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Xiborg 遠藤謙インタビュー

サイボーグ義足で東京パラリンピックは金メダルを! スポーツ工学を考慮したテクノロジーで世界最速ランナーの育成を目指す

参考の競技用義足に改良を加えたポイント

——参考にしていた競技用義足から改良したポイントってどんなところですか?

意識したのは選手の走りかたです。為末大さんと相談して義足を調整した。選手の走りかたに対してひとつひとつ確認しながら、競技用義足の形状を改良していきました。

——開発してから調整までどのくらい時間がかかりますか?

義足の型を用意して完成するまでに最速でも3カ月です。結構時間がかかるので精度が高くなくてはいけません。時間もお金もかかるので、なかなか繰り返し繰り返し作れないです。

選手の走りかたに合わせてXiborg Genesisの硬さや重さを調整する。

——一番コストが掛かるのは?

競技用義足の作り方というのは、弓状に石こうを削り出して、カーボンシートを手で何枚も何枚もきれいに重ね合わせます。重ね合わせたものを高温高圧処理をして釜で焼いてできあがります。そのコストは、石こうを作るのに数十万円、整形するのにも数十万円、成形のシミュレーションには数百万円かかります。開発するのに何度も繰り返し作るというのはコスト面でも難しいものがあります。

カーボンシートは一枚一枚手で貼り合わせる。 カーボンシートは一枚一枚手で貼り合わせる。

カーボン成形の難しさ

——形状は設計ツールか何かで計算するのでしょうか?

カーボンシートは樹脂と繊維の複合材で、計算が難しい部分があります。鉄みたいにどこを切り取っても同じ素材とは限らない。樹脂の部分もあれば、繊維の部分もあるのです。設計ツールで計算するとき、ヤング率(縦弾性係数)という計算に必要な数値があって、材料が厚くなろうが薄くなろうがヤング率は変わらないんですが、カーボンは複合材なのでヤング率が変わってしまいます。厚くなったら厚くなった分だけ素材が硬くなりますが、硬くなり方が非線形なので今までは計算が難しかった。何度も繰り返してデータが蓄積してきたことと、協力企業である東レさんの知見のおかげで計算ができるようになってきました。

カーボン成形はとても難しいです。もっと簡単にできるだろうと、なめていました。やればやるほど選択肢が広がっていきます。自分だけではもう手に負えない部分があったのですが、東レさんが協力してくれたおかげでとても助かっています。

選手の練習期間も考慮した開発ディレクション

——選手によって競技用義足の形状は異なるのですか?

形状は全員同じで硬さと重さが違います。例えば、棒高跳びの選手の棒と同じで、選手の感覚に合わせて湾曲するときのバネの硬さと重量を微調整しています。バネを硬くしたから、重さを軽くしたから走りも速くなるというわけでもありません。

健常者の脚は地面を蹴る強さを筋肉で変えられます。選手は義足の硬さを調整することで強さを変えています。全身のバランスや動きにとても影響してきます。その場その場に合わせた競技用義足に変えるのではなくて、履いた状態で練習を繰り返して全身や動き方で調整していきます。

硬さと重さを調整しながら練習を繰り返す。 硬さと重さを調整しながら練習を繰り返す。

新しい競技用義足を開発し、試してもらったときに違和感があったとします。それは新しいから違和感があるのか、走りかたに合っていないからなのかをすぐに判断するのは難しい。しばらく練習で使ってみて、初めて走りかたに合っていないことに気がつくこともあります。

選手に合ったベストな状態に持っていくのにはとても時間を費やします。ひとつひとつ精度を高くして開発していかないと、選手の無駄な練習時間だけが増えてしまう場合もある。完成したものを渡しただけで終わってしまうと、行き着けない領域があるのです。選手と一緒に練習も含めて開発は考慮しなくてはいけませんし、調整にとても時間がかかります。でもチーム一丸となって協力して開発をすることで世界最速に到達できるのではないかと考えています。

選手からのフィードバックを聞きながら、一緒に開発することが重要。 選手からのフィードバックを聞きながら、一緒に開発することが重要。

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