アナログ家電マイスター松崎順一インタビュー
ラジカセ愛にあふれた珠玉の逸品、松崎順一氏プロデュース「my way」 今、求められる最新アナログ家電とは?
今求められる最新アナログ家電という位置付け
懐かしさだけでラジカセを手にする層は40代以上に絞られる。それだけで2000台は見込めない。知らない世代にどこまで切り込めるかが、成功の鍵になる。
「My Wayはリバイバルや復刻ではなくて、今から始まるカセットテープの新しいカルチャー、最新アナログ家電として提案していきたいです。若い人へのアプローチはそれですね。ファッションアイテムのひとつとして、考えてもらえるといいかなと。これで音楽を楽しむという行為を『こういうライフスタイルっていいよね』ってとらえてもらえたら作り手としてはうれしいですね。そのために、従来はなかったビビッドオレンジの製品も作りました」
カセットテープも新しいメディアとして出したいと語る松崎さん。
「『カセットテープ、かっこいいよね、かわいいよね』って思ってもらえるといいですね。録音という機能はあとから付いてくる、ぐらいで。オーディオの概念からいったん切り離したいんです。あくまでファッションアイテムだから」
温故と知新の間で
ラジカセの時代を知る人々にも「最新アナログ家電」というコンセプトは重要ではないかと松崎さんは主張する。
「ちょうど今月、ソニーが『It’s a Sony展』と称してプロダクトのヒストリー展をやるのですが、実物はなかなかソニーにもなくて、僕も協力しています。過去を振り返り、次の時代へと向かうけじめとしたいという考えのようですね。ソニーに限らず、次の時代に対応していくには従来の成功体験を引きずるのではなく、各メーカーでイノベーションを起こしながら未来に向かってものづくりをしていかなきゃいけない。プロダクトメーカーというのは今、必死にそれを探しています。『故きを温ね、新しきを知る』ってやつですね。
また、今までは大企業しかできなかった家電が、こうやって数人でできる時代でもあります。銀行に行かなくても、クラウドファンディングで資金調達が可能だし。ただ、環境が整い過ぎちゃって、ものづくりに一番大切なコンセプチャルな部分を起こせる人が少なくなったかなと。『最新アナログ家電』はひとつのコンセプトになるのではないかと感じています」