Rhizomatiks Researchインタビュー
テクノロジーを駆使して新たな表現を生み出すRhizomatiks Researchのエンジニアチームが明かす舞台裏
工業製品に新たな動きと魅力を見出した「Oscillation」
会期:2016年11月9日~20日 会場:スパイラルガーデン
http://www.senseofmotion.net/exhibition/rhizomatiks_research/
人間の動きを捉えて、ボールねじの滑らかな動きで表現する動的な彫刻作品。国内ベアリング業界最大手企業、日本精工(NSK)の100周年記念展覧会「SENSE OF MOTION」で展示した。
会場ではさまざまなアーティストによる作品が展示され、ライゾマリサーチはボールねじを使った新作を制作。ボールねじを使ったスライドするモノキャリアという工業製品が32台ずつ向かい合い、鑑賞者が持つバトンの動きを感知して、モノキャリアにつながれたゴム紐が上下にスライドする作品。期間が短い中でどのように作品を制作するのか、機材の量産から設置までを中心に伺った。
西本:私に話が来たときは、モノキャリアを64台使って何かを制作するという企画でした。他に分かっていたことは、会場と場所に与えられた広さ。そういった条件の中でまずやってほしいと言われたのが、まだ最終型が見えないけれどどんな形にでも組めるようなワンユニットを作ることです。出来上がったユニットは、DCの電源、モノキャリア、モータードライバー、モーターがアルミのプレートの上に付いたものです。
機材の量産は、初めに方向性が決まっている場合と、Oscillationのときのように何も決まらないままスタートする場合があります。量産は業者に頼むので時間がかかるため、先行してユニットを制作して、作品の完成型にどう落としこむかは最後の最後になりました。
最終的にユニットが寝かした状態か立てた状態になるのか決まっていなかったのでどちらでも組めるように図面を引きました。機材の制作は最終型が見えない場合が多いので、使いやすいように工夫をしています。この作品では立てた場合の底辺を125mmの正方形のプレートにしたことです。びっしり並べたときに8台でちょうど1mになって計算しやすいようにしました。
石橋:このユニットのPCからの制御はOSC(Open Sound Control)で、何台でも増やしたり減らしたりできる設計になっています。最初に64本でシステムをガチガチに組んでしまうと、後から変更ができなくなってしまい、作品の制約になってしまうので。
西本:数百個単位で作る場合なら他の企業に発注したり、1個だけなら自分で穴あけ加工したりしますが、今回のユニットは1人で作るには数が多くクオリティもばらつきがないようにしなければならないため、業者に発注しました。
量産パートナーを見つけるのは毎回大変ですが、このときは短納期かつ小ロットでも受けてくれ、自分たちで取りに行ける関東圏の会社に絞りました。ネットで情報を分かりやすく出している会社は小ロットでは頼めない大きな会社が多く、逆に小規模で臨機応変に対応する会社はネットに情報を出していないんです。柔軟に対応してくれる会社をうまく見つけることが課題ですね。
——量産ユニットを発注してから、最終的な動きのアイデア出しはどういった流れでしたか?
西本:ユニットを発注してからは、3D CADソフトの「Autodesk Inventor」でシミュレーションしました。会場の広さに収まる方法をなるべく視覚的にイメージを広げる作業です。まずはモノキャリア8本で1個になる絵を作り、8個を1列に並べる図を作ったり、寝かせたり、格子状や円形に並べたり、最終的に5パターンほど出しました。実際に見る大人から子どもの目線から見てどれぐらい高さを調整したらいいのかを考えて、ちょうどよく収まる位置を図にしました。
会期まで2週間しかなく、ひたすら図面を引く作業ばかりでした。量産が終わったのは設営の3日前です。最終的には向かい合わせに並べて、間にゴムを入れるという見せ方になり、全然違う形になりました(笑)。私の普段関わっている作業は、こういった、作品になる前の下地を作ることです。もともと舞台の制作をしていたので、場所と使える機材が分かってからすり合わせる作業は得意ですね。