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Xiborg 遠藤謙インタビュー

サイボーグ義足で東京パラリンピックは金メダルを! スポーツ工学を考慮したテクノロジーで世界最速ランナーの育成を目指す

3年後の東京パラリンピック。首を長くして待っている方も多いのではないでしょうか。
22種目が予定されている陸上競技の舞台裏で、日本を代表する選手たちと一緒に金メダルを目指して競技用義足を開発するスタートアップがいる。2016年12月にオープンした新豊洲Brilliaランニングスタジアムに活動拠点を持ち、競技用義足だけでなく、ロボット義足も研究するXiborg。
パラリンピックに向けての活動や目標をXiborg代表取締役 遠藤謙氏に伺った。(撮影:加藤甫)

難航した競技用義足の開発

——Xiborgを創業した経緯について教えてください

アメリカのマサチューセッツ工科大学(以下 MIT)で人間の構造や運動を力学的に研究し、ロボット技術を駆使した義足を開発していた経験があり、2012年に日本に戻ってから陸上競技の競技用義足にも興味を持ち開発してみたいと思いました。

当時は何も知らなかったので、手当たり次第に競技用義足について調査しました。メーカーや義肢装具士、競技用義足に関わる方たちに話を伺いに行ってもすぐには応じてもらえません。知人に紹介してもらうことで、ようやく話を聞いてもらえましたが、実績がなくて最初はとても難航しました。それでも諦めずに一緒にやっていただけないかと、いろいろなところに相談して回る、そんな時に出会ったのが、為末大さんと杉原行里さんです。3人でやりたいことを話しているうちに、ちゃんと活動しやすい箱が必要という話になり、「Xiborg」を創業しようと決意しました。

選手やコーチ、義肢装具士と一緒に開発

——選手やコーチ、義肢装具士のチームで開発しようと思ったきっかけは?

MITのメディアラボに、ロボット義足の代表的な研究者で17歳のときに登山で脚を失ったヒュー・ハー教授という方がいます。僕はその教授に教わっていました。教わりながらロボット義足を開発し、何度もテストしながら自分の考える感覚になるように調整します。ある程度出来上がってから、ヒュー・ハー先生に試験してもらって履き心地を聞くと、自分が狙っていたところとは全く違う結果でした。

僕は脚があるので、脚を失った人の感覚を何とか理解したいと努力しても結局はできません。競技用義足の開発もロボット義足と同じだと思っていて、当事者である選手に参加してもらって、一緒に開発しないといいものは作れない。僕は陸上経験者でもないし、正直、為末大さんも義足で走る知識はなかった。義足で速く走ることについては選手たちが一番詳しいです。Xiborgの目的は義足を作ることではなくて、速く走れる義足を作ることです。そこに到達するには、選手やコーチ、義肢装具士と一緒にチームになって作らないと、世界最速の義足開発はできないと思っています。

チームで世界最速を目指すことの重要性を語る遠藤氏。 チームで世界最速を目指すことの重要性を語る遠藤氏。

——競技用義足「Xiborg Genesis」はどのようにして生まれたのでしょうか?

競技用義足の開発を始める前に為末大さんと話していたのは、まずは選手の練習に参加して勉強させてもらうことでした。実際に一緒に練習してみて分かったのは、健常者と何も変わらないということです。走るフォームに合わせて競技用義足を開発する。海外のトップ選手たちが使っている競技用義足を参考に自分なりにそしゃくしながら義足の開発につなげていきました。

一緒に練習しながら選手と対話し、「いま使っている競技用義足を変えてみたいとするならどこをしますか?」と問いかけて、一緒に調整する。対話していくうちにアイデアもたくさん生まれてきたが、リオパラリンピックの開催日程が近いこともあって、重要なポイントだけ改良し、安定して走れるようになったのが「Xiborg Genesis」です。

Xiborgが開発するカーボン繊維強化プラスチック製の競技用義足「Xiborg Genesis」 Xiborgが開発するカーボン繊維強化プラスチック製の競技用義足「Xiborg Genesis」

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