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UTB 小野正晴インタビュー

未完全な技術だからこそ突き詰めたい——3Dプリントでファッションを拡張する小野正晴

オーセチック構造を駆使することで、頭のサイズに合わせてサイドが伸縮するヘッドマウント・ディスプレイ(画像提供:小野正晴氏)。 オーセチック構造を駆使することで、頭のサイズに合わせてサイドが伸縮するヘッドマウント・ディスプレイ(画像提供:小野正晴氏)。

その後もプライベートの時間はモデリングに没頭し、自費で3Dプリントした作品をWebサイトやMaker Faireなどのイベント、メイカースペースに展示、公開したことで、国内外からさまざまな問い合わせが来るようになった。

PARCOが運営するクラウドファンディングサービス「BOOSTER」でアクセサリーのプロジェクトを発表するなど、「作品」から「製品」へのアプローチも始まった。

「始めた当初は単純に作ったものが形になって楽しかったんですけど、それなりに時間とお金もかかっているし、なにか見返りというか活動していく理由が欲しかったんですね」

クラウドファンディングで発表するにあたって、人に自分の作品を魅力的に見せるにはどうしたらいいか考えた小野さんは、広告代理店でアートディレクターとして働く妻に相談した。

「やりたいことを話したら、『つまりやりたいことって、こういうこと?』って言って、ロゴや写真だけじゃなく、自分の言いたいことが読みやすくまとまった文章までディレクションしてくれて、外からの反応もそれまでとは比べ物にならないくらいあった(笑)」

夫婦といえども同じクリエイター、妻への相談はプレゼンテーションに近かったという。「クソだと思われたら多分協力してもらえないだろうなと思うし、業界は違うけど同じクリエイター同士だからこそ、きちんと作る必要がある」 夫婦といえども同じクリエイター、妻への相談はプレゼンテーションに近かったという。「クソだと思われたら多分協力してもらえないだろうなと思うし、業界は違うけど同じクリエイター同士だからこそ、きちんと作る必要がある」

さまざまな構造の服をプリントしてきた一方で、ハードウェア側の制約と限界が見えてきた。しかし、3Dプリンタの進化を単に待っていればいい訳ではない。

「どれだけ3Dプリント技術が進化しても金型は残る。でも、金型じゃできない表現があるから、3Dプリントでファッションをやっています。3Dプリンタを開けたら日常着が出るように最終的にはしたいけれど、それはハードウェア側の進化を待たなくてはいけません。でも、その間に何もしないのかといったらそうではなくて、AMIMONOで作った構造を利用してマルチマテリアルのプリンタを使い、固い部分と柔らかい部分が混在する服を試してみたり、フルカラーのプリンタも使ってみたいし、とにかくここまで来た以上突き詰めたい」

影響を受けている同時代のクリエイターとして、MUDSNAILを挙げた小野さん。試作品を作るための3Dプリンタではなく、最終製品を作るための3Dプリンタという世界をファッションで体現しようとしている点で、刺激を受けているという。 影響を受けている同時代のクリエイターとして、MUDSNAILを挙げた小野さん。試作品を作るための3Dプリンタではなく、最終製品を作るための3Dプリンタという世界をファッションで体現しようとしている点で、刺激を受けているという。

普通の服がゴール

3Dプリントした服を日常着の世界に持っていきたい——それはプリントにかかる材料費や生産スピードを考えると、かなり先かもしれない。しかし、テクノロジーが進化するように着る側の意識も変わり始めている。

「アパレル業界の展示会に出展した後、協力してくれた会社さんに『3Dプリントだって気づいてもらえなくて』って、がっかりしたトーンで報告したら『よかったじゃないですか、それって普通の服として見られているってことじゃないですか!』って言われて(笑)」

展示会の反応も年を追うごとに変わってきて、少しずつやりたいことには近づいている手ごたえを感じ始めている。作品の制作を重ねていくことで柔軟性や伸縮性を再現する構造のノウハウも貯まり、協力するクリエイターや企業も増えたことで、さらなる応用が見込めるようになってきたと小野さんの表情は明るい。

発展途上中のテクノロジーの中で、ユーザーの側から3Dプリントの可能性を拡張しようとする小野さんのチャレンジは今後も続く。

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