大人の科学マガジン ふろく開発者インタビュー
大人の科学マガジン最新号ふろく「カエデドローン」開発秘話——最難関教材に挑んだ2人の匠
「誰も目にしたことがないものをふろくにつけたい」。毎号、開発者のこだわりがMakerの興味を引きつけるふろく付き雑誌「大人の科学マガジン」(学研プラス)。1年の沈黙を破り、久々の新製品を12月20日にリリースする。ふろくは1枚つばさでカエデの種のように回転しながら飛行する「カエデドローン」。通常、企画から発売までは長くても1年程度だが、今回は2年もの時間を要したという。裏では数々の困難に立ち向かう開発者の苦闘があった。難問を克服する新しいアイデアはどう生まれ、どう具体化されたのか?(撮影:加藤甫)
自然界に学ぶ飛行の原理
大人の科学マガジンふろく開発スタッフの小美濃芳喜氏は飛翔体のエキスパートだ。学生時代には人力飛行機の開発に関わり、当時の世界記録更新に貢献した。
そんな小美濃氏が長年温めていたアイデアがカエデの種をもとにした飛翔体の開発。挑戦した人は過去にもいたが、商品化にこぎ着けた例はなかった。小美濃氏は語る。
「1枚つばさの飛翔体というのは、飛びモノを作る人たちの間では一種の憧れです。風に舞うカエデの種は美しく、自然の知恵を感じさせます。ただ、それはグライダーと同じく、下降するだけです。これに動力をつけ、コントロールができれば、飛翔体と呼べます。
動力として携帯電話向けに開発された超小型モーター、電池としてLiPoバッテリーなどが、安く使えるようになって、ふろくレベルでの商品化に道が開けてきました。最初の試作は2年前。ちょうどドローンが世間で騒がれたころです。1年後のリリースを目指して開発をスタートさせました」
ジャイロ効果が飛行の安定性を保持
カエデの種と同じ形のつばさに回転を促すプロペラをつければ、上昇するはず。開発はそこから始まった。
「飛翔体ですから機体はできるだけ軽い方が有利です。また、回転する飛翔体を上昇させるためには、基本的に守らなければならないことがあります。それは中心から延びたところに3つ以上の重りがあること。これがジャイロ効果を生み、安定した飛行を実現させます。
このカエデドローンも、つばさ、推進用モーター、舵用モーターと、3つの重りがあり、それぞれが120度の開きで中心から配置され、バランスを保っています。機体は約11.5g。現在の構造だと12gを超えると飛ばなくなるのでギリギリです。
つばさの形にも苦労しました。工作機械でプログラムして作るというわけにはいかなかったので、自分で1枚1枚削りました。どういう形状が最も効率がいいか、削る、飛ばす、また削る、の連続。100枚は作ったでしょうか。その中で最も出来のいいものを3Dスキャンして量産用試作を作りました。従って図面はありません。こうして上昇するものは比較的早い段階でできました。問題は、コントロールにありました」