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超人スポーツ協会インタビュー

21世紀型のスポーツのあり方を模索する——「超人スポーツ協会」が目指すもの

誰もがゲームを作る時代へ

2016年10月、スイスでサイバー義体者のオリンピック「サイバスロン」が開催され、義足や義手、車椅子などを使い、障害者が競技者として出場する大会が行われた。「ブレイン−マシンインターフェイス」「パワード義手」「パワード義足」など6部門の競技が行われるなど、パラリンピックと違い、最新のテクノロジーを活用した競技種目となった。2016年は、こうした新たなスポーツを開発する動きが世界各地で活発に行われた年でもあったといえる。

「超人スポーツ協会は、義手・義足の人のためのスポーツも開発の対象としています。ここで大事なことは、義手・義足の人専用のスポーツを作ることではなく、『普通』の人も一緒に活動できる環境作りを重視しているという点です。

たとえば高性能の義足をつけた人と、義足ではないが足の機能を強化する装置をつけた人が一緒にスポーツをする。そして様々な人が、洋服を着替えるように、足の機能強化装置をつけたり外したりして気軽にそのスポーツを楽しむといった環境の実現が理想なのです。

『スポーツはつまらない』ではなく『スポーツは楽しい』をいかに作るか。スポーツそのものに対する考え方の拡張だと捉えています」(野嶋氏)

かつて、小さいころは遊びながら自分たちでローカルルールを作る体験をした人は多いかもしれない。勝ち負け、ゴールを決める試行錯誤をすることから、新たな創造性を養うこともできる。これまで、スポーツはどこか確立されたもので、そこに対するオルタナティブはないと思われていたが、超人スポーツが生まれてきたことによって、新たなスポーツに対する可能性が見えてきた。

本稿取材時には、野嶋氏が教鞭を執る電気通信大学で、新スポーツを開発する授業が行われていた。犬飼氏がファシリテーターになり、学生自身の手でゲームのルールとツールを設計していた。 本稿取材時には、野嶋氏が教鞭を執る電気通信大学で、新スポーツを開発する授業が行われていた。犬飼氏がファシリテーターになり、学生自身の手でゲームのルールとツールを設計していた。

「広くいろいろな人たちを巻き込める環境をつくり、そこに技術を使い既存のスポーツができない楽しみ方を開拓すること。そこから、新たなスポーツが生まれてくる可能性があるのではないでしょうか。それこそ、超人スポーツが目指す『スポーツの民主化』だと捉えています」(野嶋氏)

「アイデアは、短期間でもたくさん出てきます。ブラッシュアップを重ねていけば、完成度の高いゲームがいくつも生まれてきます」(犬飼氏) 「アイデアは、短期間でもたくさん出てきます。ブラッシュアップを重ねていけば、完成度の高いゲームがいくつも生まれてきます」(犬飼氏)

こうした新たなスポーツづくりができる場に、ものづくりに携わる人たちの参加を強く期待している、と語る。

「スポーツの基礎にあるゲームに必要なのは“ツール”と“ルール”だけ。電子ゲームだけでなく、さまざまなものがゲームになりえます。ゲームの根底は勝ち負けが生まれること、つまり価値が生まれることなんです。これこそ、ゲームを定義する最小の単位。何かしらのゴール決めるだけで 、LEDを光らせるだけでも価値が生まれます。

ものづくりに携わる人たちは、動くと反応するものをすぐに作ることができます。そこに、どちらが高く、どちらが早く、などのルールを設けることでゲームは生まれるんです。ゲームを作る経験から、新たなスポーツが生まれるきっかけになれば」(犬飼氏)

スーパーボールを使ったビンゴゲームを開発したチーム。ツールとルールをもとに、老若男女誰もが遊べることを念頭にしたという。 スーパーボールを使ったビンゴゲームを開発したチーム。ツールとルールをもとに、老若男女誰もが遊べることを念頭にしたという。

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