から、まだ技術的には課題があるけれど、製品として成立するものが3Dプリンタで出て来る時代が来るんじゃないかと思いました」

Nervous Systemの影響から、小野さんは3Dプリントとファッションの組み合わせに興味を抱いたが、単に彼らの影響だけでファッションを選んだわけではない。

「3Dプリンタで家具とかお皿とかを作っても、今の量産品のレベルまで持っていくのは厳しい。でも、実験的なものが許される土壌があって、それを商品として買ってもらえる一番近い位置にいるのがファッションだと思います。作り手としても、人の身体の動きに追随する構造や仕組みを実現するというハードルを越えるのが楽しいという面もあります」

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