Rhizomatiks Researchインタビュー
テクノロジーを駆使して新たな表現を生み出すRhizomatiks Researchのエンジニアチームが明かす舞台裏
ライゾマリサーチ流の制作環境とは?
——ライゾマリサーチと通常のハードウェアのものづくりの方々と違う点は、試作や量産などを同時並行で進めつつ全体の制作工程を模索しながら動いていることですね。
石橋:そうですね。Oscillationでのスライダーや、borderでの白いボックスなど、 ざっくりしたことは決まっていて、それをどう現実的に作品に落とし込めるかを考えると、その過程でいろいろハードルが出てきます。われわれハードウェアチームは、使用する機材の機能と表現の意図を直感的に理解して、その都度ハードルを解決しています。
作品全体の最初の大きなアイデアももちろん重要ですが、実際の作品は小さなアイデアが積み重なって形になっています。ちょっとした工夫で使いやすくなったりバックアップが可能になったり、メリットが生まれてくるんです。実装上の工夫やアイデアもたくさん詰まっています。そういった細かいアイデアはあまり表に出す機会がありませんが、製造業はそういうアイデアの積み重ねの部分が大きいと思います。
——自分が携わるプロジェクトで、何を大事にしていますか?
原田:どれだけ表現するものを損なわないようにするのかを考えます。舞台上で使用するデバイスを制作することが多いのですが、演じる人が表現することをなるべく負担がかからないように引き伸ばせるかですかね。
坂本:考える時間やクリエイションする時間を作るために、制作する時間を圧縮して効率化することは常々考えています。最短の方法でできるように。
西本:私も同じような感じですね。できるだけ後のステップに制約を残さないように可能性を狭めないベースを作るというか。
——皆さんに共通する「表現を邪魔しない」ことや「最短ルートで制作する」ことは、共通理念としてあるのですか?
原田:そうですね。最後の最後に粘って良いものができる場合が多いので、いかに作る時間を効率化するかを意識しています。作品の最終形態はマッチョに見えますが、泥臭いプロトタイプの実験はいろいろやっています。手に入りやすい機材を買ってきて試している段階は学生が電子工作しているレベルとは変わらないのですが、かなりの短期間に試作を繰り返し行います。
——最後に、ライゾマリサーチでエンジニアを採用する際の基準はありますか?
石橋:ぼくらは直接的に人の役に立つものや便利なものを作っているわけではなく、表現のためのエンジニアなので、表現で必要ない部分は言い方は悪いですが手を抜いています。とても短いスパンで制作しているので、その表現の最終的なアウトプットのために、今行っている作業がどれぐらい必要な要素かという感覚はとても重要です。採用時はそういうセンスや判断が出来るか、ということを見ていたります。普通の製品とは違った判断だし、制作物が多いためすべてに指示を出すことは到底出来ないので、細かい判断はみんなに任せています。
今回話を伺った3作品の制作過程に共通することは、機材やコンセプトが与えられてから、各々のエンジニアが自発的に考えて手を動かし、完成を迎えること。最初から明確な完成形が指示されているものづくりとは違った工程だが、ライゾマリサーチならではの柔軟な制作過程や情報共有の思想は今後のものづくりの参考となるはずだ。